[震災10年 復興の先へ] 津波で犠牲の園児しのぶプロジェクト 「奇跡の花」全国へ 尊い命守る意識を 愛知厚生連海南病院
2021年02月26日

海南病院入り口の花壇に植えられた「奇跡の花」の前に立つ名誉院長の山本さん(右)とプロジェクトの協力者(愛知県弥富市で)
【あいち】JA愛知厚生連海南病院(弥富市)は、東日本大震災の被災地に咲いた「奇跡の花」を全国に広げる活動に協力している。津波で亡くなった園児の遺族らが花の栽培や講演活動を通して「一番の防災は忘れないこと」を伝える活動だ。同病院で中心となって活動する名誉院長の山本直人さん(67)は「活動を通して次世代に防災と命の大切さを伝えたい」と話す。
「アイリンブループロジェクト」が始まったのは2015年2月。地震が起きた11年3月11日、宮城県石巻市の沿岸部で佐藤愛梨ちゃん=当時6歳=ら園児5人が乗った送迎バスが津波に襲われ、愛梨ちゃんは帰らぬ人となった。数年後、現場には真っ白なフランスギクが咲いた。「この花の種を各地で育てて、命の大切さを世界に広めたい」と、愛梨ちゃんの遺族や現地の人らによるプロジェクトが立ち上がった。
震災当時、同病院院長だった山本さんは、職員らと被災地で医療支援をした。機会があれば支援を続けたいと考えていた山本さんは、プロジェクトの一環で映画を作る話を知り、個人的に寄付をした。これをきっかけに、事務局から「プロジェクトを県外にも広げたい」と相談を受けた。
そこで同病院でも17年3月、現地から取り寄せた種から育てた苗を屋上庭園に植えた。同年4月には弥富市と共催で防災フォーラムを開催。さらに海部津島地域の自治体や地元ライオンズクラブなどの協力で、同年秋から学校や自治体など50カ所以上に苗を植えていった。
山本さんはプロジェクトの西日本支部長として活動をけん引。愛知での取り組みをきっかけに、プロジェクトは全国15都道府県、70カ所にまで広がった。
海抜ゼロメートル地帯が広がる海部津島地域一帯は、1959年の伊勢湾台風で甚大な被害を受けており、同病院は県の災害拠点病院に指定されている。
山本さんは「伊勢湾台風の経験で防災意識は高い地域だが、次世代に天災の恐ろしさをこれからも伝えていく必要がある。学校などで子どもが『奇跡の花』を植えることを通して、命の大切さや『自分の身は自分で守る』という防災意識を高めてほしい」と話す。
震災から10年目の節目となる今年3月には、石巻市に石巻南浜津波復興祈念公園が開園する。プロジェクトでは、ここに各地で育てられたフランスギク1万輪を植える計画を立てている。新型コロナウイルス禍で活動が制約される中、プロジェクトは新たな企画も進行中で、同病院も協力する予定だ。
「アイリンブループロジェクト」が始まったのは2015年2月。地震が起きた11年3月11日、宮城県石巻市の沿岸部で佐藤愛梨ちゃん=当時6歳=ら園児5人が乗った送迎バスが津波に襲われ、愛梨ちゃんは帰らぬ人となった。数年後、現場には真っ白なフランスギクが咲いた。「この花の種を各地で育てて、命の大切さを世界に広めたい」と、愛梨ちゃんの遺族や現地の人らによるプロジェクトが立ち上がった。
震災当時、同病院院長だった山本さんは、職員らと被災地で医療支援をした。機会があれば支援を続けたいと考えていた山本さんは、プロジェクトの一環で映画を作る話を知り、個人的に寄付をした。これをきっかけに、事務局から「プロジェクトを県外にも広げたい」と相談を受けた。
そこで同病院でも17年3月、現地から取り寄せた種から育てた苗を屋上庭園に植えた。同年4月には弥富市と共催で防災フォーラムを開催。さらに海部津島地域の自治体や地元ライオンズクラブなどの協力で、同年秋から学校や自治体など50カ所以上に苗を植えていった。
山本さんはプロジェクトの西日本支部長として活動をけん引。愛知での取り組みをきっかけに、プロジェクトは全国15都道府県、70カ所にまで広がった。
海抜ゼロメートル地帯が広がる海部津島地域一帯は、1959年の伊勢湾台風で甚大な被害を受けており、同病院は県の災害拠点病院に指定されている。
山本さんは「伊勢湾台風の経験で防災意識は高い地域だが、次世代に天災の恐ろしさをこれからも伝えていく必要がある。学校などで子どもが『奇跡の花』を植えることを通して、命の大切さや『自分の身は自分で守る』という防災意識を高めてほしい」と話す。
震災から10年目の節目となる今年3月には、石巻市に石巻南浜津波復興祈念公園が開園する。プロジェクトでは、ここに各地で育てられたフランスギク1万輪を植える計画を立てている。新型コロナウイルス禍で活動が制約される中、プロジェクトは新たな企画も進行中で、同病院も協力する予定だ。
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〈よく見ればなずな花咲く垣根かな〉
〈よく見ればなずな花咲く垣根かな〉。松尾芭蕉は、一生懸命に咲くナズナの白い小さな花のいとおしさを句にしたためた▼一見個性に乏しい地味な存在も、よく観察し、唯一無二の良さを見いだすことの大切さを詠(うた)う。この季節、片や桜が華やかに咲き誇り、地味なナズナに凡人の関心はなかなか向かないのだが▼視線を上げると、春の夜空は寂しい。日没後に南天に浮かぶかに座はとりわけ目立たず、ギリシャ神話でも英雄ヘラクレスにいとも簡単に踏みつぶされる残念な役回り。ただ、甲羅の辺りに目を凝らすと、光のもやが見つかる。プレセぺと呼ばれる美しい散開星団で、よく観察しないと出合えない春の星空の宝石である▼派手さに目を奪われ、足元の大切な存在が見えていないのは、政治の世界もそう。特にこの間の官邸主導の農政は、商才にたけた担い手ばかり褒めそやし、地域を支える家族農業を軽視してきた。規制改革の議論では企業の農地取得に道を開こうと躍起だ▼強欲な人が通った後には「ぺんぺん草も生えない」という。企業の撤退後に不毛な景色が広がることにならないか、懸念が付きまとう。ぺんぺん草はナズナの別名。路傍の小さな花にも目を向ける農政であってほしい。
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2021年04月17日

広島産ハッサクサワー新発売 全農
JA全農は20日、広島県産のハッサクとレモン果汁を10%使用した「広島県産はっさく&レモンサワー」(350ミリリットル、アルコール度数4%)を新発売する。JA広島果実連と共同開発した。
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高糖度の果実の開発競争の中で、昔ながらの味わいが魅力のハッサクの消費は落ち込み、収穫量は最盛期の15%にまで減少。全農の担当者は「ハッサクを食べたことがない若い人にも訴求していきたい」と意気込む。
価格は183円。中国エリア、近畿、四国、九州のセブン─イレブン約6800店で先行販売する。
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2021年04月18日
政府は、東京電力福島第1原子力発電所にたまっている
政府は、東京電力福島第1原子力発電所にたまっている放射性物質を含む水を、海洋に放出することを決めた。地元の漁業関係者は納得していない。風評被害も心配だ。ここに至るまでの紆余(うよ)曲折と、今後に要する時間と経費、不安を考えると、原子力が夢の技術と思われていた頃がうそのようだ▼1960年代に人気だった鉄腕アトムは、原子力で動く設定だった。漫画雑誌には原子力ロケットや超音速機の想像図が載り、当時の少年は原子力に夢を託した▼原子力開発は、ギリシャ神話のプロメテウスによく例えられる。ゼウスに背き、天界から火を盗んで人間にもたらしたプロメテウスは、罰として岩山に縛り付けられる。毎朝飛んでくるワシに生き肝をついばまれるが、死ねない体は、毎日苦痛だけを味わい続ける▼火を手にして人間は、夜の闇や冬の寒さに立ち向かう力を得たが、火災の恐怖にもさらされる。制御が厄介な力はもろ刃の剣だ▼原発をもたらしたプロメテウスは誰だろう。政治家か電力会社か。毎日痛みを感じているのだろうか。得をしたワシは誰か。ワシはしばしば米国の象徴として描かれる。日本の原発は当初、米国の技術だった。ワシは今もおいしい思いをしているだろうか。
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2021年04月19日
広葉樹に目を向けよう 森林の燃料資源化
木質チップを燃料にした発電が広がりを見せ、放置されてきた広葉樹林が、新たな燃料資源として注目されている。作業の安全性や経済性などの課題はあるが、里山を生かすチャンスでもある。地域で活用の可能性を探りたい。
日本木質バイオマスエネルギー協会は、法令などで伐採の制限がかかっていない広葉樹の民有林が、全国に474万ヘクタールあるとの調査結果をまとめた。全国の森林の19%に当たる。傾斜度や林道の整備状況などもあり、全てがそのまま資源として使えるわけではない。それでも、同協会が現地を調査した3カ所では、広葉樹全体の2~5割が利用可能だとしている。
広葉樹はかつてまきや炭の原料確保に利用されていた。それが1960年代に起きたエネルギー革命で薪炭の利用がなくなり、荒廃し始めた。
真っすぐに伸びる針葉樹と違い、建築材にはなりにくい。現在は家具材や製紙原料が主な用途で、放置されたままの樹林も多い。中には低木が密生し、人が入れないほどに荒れた森もある。広葉樹が茂る里山が荒廃したことで山と里の間の緩衝帯がなくなり、耕作地に鳥獣害を呼び込む原因にもなっている。
70年代からはミズナラやコナラ、クヌギが集団で枯れるナラ枯れ現象が起き、荒廃を加速させている。ナラ枯れは甲虫が木の幹に穴を開け、媒介する菌類が木に感染して起きる。これらが直接の原因だが、下草刈りなど手入れが行き届かなくなったことも感染拡大の一因といえる。
利用されなくなった広葉樹に、燃料としての期待が高まっている。政府は、国内で使う電力の電源構成を見直し、太陽光発電などの再生可能エネルギーの比率を高める方針だ。木材チップを使ったバイオマス(生物由来資源)発電も含まれ、現在の電源比率2・3%を2030年には3・7~4・6%程度に引き上げるとしている。
広葉樹を発電燃料に生かせれば、伐採で更新が促される。手入れも行われ、里山の景観保全につながる。鳥獣害対策にもなる。また、家畜の敷料を輸入木材チップから地元産に置き換えられる可能性もある。木質バイオマス発電は地元で燃料を作るため、地域経済への貢献度が高いのも特徴だ。地域に新たな仕事ができる。
広葉樹は伐採中に裂けたり、思わぬ方向に倒れたりすることもあり、針葉樹以上に作業の安全への配慮は必要だ。枝が多く輸送効率も悪い。こうした課題に対して、山で木材をチップにできる移動式チッパーを利用するといった新技術の導入など、改善策が開発されてきた。地域に埋もれた森林資源に、もう一度目を向けよう。
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2021年04月20日

即駆け付け農機修理「Dr.car」出発 農家負担軽減 信頼構築へ JAぎふ
JAぎふは4月から、圃場(ほじょう)で農業機械が動かないなどのトラブルを素早く解決するため、農業機械の整備士が現場に急行する「農機のDr.car(ドクターカー)」の運用をスタートした。
農作業中に機械が故障するなどのトラブルが起こると、農家は、農機を農機センターへ持ち込むが、作業時間のロスや搬入コストなどの課題があった。……
2021年04月17日
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農地バンク・農業会議合併 新組織「ひょうご農林機構」が誕生 兵庫県
兵庫県の農地中間管理機構(農地集積バンク)である兵庫みどり公社と、県内40市町の農業委員会を束ねる県農業会議が合併し、新組織「ひょうご農林機構」が誕生した。より現場に近い農業委員会のネットワークを駆使し、農地集積バンクとしての機能を強化、農地の集積・集約を加速させる。合併は公社が会議を吸収する形で、「農業会議」を冠した法人がなくなるのは47都道府県で初めて。(北坂公紀)
現場と連携、機能強化へ
新組織は1日付で発足した。……
2021年04月21日

[活写] 青い境界線 たずねて
大分県杵築市の「大分農業文化公園」で、70万本のネモフィラが見頃を迎えている。50アールの大花壇「フラワーガーデン」一面に青い花が広がり、来場者は広々とした園内で、写真撮影や散策を楽しんでいた。
同園は、2018年から来場者の要望に応える形でネモフィラの栽培を開始。職員が栽培方法を学び、花壇を手作りして風景をつくり上げてきた。
25、29日にはネモフィラを摘んで、小さなブーケを土産にできる摘み取り体験を開催する。また、花をイメージした青いソフトクリームなど地場産農産物の加工品も人気だ。
会期中は検温や来場者情報の記録など、新型コロナウイルス対策を徹底する。矢野格園長は「ネモフィラ、園内にあるダム湖、そして空。三つの青がコラボレーションする風景を楽しんで」と笑顔を見せる。見頃は4月下旬まで。入場無料。(釜江紗英)
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2021年04月21日

魅力満載の動画配信 特産をラップで称賛 長野県職員
「信州長野は日本の屋根」「南は市田柿 ガキには分からない粋な味」。長野県庁に勤める若手職員4人からなる「WRN」は、ラップで若い世代に農や自然、地域の魅力を伝える。歌詞には特産のリンゴやブドウ、キノコなどの農産品が登場する曲もある。(藤川千尋)
カラス対策も曲に
グループ名の「WRN」は「We Respect Nagano」(長野県を誇りとする)の頭文字を取った。鳥獣対策・ジビエ振興室の宮嶋拓郎さん(31)がリーダーを務める。この他、森林づくり推進課の服田習作さん(31)、ゼロカーボン推進室の三村裕太さん(32)、上田保健福祉事務所の井出伊織さん(33)がメンバーだ。
きっかけは2015年ごろ。当時、県飯田合同庁舎に勤めていた宮嶋さん。若手農家の交流会を企画し、県のホームページに告知を出したものの人が集まらなかった。痛感したのは、地域の魅力や県の取り組みが、伝えたい人に届いていないこと。「世の中に関心を持ってもらう伝え方が必要」と考えた。
当時流行していたラップに注目。同じ庁舎で働いていた服田さん、三村さん、井出さんに声を掛けて活動を始めた。
現在はライブを企画したり、制作したミュージックビデオを動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿したりするなどして活動する。
3月に投稿した「Night Veil」は、県が約40年ぶりに実施したカラスの生息調査を基に作った。農作物を荒らすカラス対策の曲だ。歌詞では「ついばむ 放置果実」と、摘果などで畑に捨てられた果実がカラスの冬の餌となることを強調。「生き延びるための餌残さない 対策そういう 意識共有」と呼び掛ける。
4月中旬に業務で参加できなかった井出さんを除いたメンバー3人が、長野市の戸隠神社や新潟県内の川や海で新曲のミュージックビデオを撮影した。新たな楽曲で発信したいのは「山や森林を大切にすることは田や畑へ豊かな水を供給すること」であり、「海の生態系の保全につながること」だ。
宮嶋さんは「ラップを通じて、若い世代に農や地域の魅力を伝え、盛り上げていきたい」と話す。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=PnTYAjVzOr4
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2021年04月21日

宇治茶の初取引 平均1キロ1万1187円
2021年産の宇治新茶の初市が19日、京都府城陽市のJA全農京都茶市場であった。平均価格は煎茶1キロ1万1187円と、新型コロナウイルス禍による需要減退で異例の安値だった昨年の8512円を大きく上回った。最高値は和束町産の手もみ茶で1キロ18万8888円(昨年10万円)と、資料の残る2000年以降で最高価格となった。宇治市の中村藤吉本店が落札した。
初市に先立ち、JA全農京都の中川泰宏会長が「昨年は茶農家にとって厳しい売り上げとなったが、茶商の皆さんの支援で、何とか今年の初市を迎えることができた。若い茶生産者を育てるためにも、目いっぱいの数字を書いてほしい」と高値での入札を呼び掛けた。……
2021年04月20日

トロロアオイ「生・消」で守る 寄付募り産地維持へ奮闘 埼玉県小川町
手すき和紙を作るために欠かせないトロロアオイ。ユネスコ無形文化遺産「和紙・日本の手漉(すき)和紙技術」に登録されている、「細川紙」の産地・埼玉県小川町で、トロロアオイの担い手と和紙職人の掘り起こしを目指すプロジェクトが始動した。クラウドファンディング(CF)での呼び掛けに賛同した消費者へトロロアオイの種を送り、プランターや庭で育ててもらう。栽培したものは、小川町トロロアオイ生産組合が検品して、同町の紙すき職人に納める。新たな産地の維持・活性化策に期待がかかる。(木村泰之)
消費者も栽培に参加
「『わしのねり』プロジェクト」と銘打ち、海外への国産農産物の普及などに取り組むスタイルプラス(東京都港区)が企画した。
プロジェクトを始めたきっかけは、トロロアオイの主産地・茨城県での全農家5戸が高齢化で、栽培をやめるかどうかを検討したからだ。同県の生産量(2019年)は全国1位で7・5トンとシェア75%を占める。当面は作り続けることになったが、作り手がいなくなると、全国の和紙生産地が受ける影響は大きい。
一方、小川町では1965年ごろまでトロロアオイを栽培していた。だが一時途絶え、紙すき業者は茨城県から取り寄せていた。02年に遊休農地を活用し、30戸で同組合を結成して栽培を復活させた。茨城に次ぐ3・8トン(19年)を作るが、今は10戸。最年少は65歳と担い手の年齢的な問題を抱える。
同社から企画を持ち掛けられた組合長の黒澤岩吉さん(84)は「一般の人の参加を機に、町内で栽培する人が現れてほしい。要望があれば指導に積極的に協力し、困っている和紙産地の期待に応えたい」と話す。
国内で約3割の和紙を生産する同町の紙すき職人も後継者問題を抱える。一時、数百戸あった細川紙の紙すき業者は約5戸に減少。職人を育成する町和紙体験学習センターは老朽化で、修繕費がかさんでいるという。
同社はこうした修繕費用や、新商品の開発などの費用をCFで集める。5月16日までに84万円を目標にする。栽培に不慣れな消費者のため、農家から動画で栽培指導が受けられるようにした。
川口洋一郎代表は「トロロアオイの知名度は低い。消費者と農家、紙すき職人の三位一体で生産を継承していくことが必要」と、参加を呼び掛けている。
<ことば> トロロアオイ
アオイ科の一年草。オクラに似た花をつけるため「花オクラ」とも呼ぶ。根から取る粘液を「ねり」といい、手すき和紙の繊維を均一にする添加剤として使う。日本特産農産物協会によると、1965年度には約1万5000トンの収穫量があったが、2019年度は10トンとなった。胃腸薬や菓子類、麺類のつなぎなどの食品添加物としても用いられる。
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2021年04月20日

移住・二地域居住したい 都民4割が関心 首位は鎌倉・三浦(神奈川) リクルート調査
東京都民の4割が地方移住や二地域居住に関心があるとの調査を、民間会社がまとめた。移住や二地域居住に関心のある都民に住みたいエリアを聞き、ランキングもまとめた。1位は、神奈川県の鎌倉・三浦エリアで、「街ににぎわいがある」を理由に挙げた人が多かった。
調査は、(株)リクルートが1、2月、東京都在住の20~69歳の男女を対象にインターネットで行った。東京駅から50キロ圏外を「地方」とし、希望するエリアを三つ選んでもらった。回答数は、事前調査は1万5572人で、本調査は1万572人。
事前調査で移住・二地域居住に関心があるか聞いた。「強い関心がある」が7%、「関心がある」が25%だった。移住・二地域居住が決まっている人や実施に向けて行動している人を含めると、4割が関心を持っていた。
本調査で、関心があると答えた人に理由を聞くと「自然が豊かな環境で生活したい」が56%で最も多かった。「リラックス・リフレッシュできる時間・空間がほしい」が41%、「住居費を下げたい」が31%の順だった。
ライフステージ別では、「自然が豊かな環境で暮らしたい」と答えた人は、子育てを卒業した60歳以上の夫婦世帯と、子どものいる家族世帯で多かった。単身の女性は「東京での生活・仕事に疲れた」が多かった。
移住などに関心があると答えた人に、希望するエリアも聞いた。選んだ理由は、街のにぎわいや医療・子育て環境、地域の自然環境などが多い。観光地として有名なエリアなどが人気を集めた。
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2021年04月17日

熊本地震5年 絆つなぐ手作り弁当 大学校舎移転“学生村の縁”今も 南阿蘇村住民グループ
熊本地震の本震から5年。南阿蘇村では今も、農業実習に訪れる学生に手作り弁当を届ける女性たちがいる。地震が起きる前は東海大学農学部生向けの下宿を営んでいた。今後、実習地は移転する予定で、学生との交流は先細りしかねない。だがメンバーはできるところまで「おばちゃんたちのご飯が食べたい」との思いに応えようとしている。(三宅映未)
地元の味で「恩返す」
東海大の旧キャンパス近くにある農業実習地には昼、大型バスが数台並ぶ。午後の授業に備え、熊本市内の校舎から学生が移動してくる。片道約1時間の道のりの後、待っているのが弁当の時間だ。
今月半ばの献立は人気メニューのとんかつや地元産ワケギを使った郷土料理。千葉県から進学した相田晴嵩さん(19)は「1人暮らしで食べ物が偏りがちだからありがたい」と頬張った。鹿児島県出身の米倉咲良さん(19)は「(実習地までの)移動は少し大変。でもおいしい弁当が活力になる」と話した。
弁当を作るのは同村黒川地区の住民グループ「すがるの里」。地震まで賄い付きの下宿を営んでいた女性16人がメンバーだ。学生の8割に当たる800人が住み、一帯は「学生村」と呼ばれていた。
だが、地震で農学部のキャンパスは建物や敷地に亀裂が走り、立ち入りできない状況に。同地区も下宿や建物が崩れ、学生3人の命が奪われた。校舎はは熊本市に移転し、学生の姿は消えた。
復旧が進む中、行政、学生と住民を交えた話し合いが持たれた。学生の「おばちゃんたちのご飯が食べたい」との声を受け、2019年にグループを設立。「地震の時、学生に命を救われた人もいる。恩返しの気持ちで始めた」と代表の垣ます子さん(72)は語る。
手作りの弁当を紹介する垣代表(同)
活動拠点は実習地近くの廃校。実習日に合わせ週に1、2回、朝から調理を始める。食材は地元産を多く使い、農家から提供を受けることもある。酢みそなどの調味料は手作り。価格は1個400円。
住民の知恵 貴重な学び
20年末、農学部校舎を益城町に建設する工事が始まった。畜舎など実習場も備え、23年4月に運用を開始する計画。今の実習地がどうなるかは不透明だ。
メンバーの一人、竹原伊都子さん(60)は「卒業生が関係を引き継ぎ、地震を知らない今の学生も訪ねに来る。『用がなくても(来て)いいとよ』とご飯を食べてもらう」と話す。地震前、学生たちは住民と酒を酌み交わし、いろいろな手伝いをして交流を深めた。「授業で学べないことを知ることができて、うれしい」との声も竹原さんは聞いた。
新校舎近くに「学生村」ができる話は、現時点でない。竹原さんは「南阿蘇で学生が地域から学ぶ機会は減るだろう。建設地を見るたび複雑な気持ちになる」と明かす。
住民は、当時の学生も参加する二つの団体と今も交流を続けている。同大学出身で同校に勤める中野祐志技術員は「キャンパスが離れても、つながりをどうにか持ち続けたい」と語る。
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2021年04月16日

熊本地震から5年 復旧の歩みに隔たり 営農本格化 工事「足踏み」 南阿蘇村、山都町
14日と16日に、2度の震度7を記録した熊本地震から5年がたつ。土砂崩れや地割れで被災した農地は多くが復旧し、営農再開を果たした。熊本県南阿蘇村では土砂に埋もれた棚田を大区画に整備。一方で山都町では復旧が遅れ、あぜなどの工事の3割が未完了だ。生産者の中には自ら補修し営農を続けている人もいる。(岩瀬繁信)
南阿蘇村乙ケ瀬地区の棚田は、2016年4月16日の地震で、大規模な土砂崩れが起きた。水稲を栽培する藤原三男さん(73)は、「50年、耕した水田が一瞬でなくなった」と振り返る。
おいしい米ができるよう土づくりに力を入れ、若い頃は堆肥を牛の背中に載せて運んだ。10年前には山の湧き水を導く水路も整備したが、地震で土砂と一緒に崩落した。
個人で建てたライスセンターは、乾燥機8台のうち3台が駄目になった。「残りもメーカーが直せるか分からないほどめちゃくちゃだった。廃棄すると思ったら涙が出た」と話す。
米作りを「やめようか」と思ったが、幸い建物は無事だった。被害を免れた水田で田植えもできた。稲刈り後に必要になる調製施設は、壊れた部品を交換し、毎日少しずつ復旧作業を続け、収穫に間に合わせた。
16年秋、藤原さんら地区の住民は棚田復旧の協議を始めた。以前から区画整理が必要と話しており、災害を機に大区画化を進めると決めた。県や国、村の支援で26ヘクタールの工事を開始。以前は1枚数アールの水田もあったが、20~30アールに広がった。
藤原さんは「大きな機械も格段に入りやすくなった」と喜ぶ。20年に一部で田植えが始まり、21年は全面を植える。来年のことは分からないが、「元気なうちはこの土地で米を作り続ける」と藤原さんは決意する。
熊本県は、農家の営農再開率を21年3月末で100%とする。一方で農道や水路などの復旧工事は完了率が86%。地域差が大きく、16年6月に豪雨の被害が重なった山都町は69%にとどまる。
棚田が広がる山都町白糸地区は、工事完了率が56%。水稲を2・7ヘクタール作る岩崎邦夫さん(78)は、崩れたあぜや水路11カ所で工事を申請したが、完了はまだ2カ所だけだ。「先祖が守った土地を荒らすわけにはいかない」と話し、早期の工事完了を訴えている。
工事が進まない中、地区では多くの生産者が農地を自身で補修して営農を続ける。
山下徹さん(50)は、崩れたあぜの内側に簡易のあぜを設置し、採種用の米を作る。山都町は県の主食用米種子の半分以上を生産していて「作り続ける責任がある」と、山下さんは力を込める。
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2021年04月14日

無花粉ヒノキ「丹沢 森のミライ」デビュー 神奈川県が苗出荷
神奈川県は無花粉のヒノキを「丹沢 森のミライ」の愛称で、初めて出荷していくことを明らかにした。現在、県内で出荷される杉やヒノキは、全て花粉の飛散量が少ない品種。「丹沢 森のミライ」はこれらの品種の20%以下の飛散量だった。第1陣は152本用意し、今後の植樹のイベントでのPRに使う予定だ。
2012年に県の自然環境保全センターがヒノキ4074本から花粉の飛ばない可能性がある雄で、繁殖しない不稔性のヒノキ1本を見つけた。その後2年間調査し、花粉が飛散しないことを確認。19年5月から県山林種苗協同組合がさし木で育苗を始めた。苗木の土の付いた根の部分が筒状のコンテナで2年育てた苗を出荷できるようになった。
県は林業関係者などからの愛称を募り、136点から「丹沢 森のミライ」と決めた。黒岩祐治県知事は記者会見で「花粉症のない快適な未来を予感させる名前」などと選定の理由を語った。
無花粉ヒノキの価格は、2年生のコンテナ苗で1本300円前後。同等程度の規格で少花粉のヒノキより100円ほど高い。同組合に連絡すれば購入できる。県は27年度までに毎年40~50ヘクタールに15万本程度植える杉やヒノキの1割ほどを無花粉の品種にしていく予定だ。
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2021年04月14日
3都府県「まん延防止」 コロナ禍出口どこに
政府は9日、新型コロナウイルス対策として緊急事態宣言に準じた対応が可能となる「まん延防止等重点措置」を東京、京都、沖縄の3都府県に適用することを決めた。対象区域の飲食店は、営業時間の午後8時までの短縮を求められる。影響を受ける外食産業や農家などの関係者からは、コロナの終息に向けた出口が全く見えない状況に「かなり厳しい」「これ以上は限界」といった声が相次いだ。
また時短、限界 消費しぼむ
外食
外食業界団体の日本フードサービス協会は「飲食店は『時短営業対応をいつまで繰り返すのか。いい加減にしてほしい』というのが本音だ」と明かす。感染防止対策でできることは既にやってきたが、これ以上は限界と受け止める。
時短の長期化で、銀行が追加融資を渋る事例が増えており、雇用調整助成金が当初予定の4月末で切れてしまえば、「飲食店が生き延びることはできない」と苦境を訴えた。
野菜仲卸
まん延防止等重点措置の東京都適用を受け、野菜の仲卸業者は「特に酒類を提供する飲食店からの注文は落ち込みが大きくなっている」と明かす。緊急事態宣言の解除後、注文は3割増と回復したが、「感染増加に伴い今週は再び落ち込んだ。大型連休の書き入れ時に重なるのは痛い」と漏らす。
卸売業者も「飲食店向けだった野菜が振り向け先に困り、葉物など足が早い商材は取引価格を大きく下げている」と話す。
酒造組合
度重なる飲食店への時短要請で、需要が大きく減る酒の業界は悲鳴を上げる。日本酒造組合中央会は「飲食店や旅行での消費が減り、酒造メーカーの経営はかなり厳しい。その状況が続く」と話す。高級日本酒を販売する東京都内の酒店は「昨年の春ごろは、自宅消費でインターネット販売が盛り上がったが、その勢いも収まった」と課題をみる。自宅向けの消費挽回に期待するものの、苦戦している状況だ。
作付けどうなる 策尽きた
生産者
東京都あきる野市の長屋太幹さん(39)は、約1ヘクタールでケールやリーキ、ビーツなどを生産し、都内のレストランに出荷している。時短営業の影響を受け、飲食店との昨年の取引額は例年の3分の1程度に落ち込んだという。
都がまん延防止等重点措置の対象となることを受けて「春から飲食店が復活することを期待して、頑張って作付けをしたが、なかなか厳しい」と声を落とす。
飲食店
買い物客がまばらな商店街(9日、那覇市で)
沖縄県では、今月1日から独自で飲食店への時短要請を実施している。JAおきなわの直売所で食材を毎日仕入れる糸満市の飲食店「味どころ田舎家」の高田見発店長は「要請が出た時点で店内での飲食自体を控える動きが増え、夜に加えて昼の客足も落ち込んでいる」と窮状を話す。昼は弁当販売に切り替えたが、1日20~30個ほどの売れ行きで、売り上げの減少をカバーできない。「できる限り経費を削減しているが、1年近く同じような状況が続き、もう手の打ちようがない」と語る。
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2021年04月10日