貿易交渉報道2020年8月
米大統領選 陣営対決が佳境 農業・貿易が焦点
米国大統領選は、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が対決する構図が決まり、11月の投開票日に向けて今後、両陣営の対決は佳境に入る。中国との貿易戦争や新型コロナウイルス禍の影響で、農家の不満も多いとみられ、共和党が強い農業州すらトランプ氏にとって盤石とは言えない。今後の激戦州のてこ入れに向けて、農業や貿易政策に両陣営がどこまで踏み込んでくるかが焦点になりそうだ。
トランプ氏 支持層てこ入れも
大統領選は、全米50州と首都ワシントンに割り当てられた選挙人計538人のうち、過半数(270人)を獲得した候補が当選する。基本的に各州の選挙人は勝者が総取りするため、州別の勝敗が鍵になる。
トランプ氏とバイデン氏は両党の党大会で正式に大統領候補に指名された。
トランプ氏は前回2016年の選挙で、環太平洋連携協定(TPP)離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)見直しなど貿易政策の転換を強く訴えた。今回の選挙戦では、こうした公約が実現したこともあってか、貿易政策への言及は中国に対するものが多い。
ただ、新型コロナ禍による死者数の増加や経済の低迷で、今回はトランプ氏の苦戦が伝わる。こうした中、元々支持層が多い農業地帯の票固めを重視するとみられるが盤石な支持基盤を形成できていない。
例えば、牛肉生産の一大産地で、過去の選挙では共和党が票田として連勝してきたテキサス州は、現時点では支持の拮抗(きっこう)を示す世論調査も多い。中国との関税引き上げ合戦や新型コロナの影響で輸出が振るわないなどの不満が背景にあるとみられる。
前回の選挙では、製造業が衰退したラストベルト(さびた工業地帯)ををはじめ、中西部の激戦州で相次いで勝利したことが、トランプ氏の大きな勝因となっていた。このうちウィスコンシン、ペンシルベニアなどは酪農も盛ん。7月には共和、民主両党の地元議員が連名で、日米貿易協定の追加交渉を求める書簡をまとめるなど、市場開放への期待もくすぶっている。
バイデン氏 TPP言及に注目
対するバイデン氏は、TPPを巡る発言が注目だ。TPPを合意に導いたオバマ前大統領を副大統領として支えた。ただ、これまでTPPへの言及はほとんどなく、事実上の公約となる民主党の綱領への記載を避けた。
日本の外交筋は「TPPは民主党内でも反対派が多く、大統領選で強くPRすることはないのではないか」と指摘している。
ただオバマ政権にとってTPPは、中国に対抗するアジアの秩序づくりにつなげる戦略でもあった。バイデン氏は昨年、討論会で「元の協定のままでは参加しない」とTPP再交渉を掲げる場面もあった。
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2020年08月30日
日英貿易協定のブルーチーズ EPA枠内で低関税に
政府は、英国との貿易協定交渉で焦点になっているブルーチーズについて、欧州連合(EU)産の輸入枠が余った分に限り、英国産にも低関税を適用する方向で最終調整に入った。茂木敏充外相とトラス英国際貿易相が28日にもテレビ会議で詰めの協議に臨み、大筋合意を目指す。
2019年2月に発効した日欧経済連携協定(EPA)では、ブルーチーズなどソフト系チーズに最大3万1000トンの輸入枠を設け、枠内税率を段階的に削減、撤廃する。19年度の輸入枠は2万600トンで、利用率は58%だった。
交渉で英国は、「スティルトン」に代表されるブルーチーズなどの関税優遇を要求。EU産の輸入枠が余った分を英国分に振り向けるよう求めていたもようだ。
輸入業者が英国産チーズを通常の関税率(29・8%)で輸入し、EU枠に余りがあれば、枠内関税率(ブルーチーズは現行24・2%)との差額を還付する仕組みを軸に調整する。余らなければ低関税での輸入は認めない方向だ。EU枠の利用率は毎年、年末ごろに明らかになる。
日本側はチーズなどの英国枠新設を認めない方針で交渉してきた。一連の調整で、当初からの交渉方針を堅持し、市場開放の水準を日欧EPAの枠内で収めることができたと判断したとみられる。英国産ブルーチーズの19年度の輸入量は約27トンにとどまっている。
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2020年08月27日
日英 28日にも閣僚級協議 ブルーチーズ焦点
日英両政府は貿易協定交渉の閣僚級協議を、28日にテレビ会議で開く方向で最終調整に入った。8月中の大筋合意を目指し、茂木敏充外相とトラス英国際貿易相が詰めの協議を行う見通し。農産品では、英国が優遇措置を求めるブルーチーズなどの扱いが焦点になる。
茂木氏とトラス氏は今月6、7日にロンドンで、交渉開始後初となる対面での協議に臨んだ。「大半の分野で実質合意した」(茂木外相)上で8月中の大筋合意、来年1月1日の発効を目指すことを確認した。
一方、農産品などの扱いは決着せず、英国が優遇措置を求めるブルーチーズなどを巡り、事務レベルで詰めの協議が続いている。
日本側は、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)でブルーチーズを含むソフト系チーズの輸入枠を設けているため、英国枠の新設は認めない方針。英国側は、日欧EPAの輸入枠の未消化分を英国に振り向けるよう求めているもようだ。
日本が英国に優遇措置を認めた場合、日米貿易協定など他の協定に影響する可能性もあり、両政府がどのような着地点を見いだすかが焦点だ。
大筋合意した場合、両政府は9月にも協定を確定、署名したい考え。その後は1月1日の発効に向けて双方の議会承認手続きが必要で、日本政府は秋の臨時国会での承認を目指すことになる。
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2020年08月26日
米国が生ジャガ解禁要請 検疫協議へ 国内産地は反発
米国政府が日本に対し、生食用ジャガイモの輸入を解禁するよう要請し、今後協議に入ることが分かった。日本はジャガイモシストセンチュウ、ジャガイモシロシストセンチュウの侵入を防ぐため、米国を含め各国からの生食用の輸入を認めていない。病害虫侵入に加えて、ジャガイモ生産量が世界屈指の米国が国内シェアを奪う恐れもあり、国内産地からは「輸入解禁は断じて認められない」との声が上がる。
農水省の公表資料によると、米国政府は3月31日、日本に対し輸入解禁を要請。植物検疫の対象となる病害虫を定め、それに応じた検疫措置を協議することになる。協議の進捗(しんちょく)は、ジェトロ(日本貿易振興機構)発行の「通商弘報」で公表する。
両害虫はジャガイモなどに寄生し、枯死被害を引き起こす。シストセンチュウは現在、4道県の71市町村で発生が確認されている。同省はまん延防止に向けて、発生農地で使用した農機の洗浄などを推進している。
シロシストセンチュウは北海道の3市町で発生中。同省は2016年以降、土壌消毒などによる緊急防除を講じてきたが根絶できていない。
米国でも両害虫は発生しており、生食用の輸入が解禁されれば国内産地は両害虫の被害がさらに広がるリスクを抱え込む。その上、米国産との競合を強いられることになる。国連食糧農業機関(FAO)によると、米国のジャガイモ生産量(18年)は世界第5位で、2000万トンに上る。
主産地のJA北海道中央会は、輸入解禁について「海外からの病害虫流入のリスクを高め、国内生産基盤の毀損(きそん)につながる恐れがあり、断じて容認できない」と反対している。
米国産の加工用ジャガイモは、加工場までの輸送過程を完全に密閉することなどを条件に輸入を認めている。米国政府の要請を受け、2月に植物防疫法の細則を改定し、2~7月の輸入期間を撤廃。制度上、8月以降も輸入が可能になった。ただ、関係者によると加工用は輸入品の方が割高になるという。
加工用ジャガイモの輸入期間の延長は、米通商代表部(USTR)が外国貿易障壁報告書で要求していた。
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2020年08月22日
日英チーズで攻防 貿易交渉 日本、輸入枠認めず
日英貿易協定交渉で、英国側がチーズでの優遇措置に関心を持っていることが分かった。日本が欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で設けたチーズの輸入枠が消化しきれていないことに着目し、余剰分を英国に回すことなどを求めているとみられる。日本は、英国向けの輸入枠は新設しない方針。両国間で調整が続いているという。
英国は、ブルーチーズの「スティルトン」が有名。しかし財務省の貿易統計によると、2019年度の英国からのブルーチーズの輸入量は約27トンにとどまる。
日欧EPAでは、ブルーチーズを含むソフト系チーズに最大3万1000トンの輸入枠を設定した。枠内の関税は段階的に引き下げ、16年目には撤廃する。
19年度の輸入枠は、英国分を含む上限2万600トン。これに対し、消化率は58%だったため、英国側は日本に受け入れの余地があるとみていると思われる。だが、仮に日本が英国に優遇措置を取れば、日米貿易協定など他の協定に影響する可能性もある。
英紙フィナンシャルタイムズ電子版は10日、日英交渉がチーズを巡って難航していると報道。英国側には、日英協定が日欧EPAを上回る内容になったと示すため、チーズでの優遇措置の獲得を象徴にしたい期待があるなどと報じている。
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2020年08月12日

自民 経済協定で会合 日英交渉で念押し 農産物は「日欧範囲内」
自民党は11日、TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(本部長=森山裕国対委員長)の会合を開き、英国との貿易協定交渉について政府から聴取した。会合に出席した茂木敏充外相は、8月中の大筋合意へ、主要論点は一致したと強調。輸入などの技術的な調整などが残っていると説明した。党幹部ら議員からは、農産物について、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)で約束した範囲を超えないよう、改めて念押しする声が相次いだ。
茂木外相から聴取
日英貿易協定交渉を巡っては、茂木敏充外相が5日から英国を訪れ、6、7の両日にトラス英国際貿易相と協議。8月中の大筋合意、来年1月1日の協定発効で一致した。
茂木外相は、この日の対策本部の会合で「大半の分野で実質的に合意した」と説明。大筋合意へ「あとは細かい詰めの作業。技術的にどうお互いの立場を両立させるか」が焦点になるとの認識を示した。
同本部などは6月、日英交渉が始まるのを前に、茂木外相に対して、輸入枠数量が「EUと英国を合わせても日欧EPAを超えない」ことをはじめ、過去のEPAを超えないことなどを求めていた。
森山本部長は「環太平洋連携協定(TPP)を離脱した米国には、TPPワイドの関税割当枠(輸入枠)を一切与えなかった」と指摘。今後交渉を控える日米貿易協定への悪影響にもならないよう、申し入れを守ることが必要との認識を改めて示した。
会合は同党の議員連盟である「TPP交渉における国益を守り抜く会」(会長=小野寺五典元防衛相)との合同で行われ、冒頭以外は非公開で開いた。
小野寺会長は会合後、政府側の説明を巡り記者団に「最終的に日・EU(EPA)の枠を超えない対応をしてもらえると確信している」と述べた。
この日の会合では、6日にテレビ会議形式で行われたTPP委員会についても政府から説明を受けた。
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2020年08月12日
日英協定 月内決着へ 閣僚協議 外相「大半で合意」
日英両政府は7日、新たな貿易協定交渉の閣僚級協議を終え、8月末までの大筋合意と来年1月1日の発効を目指す方針で一致した。協議後に記者会見した茂木敏充外相は「全24章の大半の分野で実質合意した」と述べ、主要論点での進展を強調。だが、農産品の扱いなどの詳細は、大筋合意に至っていないことを理由に言及を避けた。
茂木外相が渡英し、トラス英国際貿易相とロンドンで2日間にわたり協議した。農産品や自動車・同部品の関税を含む市場アクセス、投資、電子商取引などを議論。会見で茂木氏は、市場アクセスや原産地規則について「相当、詰めの議論ができた」と述べた。8月末には米国での先進7カ国首脳会議(G7サミット)の開催が調整されており、これに合わせて日英首脳が大筋合意を確認する可能性がある。
両国は、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)をベースに交渉している。農産品では日欧EPAで輸入枠を設けた品目の扱いが焦点で、英国はチーズなどの輸出拡大に関心が強い。だが、協議後に日本政府関係者は、輸入枠の新設は認めない方針を改めて強調。英国枠を新設すれば、英国分も含めてEUに約束した市場開放水準を超える恐れがあるからだ。
英国は今年1月にEUを離脱。日欧EPAの関税率が適用される「移行期間」は12月末までのため、両政府は年明けの新協定発効に向け6月に交渉を始めた。対面での閣僚協議は今回が初めて。
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2020年08月09日
日英協定の交渉大詰め 閣僚級協議を開始
日英両政府は6日、ロンドンで貿易協定交渉の閣僚級協議を始めた。焦点となる自動車・同部品などの扱いで、茂木敏充外相とトラス国際貿易相が詰めの協議に臨み、大筋合意を目指す。
対面での閣僚級協議は初めて。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、6月の交渉開始から閣僚級、事務レベルともに、テレビ会議などで協議してきた。
茂木外相は訪英を発表した4日の会見で「国益を懸けた難しい交渉を電話でやるのは無理だ」とし、対面で合意につなげたい考えを示した。
農産物では、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入枠を設けたチーズなどの扱いが焦点。日本は英国枠を新設しない方針だ。
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2020年08月07日
TPP拡大を確認 委員会が声明 SG議論踏み込まず
TPP拡大を確認 環太平洋連携協定(TPP)加盟国は6日、協定の最高意思決定機関「TPP委員会」を開いた。加盟国の拡大、新型コロナ禍での世界経済再生に向けた加盟国の連携を訴える声明を採択した。一方、タイなどの新規加盟や、日米貿易協定と併存する牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置)については踏み込んだ議論はなかったとみられる。来年は日本が議長国となる。
委員会は3回目。メキシコが議長国を務め、西村康稔経済再生担当相ら11カ国の閣僚らが出席。新型コロナを踏まえ、テレビ会議方式で開いた。
新規加盟を巡っては、タイや英国が強い意欲を示している。タイは当初、今回の委員会での加盟交渉入りを目指し、日本政府も全面的に後押しする姿勢を示していた。だが、政権内の対立などで国内調整が進まず、加盟申請を見送った。
英国は欧州連合(EU)離脱を踏まえてEUや日本、米国などとの貿易交渉の最中。TPP加盟の具体化は来年以降になる見通しだ。
来年、日本は議長国
SGについて、日本政府は2023年度から、TPP国と米国からの輸入量の合計でTPPのSGが発動する仕組みへの移行を目指す。TPP国との調整は、日米協定発効後の状況を見ながら判断する姿勢。西村担当相は、会見で「以前からその旨を伝えており、今日もその旨を発言した」と述べるにとどめた。
声明では、新型コロナで悪化した世界経済の回復に向け、TPPを軸にした物品のサプライチェーン(供給網)の維持・拡大、デジタル化のルール作りが必要だと指摘。デジタル化推進へ、TPPに専門機関を設けるための検討を進める。
来年は日本が議長国を務める。新規加盟などの動きがどう具体化するかが焦点となる。
西村氏は「メリットを強調しながら、将来のTPP拡大に向けて取り組んでいきたい」と述べた。
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2020年08月07日
茂木外相 5日から訪英 貿易交渉詰めの協議
茂木敏充外相は4日の閣議後会見で、5日から英国を訪問すると発表した。日英貿易協定交渉を巡り、6日からトラス国際貿易相と大筋合意に向けた詰めの協議を行う。農業分野では、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で既に設けている乳製品などの英国枠は認めない方針だ。
茂木外相は会見で「かなり長時間の交渉になると思うが、妥結点を見つけ、合意に達したい」と強調した。
EUを離脱した英国と日本の間で、日欧EPAの税率が適用される「移行期間」は12月末まで。このため、日英両政府は年明けの新協定発効を目指しているが、日本は臨時国会での承認が必要になる。
交渉は、日本産の自動車・同部品の関税撤廃時期や原産地規則などが焦点だ。農産物では、日欧EPAでも設けた牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の発動基準数量などが論点となる。
交渉は6月、閣僚級のテレビ会議で開始。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、首席交渉官会合など事務レベル協議も対面を避けて交渉してきた。
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2020年08月05日
貿易交渉報道2020年8月アクセスランキング
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米国が生ジャガ解禁要請 検疫協議へ 国内産地は反発
米国政府が日本に対し、生食用ジャガイモの輸入を解禁するよう要請し、今後協議に入ることが分かった。日本はジャガイモシストセンチュウ、ジャガイモシロシストセンチュウの侵入を防ぐため、米国を含め各国からの生食用の輸入を認めていない。病害虫侵入に加えて、ジャガイモ生産量が世界屈指の米国が国内シェアを奪う恐れもあり、国内産地からは「輸入解禁は断じて認められない」との声が上がる。
農水省の公表資料によると、米国政府は3月31日、日本に対し輸入解禁を要請。植物検疫の対象となる病害虫を定め、それに応じた検疫措置を協議することになる。協議の進捗(しんちょく)は、ジェトロ(日本貿易振興機構)発行の「通商弘報」で公表する。
両害虫はジャガイモなどに寄生し、枯死被害を引き起こす。シストセンチュウは現在、4道県の71市町村で発生が確認されている。同省はまん延防止に向けて、発生農地で使用した農機の洗浄などを推進している。
シロシストセンチュウは北海道の3市町で発生中。同省は2016年以降、土壌消毒などによる緊急防除を講じてきたが根絶できていない。
米国でも両害虫は発生しており、生食用の輸入が解禁されれば国内産地は両害虫の被害がさらに広がるリスクを抱え込む。その上、米国産との競合を強いられることになる。国連食糧農業機関(FAO)によると、米国のジャガイモ生産量(18年)は世界第5位で、2000万トンに上る。
主産地のJA北海道中央会は、輸入解禁について「海外からの病害虫流入のリスクを高め、国内生産基盤の毀損(きそん)につながる恐れがあり、断じて容認できない」と反対している。
米国産の加工用ジャガイモは、加工場までの輸送過程を完全に密閉することなどを条件に輸入を認めている。米国政府の要請を受け、2月に植物防疫法の細則を改定し、2~7月の輸入期間を撤廃。制度上、8月以降も輸入が可能になった。ただ、関係者によると加工用は輸入品の方が割高になるという。
加工用ジャガイモの輸入期間の延長は、米通商代表部(USTR)が外国貿易障壁報告書で要求していた。
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2020年08月22日
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日英チーズで攻防 貿易交渉 日本、輸入枠認めず
日英貿易協定交渉で、英国側がチーズでの優遇措置に関心を持っていることが分かった。日本が欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で設けたチーズの輸入枠が消化しきれていないことに着目し、余剰分を英国に回すことなどを求めているとみられる。日本は、英国向けの輸入枠は新設しない方針。両国間で調整が続いているという。
英国は、ブルーチーズの「スティルトン」が有名。しかし財務省の貿易統計によると、2019年度の英国からのブルーチーズの輸入量は約27トンにとどまる。
日欧EPAでは、ブルーチーズを含むソフト系チーズに最大3万1000トンの輸入枠を設定した。枠内の関税は段階的に引き下げ、16年目には撤廃する。
19年度の輸入枠は、英国分を含む上限2万600トン。これに対し、消化率は58%だったため、英国側は日本に受け入れの余地があるとみていると思われる。だが、仮に日本が英国に優遇措置を取れば、日米貿易協定など他の協定に影響する可能性もある。
英紙フィナンシャルタイムズ電子版は10日、日英交渉がチーズを巡って難航していると報道。英国側には、日英協定が日欧EPAを上回る内容になったと示すため、チーズでの優遇措置の獲得を象徴にしたい期待があるなどと報じている。
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2020年08月12日
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日英貿易協定のブルーチーズ EPA枠内で低関税に
政府は、英国との貿易協定交渉で焦点になっているブルーチーズについて、欧州連合(EU)産の輸入枠が余った分に限り、英国産にも低関税を適用する方向で最終調整に入った。茂木敏充外相とトラス英国際貿易相が28日にもテレビ会議で詰めの協議に臨み、大筋合意を目指す。
2019年2月に発効した日欧経済連携協定(EPA)では、ブルーチーズなどソフト系チーズに最大3万1000トンの輸入枠を設け、枠内税率を段階的に削減、撤廃する。19年度の輸入枠は2万600トンで、利用率は58%だった。
交渉で英国は、「スティルトン」に代表されるブルーチーズなどの関税優遇を要求。EU産の輸入枠が余った分を英国分に振り向けるよう求めていたもようだ。
輸入業者が英国産チーズを通常の関税率(29・8%)で輸入し、EU枠に余りがあれば、枠内関税率(ブルーチーズは現行24・2%)との差額を還付する仕組みを軸に調整する。余らなければ低関税での輸入は認めない方向だ。EU枠の利用率は毎年、年末ごろに明らかになる。
日本側はチーズなどの英国枠新設を認めない方針で交渉してきた。一連の調整で、当初からの交渉方針を堅持し、市場開放の水準を日欧EPAの枠内で収めることができたと判断したとみられる。英国産ブルーチーズの19年度の輸入量は約27トンにとどまっている。
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2020年08月27日
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タイTPP加盟見送り あす会合 SG議論は不透明
環太平洋連携協定(TPP)加盟国は6日、協定の最高意思決定機関のTPP委員会を開く。新規加盟に意欲を示していたタイは、国内の政治混乱から今回の加盟申請は見送る。新型コロナウイルスを踏まえた加盟国間の連携を確認する見通しだが、日米貿易協定と併存する牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の扱いを含め個別の踏み込んだ議論は行われないとみられる。
委員会は3回目。新型コロナを踏まえ、テレビ会議方式で開く。議長国のメキシコの時間で5日の開催となる。日本からは西村康稔経済再生担当相が出席する。
加盟国は新型コロナが広がる中での自由貿易やサプライチェーン(供給網)の維持の重要性、デジタル化推進に向けた連携を確認する見通し。
同委員会は、新規加盟交渉入りの是非を決める場でもある。タイは当初、今回の委員会での加盟申請、交渉入りを目指していた。日本政府も自動車・同部品のサプライチェーンの拡大をにらみ、後押ししていた。
一方、タイの政権内の権力闘争が激化し、TPPを巡る賛否も二分。加盟への動きを主導してきたソムキット副首相らが辞任するなど、国内政治が混迷している。
今回の同委員会は、日米貿易協定の発効後初。併存する牛肉SGを巡り、政府はTPP国との協議後、2023年度からTPP国と米国の輸入量の合計でTPPのSGが発動する仕組みへの移行を目指している。
一方、日米協定のSG発動基準が過去2年の輸入実績よりも低く設定されていることを踏まえ、「両協定の輸入量の実態を見る必要があり、閣僚間で協議を具体化させる段階ではない」(政府関係者)との見方がある。
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2020年08月05日
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TPP拡大を確認 委員会が声明 SG議論踏み込まず
TPP拡大を確認 環太平洋連携協定(TPP)加盟国は6日、協定の最高意思決定機関「TPP委員会」を開いた。加盟国の拡大、新型コロナ禍での世界経済再生に向けた加盟国の連携を訴える声明を採択した。一方、タイなどの新規加盟や、日米貿易協定と併存する牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置)については踏み込んだ議論はなかったとみられる。来年は日本が議長国となる。
委員会は3回目。メキシコが議長国を務め、西村康稔経済再生担当相ら11カ国の閣僚らが出席。新型コロナを踏まえ、テレビ会議方式で開いた。
新規加盟を巡っては、タイや英国が強い意欲を示している。タイは当初、今回の委員会での加盟交渉入りを目指し、日本政府も全面的に後押しする姿勢を示していた。だが、政権内の対立などで国内調整が進まず、加盟申請を見送った。
英国は欧州連合(EU)離脱を踏まえてEUや日本、米国などとの貿易交渉の最中。TPP加盟の具体化は来年以降になる見通しだ。
来年、日本は議長国
SGについて、日本政府は2023年度から、TPP国と米国からの輸入量の合計でTPPのSGが発動する仕組みへの移行を目指す。TPP国との調整は、日米協定発効後の状況を見ながら判断する姿勢。西村担当相は、会見で「以前からその旨を伝えており、今日もその旨を発言した」と述べるにとどめた。
声明では、新型コロナで悪化した世界経済の回復に向け、TPPを軸にした物品のサプライチェーン(供給網)の維持・拡大、デジタル化のルール作りが必要だと指摘。デジタル化推進へ、TPPに専門機関を設けるための検討を進める。
来年は日本が議長国を務める。新規加盟などの動きがどう具体化するかが焦点となる。
西村氏は「メリットを強調しながら、将来のTPP拡大に向けて取り組んでいきたい」と述べた。
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2020年08月07日
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米大統領選 陣営対決が佳境 農業・貿易が焦点
米国大統領選は、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が対決する構図が決まり、11月の投開票日に向けて今後、両陣営の対決は佳境に入る。中国との貿易戦争や新型コロナウイルス禍の影響で、農家の不満も多いとみられ、共和党が強い農業州すらトランプ氏にとって盤石とは言えない。今後の激戦州のてこ入れに向けて、農業や貿易政策に両陣営がどこまで踏み込んでくるかが焦点になりそうだ。
トランプ氏 支持層てこ入れも
大統領選は、全米50州と首都ワシントンに割り当てられた選挙人計538人のうち、過半数(270人)を獲得した候補が当選する。基本的に各州の選挙人は勝者が総取りするため、州別の勝敗が鍵になる。
トランプ氏とバイデン氏は両党の党大会で正式に大統領候補に指名された。
トランプ氏は前回2016年の選挙で、環太平洋連携協定(TPP)離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)見直しなど貿易政策の転換を強く訴えた。今回の選挙戦では、こうした公約が実現したこともあってか、貿易政策への言及は中国に対するものが多い。
ただ、新型コロナ禍による死者数の増加や経済の低迷で、今回はトランプ氏の苦戦が伝わる。こうした中、元々支持層が多い農業地帯の票固めを重視するとみられるが盤石な支持基盤を形成できていない。
例えば、牛肉生産の一大産地で、過去の選挙では共和党が票田として連勝してきたテキサス州は、現時点では支持の拮抗(きっこう)を示す世論調査も多い。中国との関税引き上げ合戦や新型コロナの影響で輸出が振るわないなどの不満が背景にあるとみられる。
前回の選挙では、製造業が衰退したラストベルト(さびた工業地帯)ををはじめ、中西部の激戦州で相次いで勝利したことが、トランプ氏の大きな勝因となっていた。このうちウィスコンシン、ペンシルベニアなどは酪農も盛ん。7月には共和、民主両党の地元議員が連名で、日米貿易協定の追加交渉を求める書簡をまとめるなど、市場開放への期待もくすぶっている。
バイデン氏 TPP言及に注目
対するバイデン氏は、TPPを巡る発言が注目だ。TPPを合意に導いたオバマ前大統領を副大統領として支えた。ただ、これまでTPPへの言及はほとんどなく、事実上の公約となる民主党の綱領への記載を避けた。
日本の外交筋は「TPPは民主党内でも反対派が多く、大統領選で強くPRすることはないのではないか」と指摘している。
ただオバマ政権にとってTPPは、中国に対抗するアジアの秩序づくりにつなげる戦略でもあった。バイデン氏は昨年、討論会で「元の協定のままでは参加しない」とTPP再交渉を掲げる場面もあった。
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2020年08月30日
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日英貿易交渉大詰め 合意めざし閣僚協議へ
日英の貿易協定交渉が大詰めを迎えている。茂木敏充外相は8月上旬に英国を訪れ、トラス国際貿易相と閣僚協議をする方向で調整。日本から輸出する自動車・同部品の関税分野などで詰めの協議を進め、合意を目指す。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が土台になるが、農産品で焦点となる乳製品などの輸入枠は新設しない方針だ。
英国は1月31日にEUを離脱。日本との間で日欧EPAの税率が適用される「移行期間」は12月末までのため、日英は新協定を年明けまでに発効させる方針。日本は秋の臨時国会の協定承認が必要で、法的審査、両国の署名などの手続きを考えると、早期合意が必要になる。
日欧EPAではソフトチーズなどの品目で輸入枠を設定した。茂木外相ら日本政府は、こうした品目で枠の新設を認めない方針。EUを離脱した英国向けに枠を新設すれば、日欧EPAで約束した市場開放を上回る恐れがあるからだ。
英国に枠の新設を認めてしまうと、日米間の新たな火種となる可能性もある。日米貿易協定では、環太平洋連携協定(TPP)で加盟国全体向けの「ワイド枠」を設けた品目は米国枠の新設を回避した。米国との間で、輸入枠新設が議題になるのを避けるため、日英協定でも輸入枠は新設しない考えだ。
日欧EPAでは、牛肉などにセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)を設定している。日米協定では、牛肉などのSG発動基準数量をTPPとどう調整するかも焦点だった。EU産の牛肉輸入量は、発動基準からは遠いものの、英国産のSGと併存することになるため、両政府はSGの調整を巡っても詰めの協議を進めているとみられる。
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2020年08月03日
8
自民 経済協定で会合 日英交渉で念押し 農産物は「日欧範囲内」
自民党は11日、TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(本部長=森山裕国対委員長)の会合を開き、英国との貿易協定交渉について政府から聴取した。会合に出席した茂木敏充外相は、8月中の大筋合意へ、主要論点は一致したと強調。輸入などの技術的な調整などが残っていると説明した。党幹部ら議員からは、農産物について、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)で約束した範囲を超えないよう、改めて念押しする声が相次いだ。
茂木外相から聴取
日英貿易協定交渉を巡っては、茂木敏充外相が5日から英国を訪れ、6、7の両日にトラス英国際貿易相と協議。8月中の大筋合意、来年1月1日の協定発効で一致した。
茂木外相は、この日の対策本部の会合で「大半の分野で実質的に合意した」と説明。大筋合意へ「あとは細かい詰めの作業。技術的にどうお互いの立場を両立させるか」が焦点になるとの認識を示した。
同本部などは6月、日英交渉が始まるのを前に、茂木外相に対して、輸入枠数量が「EUと英国を合わせても日欧EPAを超えない」ことをはじめ、過去のEPAを超えないことなどを求めていた。
森山本部長は「環太平洋連携協定(TPP)を離脱した米国には、TPPワイドの関税割当枠(輸入枠)を一切与えなかった」と指摘。今後交渉を控える日米貿易協定への悪影響にもならないよう、申し入れを守ることが必要との認識を改めて示した。
会合は同党の議員連盟である「TPP交渉における国益を守り抜く会」(会長=小野寺五典元防衛相)との合同で行われ、冒頭以外は非公開で開いた。
小野寺会長は会合後、政府側の説明を巡り記者団に「最終的に日・EU(EPA)の枠を超えない対応をしてもらえると確信している」と述べた。
この日の会合では、6日にテレビ会議形式で行われたTPP委員会についても政府から説明を受けた。
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2020年08月12日

9
茂木外相 5日から訪英 貿易交渉詰めの協議
茂木敏充外相は4日の閣議後会見で、5日から英国を訪問すると発表した。日英貿易協定交渉を巡り、6日からトラス国際貿易相と大筋合意に向けた詰めの協議を行う。農業分野では、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で既に設けている乳製品などの英国枠は認めない方針だ。
茂木外相は会見で「かなり長時間の交渉になると思うが、妥結点を見つけ、合意に達したい」と強調した。
EUを離脱した英国と日本の間で、日欧EPAの税率が適用される「移行期間」は12月末まで。このため、日英両政府は年明けの新協定発効を目指しているが、日本は臨時国会での承認が必要になる。
交渉は、日本産の自動車・同部品の関税撤廃時期や原産地規則などが焦点だ。農産物では、日欧EPAでも設けた牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の発動基準数量などが論点となる。
交渉は6月、閣僚級のテレビ会議で開始。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、首席交渉官会合など事務レベル協議も対面を避けて交渉してきた。
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2020年08月05日
10
日英協定の交渉大詰め 閣僚級協議を開始
日英両政府は6日、ロンドンで貿易協定交渉の閣僚級協議を始めた。焦点となる自動車・同部品などの扱いで、茂木敏充外相とトラス国際貿易相が詰めの協議に臨み、大筋合意を目指す。
対面での閣僚級協議は初めて。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、6月の交渉開始から閣僚級、事務レベルともに、テレビ会議などで協議してきた。
茂木外相は訪英を発表した4日の会見で「国益を懸けた難しい交渉を電話でやるのは無理だ」とし、対面で合意につなげたい考えを示した。
農産物では、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入枠を設けたチーズなどの扱いが焦点。日本は英国枠を新設しない方針だ。
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2020年08月07日