めっぽう寒い日が続くと思ったら、春の日差しが注ぐ
2021年01月20日
めっぽう寒い日が続くと思ったら、春の日差しが注ぐ。いつも季節は移ろう▼きょうは大寒(だいかん)。寒さが一番厳しい時季に入った。今冬は、冬型の気圧配置が続き、日本海側は年明けから大雪に見舞われた。故郷からは、「屋根から下ろした後の処分に困っている」との便りが届く。物理学者の中谷宇吉郎は、「雪は天から送られた手紙」としゃれたが、こうも多いとうんざりだろう。雪国に住む人々には、晴天続きの太平洋側がうらめしい時季でもある▼それでも、春への序章は始まっている。「三寒四温」。7日の周期で寒暖を繰り返し、春の気配が漂うようになる。大寒の初候は、「款冬華」。〈ふきのはなさく〉と読む。いてついた地面に、フキのとうが出始める頃を表した。まだしばらく寒さは続くが、地の下では春への支度が着々と進んでいる▼先日、近くの公園を歩いていたら、ロウバイが透き通るような黄色い花をつけていた。かれんである。中国が原産であることから唐梅(からうめ)ともいう。玉梅、スイセン、サザンカと合わせ、雪中四友(せっちゅうしゆう)と呼ばれ、文人画に好んで描かれた。〈素通りのできぬ蝋梅(ろうばい)一樹あり〉青木陽子▼受験シーズンが佳境に入った。コロナに負けず、乗り切ってほしい。みんなに、「サクラサク」の知らせが届きますように。
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1月農産物輸出40%増 家庭向け好調 過去10年で最高
2021年の農林水産物・食品の輸出は好調な滑り出しとなった。農水省がまとめた1月の輸出額は前年同月より40%増の758億円で、1月としては過去10年で最高だった。新型コロナウイルス下、牛肉やリンゴ、緑茶などの引き合いが家庭向けで強まった。飲食店の規制が続く地域もあり、輸出拡大には家庭用需要の開拓が重要になっている。
前年からの伸びが特に大きいのは、リンゴで185%増の40億円。最大の輸出先の台湾では、春節向けの需要がピークを迎えた。コロナ下で家庭用需要が高まったことや、昨年は春節が早く1月には輸出のピークを過ぎていたことで増加幅が大きくなった。青森県は、「台湾や香港で小売りの伸びが大きい。リンゴは日持ちも良く、巣ごもり需要で選ばれた」(国際経済課)と指摘する。
牛肉、豚肉、鶏卵など畜産物も軒並み、家庭での需要の高まりを受けて好調だった。牛肉は、69%増の23億円。カンボジア、香港、台湾などアジア向けが伸びた。「香港向けは、家庭用に日本産の牛肉需要がある」(日本畜産物輸出促進協議会)という。
緑茶も25%増の14億円と勢いがある。日本茶輸出促進協議会によると、家庭でも手軽に飲める粉末茶が支持されている。担当者は「緑茶のおいしさや効能が認知されて、繰り返し購入する人が増えている」と話す。
その他の青果物も巣ごもり需要で好調だった他、米は31%増の5億円。日本酒も64%増の23億円と大きく伸びた。
政府は30年に農林水産物・食品の輸出額を5兆円にする目標を掲げる。海外のニーズや規制に対応し、輸出向けに生産する輸出産地を選定して、支援している。
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2021年03月03日

表面パリッ 内側もちっ カチョカバロ人気 兵庫・淡路島牛乳
ステーキで食べるチ乳業メーカーの淡路島牛乳(兵庫県南あわじ市)が製造・販売するイタリア発祥のチーズ「カチョカバロ」が人気を集めている。厚くスライスして両面を焼き上げて食べるのが特徴。「ステーキにして食べるチーズ」として売り込んでおり、新しい食べ方が消費者の支持を広げている。……
2021年03月03日

まさおのこんにゃく 北海道厚沢部町
北海道厚沢部町の畑作農家、木村容男さん(70)が手作りする。北海道でコンニャク芋の栽培は珍しいが「以前、山形で食べたこんにゃくの味が忘れられなかった」という木村さんが、約10年前に栽培を始めた。
群馬県の農家へ視察に行き、施肥量や収穫後の保存方法を学んだ。自宅に隣接した加工場で蒸して砕いた芋の練り方を工夫するなど、試行錯誤を経て納得の味を完成させた。
歯触りが良く、二度ゆでしているので臭味がなく、刺し身でも食べられる人気商品だ。
1個入り1袋380円。地元の厚沢部町の道の駅や函館市内のスーパーなどで販売する。
問い合わせは木村さん、(電)090(8901)0164
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2021年03月02日

[活写] カスミソウ 収束願って、幸せ誓って
婚礼で使われるはずだった高品質の花を活用しよう──。東京駅のイベントスペース「スクエアゼロ」に2月26、27の両日、熊本産などの宿根カスミソウ3000本を使った展示が登場した。バージンロードを意識した配置で、花を天井に向かってアーチ状にし、式場の雰囲気を演出した。
花きの仲卸や市場卸、小売りなどで構成する「ブライダルフラワー支援協議会」が企画。新型コロナウイルス禍で婚礼件数が激減し、打撃を受けている花の産地や業界を盛り上げる狙い。
展示した生花は白と緑だけを使い、中央のモニターにカラフルな花々や咲き誇るカスミソウの画像を投影した。モニターの前に椅子を2脚置き、通る人が記念写真を撮って楽しめるようにした。
デザインと装飾を担当したフラワーアーティストの中川聖久さんは「未来の婚礼を思い浮かべたり、過ぎ去りし婚礼を懐かしんだりしてほしい」と話す。
協議会は2020年度補正予算の「公共施設等における花きの活用拡大支援事業」を利用し、展示を行っている。
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2021年03月01日
イチゴ平年比7%高 業務用低調 楽観できず
桃の節句直前のイチゴ相場が平年(過去5年平均)を上回り推移している。2日の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は平年比7%高の1キロ1333円。入荷量が同3割減と天候不順で大きく落ち込んだため。ただ、新型コロナウイルス下による業務需要の停滞で、上げ幅は小幅にとどまっている。
2月下旬から各産地で出荷量が大幅に減った。……
次ページにイチゴの平均価格と販売量のグラフがあります
2021年03月03日
四季の新着記事
〈秋葉山から火事〉のことわざを知る人は少ない
〈秋葉山から火事〉のことわざを知る人は少ない。火よけの神様を祭る山から火事を出したのでは示しがつかない▼総務省官僚の接待不祥事。身内の手引きがばれ、菅首相の立つ瀬がない。7万円の接待を受けた内閣広報官は体調不良を理由に辞職に追い込まれた。女性だからかわいそうと口にしたものなら、ジェンダー不平等になるのでご注意。あすは国連の国際女性デー。不祥事は農水省でも露見し、次はどこに飛び火かと霞が関は戦々恐々であろう▼こちらはようやく鎮火した。栃木県足利市の山火事。消火に9日を要した。道なき山中に消防車は入れず、乾燥・強風と相まって被害が拡大した。上空からのヘリコプター散水を見て、福島第1原発事故での陸自ヘリの水投下を思い出した。間もなく10年になる▼消防庁によると林野火災は年に1200件ほど発生している。近年では岩手県釜石市での400ヘクタール超の民有林火災が大きかった。50年育てこれから金になるはずの山が炎に包まれる。「諦めしかないですよ」。山主のショックを釜石地方森林組合参事の高橋幸男さんが代弁する。それでも復活へと立ち上がった。高校生や協同組合も加わった植林ボランティアが元気の風を送った▼1都3県の緊急事態宣言は継続。鎮火を焦らず待つ。
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2021年03月07日
さだまさしさんに「おもひで泥棒」という歌がある
さだまさしさんに「おもひで泥棒」という歌がある▼認知症とおぼしき祖母を案じる孫を「心配しなくていいよ おもひで泥棒なんていない」と優しく語り掛ける。コロナ世代の小中高校生たちはさしずめ〈思い出ドロ〉の最大の被害者だろう。入学式、運動会、文化祭、修学旅行、部活動、みんな自粛の人も少なくない▼子ども時分の思い出は大体、学校行事からしみ出てくる。いいことも恥ずかしいことも。勉強した中身は簡単に忘れるが、思い出は年老いてもなお残る。おばあさんの脳裏にも。各地から卒業式の便り。卒業アルバムは埋まったのか、いささか心配になる。オンラインで授業はできても思い出はつくれない。心の空洞ができていないことを願う▼大作『カラマーゾフの兄弟』は、薄幸の少年の葬儀の後、主人公の青年、アリョーシャが子どもたちに訴え掛ける場面で終わる。きょうこの瞬間、君たちが心を一つにして弔ったことを決して忘れないでほしいと。ドストエフスキーは〈救いとしての思い出〉を信じた人である。子どもの時の美しい思い出は永遠であり、大人になって時に試練を支える力となり、悪の誘惑から守ってくれる。そう、この若者に語らせた▼コロナ禍の中だが、最後はきちんと送り出してあげたいものである。
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2021年03月06日
いつも物忘れをする旦那たちが、集まって相談した
いつも物忘れをする旦那たちが、集まって相談した。そして忘れたことを思い出す会を開くことを決めた▼その日、会場となる金兵衛さんは、座敷をきれいにし、ごちそうも並べて待った。ところが誰も来ない。番頭さんに聞いた。「21日に思い出し会の約束をしているのに誰も集まって来ない。みんな忘れているのかもしれない。呼んで来てくれ」。すると番頭さんはあきれ顔で言った。「旦那さま、今日は、22日でございます」。ウェブの「福娘童話集」から引いた▼昔から、お年寄りの物忘れは笑いのネタになった。認知症にはなりたくないが、世界の患者は年々増加。2050年までに1億5000万人に達するものとみられる。急速に高齢化が進む日本でこそ、妙薬が待ち遠しい。そんな中で、希望が膨らむ発見である▼蚕で培養したカイコ冬虫夏草が人間の認知機能を高めることを、岩手大学発のベンチャー企業などが突き止めた。韓国ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」に登場した「冬虫夏草」とは違い、認知機能を高める「ナトリード」という物質が含まれる。マウスの実験では、認知機能と毛髪の改善に効果があった、という▼度重なる物忘れに頭を悩ますこのごろ。できれば記憶と髪の毛が残っているうちに、試したいものである。
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2021年03月05日
大地には異形で巨大な菌類の森が広がり、昆虫に似た大きな生物たちが生息する
大地には異形で巨大な菌類の森が広がり、昆虫に似た大きな生物たちが生息する▼宮崎駿さんの漫画版『風の谷のナウシカ』(徳間書店)は、大地から富を奪い、生命体も意のままに作り変える巨大産業文明が行き着いた世界を描いた。毒気を発する菌を避けるため、人類はマスクが手放せない。それでも、愚かな戦いを続ける。地球の未来図でもあるか▼そんな不毛の地をも連想させる映像である。米国NASAが、探査機が送ってきた火星の映像を公開した。「赤い地表」から巻き上がる砂ぼこり、風のような「音」が荒涼感を醸し出す。直径が地球の2分の1で、地球の外側の軌道で太陽を回る。以前から生き物がいたのではないかと、臆測を呼んできた。果たして生物の痕跡は見つかるのか。期待と不安が混じる▼気になるのは温暖化にむしばまれる地球である。国連機関が新たにまとめた報告書によると、世界の平均気温は2100年までに産業革命前に比べ3度上昇し、「パリ協定」が目指す水準を上回る。2度以上上がれば、ミツバチによる授粉ができなくなるとされる。グテレス国連事務総長は、「危険信号だ」と警告を発した▼このままマスクが手放せない惑星になったらどうしよう。緑豊かな地球へのいとおしさがいよいよ募る。
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2021年03月04日
あかりをつけましょぼんぼりに
〈あかりをつけましょぼんぼりに お花をあげましょ桃の花〉。サトウハチローさんが作詞した童謡「うれしいひなまつり」を口ずさむ▼きょうは、桃の節句。ひな人形を飾って、女の子の健やかな成長を祈る。源流が中国の「みそぎ払い」にあるこの行事は、江戸時代から豪華なひな飾りが登場した。首都圏1都3県ではコロナ禍の緊急事態宣言が続き、家族だけでひっそりと祝う家庭も多かろう▼先の歌詞に登場する、「ぼんぼり」に当てる漢字は「雪洞」。雪のうろから漏れる淡い燭光(しょっこう)には、「優しさ」がある。そして、桃には、古来、「厄よけ」「不老長寿」の意味が込められた。いずれも、いとおしい娘に寄せる親心に通じる▼心浮き立つ祭りでも、若手俳人神野紗希さんの“解説”に、心が痛む。「女として生まれ、社会や家庭のしがらみの中で、目鼻を塞(ふさ)がれるように箱に押し込められ、それに逆らうことを知らなかった女たちの人生を、この雛(ひな)たちは暗喩的に代表している」(『女の俳句』)。童謡の短調で暗いメロディーからは、「しみじみと淡いかなしみが立ち込めてくる」▼差別など無い社会でこその、祭りであろう。女性蔑視発言が飛び出し、男女平等ランキングが世界121位では、白酒のお相伴にあずかるのも気が引ける。
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2021年03月03日
文章を一字一句違わず正しく写すのは、思った以上に難しい
文章を一字一句違わず正しく写すのは、思った以上に難しい▼昔の人は仏教の経典を書き写す写経に苦労したようで、間違いを犯した写経生には罰金を科したとの記録が残っている。ちゃんと校正係がいて、誤字脱字をチェックしていた。大事な教えを正しく伝えるには、正確な写経が欠かせなかったのだろう▼確かに1文字の違いが、真逆の意味になったりする。織田正吉さんの『ことば遊びコレクション』から引く。日本たばこ産業が専売公社時代に使ったキャッチフレーズ「きょうも元気だ、たばこがうまい」。「が」の濁点を忘れると、「きょうも元気だ、たばこ買(か)うまい」と禁煙文句に変わる▼正しく伝えることは、人の寿命にも係る。細胞にそれぞれの働きを指示する機能「エピゲノム」が混乱し、正しい指示が伝わらないと老化することが分かってきた。その“故障”を治療する研究が進んでいる。医学の最先端では、今世紀末までに寿命が150歳に延びることも夢ではない。「老化は病気だ」とする世界的科学者シンクレア氏の『ライフスパン 老いなき世界』に学ぶ▼秦(しん)の始皇帝が求めた不老不死とまではいかないが、延命薬を手にする日は、そう遠くないかも知れぬ。それが幸せにつながるかどうかは、別問題ではあるが。
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2021年03月02日
西太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁から東へ160キロ
西太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁から東へ160キロ、1954年3月1日午前9時ごろから漁船、第五福竜丸に白い粉が降り注いだ▼乗組員23人はその晩から目まいや吐き気などに襲われ、数日後にはやけどのような症状が。そして1週間後ぐらいから髪の毛が抜けるようになった。白い粉の正体は、同環礁での米国の水爆実験で粉々になったサンゴ。きのこ雲に吸い上げられ強い放射能を帯びた「死の灰」である。他にも多くの船が被ばくしたが、全容は分かっていない。死の灰は東京・夢の島公園の第五福竜丸展示館で見ることができる▼そこでは今、最初に亡くなった久保山愛吉さん(享年40)とその家族に宛てた子どもらの手紙を公開中だ。「ほんとうにおそろしいそしてにくいすいばくです」「せんそうも、しない すいそばくだんもいらない」。核兵器廃絶への願いをつづる▼それはいまだに実現していない。そればかりか核兵器禁止条約が発効しても、被爆国の日本は背を向けたままだ。当時小3だった久保山さんの長女の作文から。「あのじっけんさえなかったらこんなことにはならなかったのに。こんなおそろしいすいばくはもうつかわないことにきめてください」▼広島・長崎から76年、ビキニ事件から67年。核の悲劇を改めて心に刻みたい。
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2021年03月01日
我田引水
我田引水。官邸の政策会議の議事録で、一般企業の農地所有を解禁したい人たちの発言を読むと、そう思えてならない▼昨年末の国家戦略特区諮問会議では、兵庫県養父市で認めている農地所有特例の扱いを議論。竹中平蔵パソナグループ会長ら民間メンバーは全国展開を強硬に主張した。「大成功」というのが根拠である▼本当か。6社が農地を取得したが、経営面積のほとんどがリースで所有は7%。しかも1社は休業中だ。民間メンバーは耕作放棄や産廃置き場になっていないと強調するが、自ら望んだ特区なのだから、そうならないよう同市が最大限努力するのは当然であろう。管理された実験室と同じである▼特例は2年の延長で決着。主戦場は規制改革推進会議での農地所有適格法人の要件を巡る議論に移った。論点は一般企業による経営支配と株式上場を認めるか。農業関連法人からの意見聴取では慎重論が相次いだ。それでも農業分野の座長、佐久間総一郎日本製鉄顧問は、まとめの発言で株式上場の重要性を指摘した▼竹中氏は、昨年4月に出した共著『日本の宿題―令和時代に解決すべき17のテーマ』に「企業の農地所有を認める」と書き、前々から答案は作成済み。しかし正答を決めるのは政府である。菅首相のブレーンとされるが、忖度(そんたく)は御法度。
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2021年02月28日
〈役人の骨っぽいのは猪牙(ちょき)に乗せ〉という川柳がある
〈役人の骨っぽいのは猪牙(ちょき)に乗せ〉という川柳がある。猪牙は吉原に通うのに使った足の速い小舟のこと。お堅い役人も色で骨抜きになるということらしい▼色ならぬ飲食接待で籠絡できるとみられたか。鶏卵生産大手の前代表から接待を受けたとして、農水省の枝元事務次官らが国家公務員倫理規程違反で処分された。次官は、代金は「大臣(同席していた吉川元農相)が支払ったと思っていた」と話していたが、実際には利害関係者である前代表が負担した▼倫理規程ができたきっかけは、23年前に発覚し、大蔵官僚の接待汚職が暴かれた「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」。官僚の皆さんに〈李下(りか)に冠を正さず〉という言葉を贈ろうと思ったが、直近の総務省をはじめ、倫理規程ができた後も違法接待は繰り返され、問われるはむしろ学習能力か▼元農相と前代表の関係は贈収賄事件に発展。政官業の癒着で鶏卵行政がゆがめられたのではないか。国民の厳しい目が農水省に注がれている。心配なのは農政全体に不信感が広がること。政策遂行に支障が出れば農家にも影響が及びかねない▼元農相の在職中の政策決定過程を農水省は検証中だ。傷を治すにはうみを出し切ることが先決である。そして政策で成果を上げる。国民共通の願いは食料自給率の向上だろう。
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2021年02月27日
〈男は黙って…〉。かつてのビールの宣言文句もいまなら物議を醸すかも
〈男は黙って…〉。かつてのビールの宣言文句もいまなら物議を醸すかも。ことさら男を強調するのはいかがなものかと▼おしゃべりな人、口数少ない人。人それぞれ。別段男だから女だからと限定するのはおかしい。もちろん女性だから会議での話が長いわけでもない。ただコロナ禍で会話が減っているのは確か。知人は、長いマスク生活で「声が出にくくなった」とこぼしていた▼会話を極力しないことが良しとされるご時世である。「黙食にご協力ください」と呼び掛ける飲食店も現れた。食事の楽しさは、気心の知れた人との会話も調味料になる。例えば恋人同士が、2重マスクとアクリル板越しに、黙々と箸を運ぶ。時折、スマホのLINEで“筆談”。これではどんなごちそうでも味気ないだろう▼「賢者は黙して語らず」のことわざが示すように、日本では往々にして沈黙は美徳とされる。「沈思黙考」は、黙して熟慮するさま。不平不満を言わず黙々と働く人も好まれる。しかし「沈黙は金」も時と場合による。菅首相のご子息に絡む接待疑惑の渦中にある総務省幹部は当初「黙秘」を決め込み、会話記録が出ると「記憶力不足」と釈明した▼永田町や霞が関の住人たちには、政権を守るため沈黙を守り通せば出世する「黙約」でもあるのだろうか。
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2021年02月26日