イネごま葉枯病 土づくり中心に軽減
2013年10月09日

ごま葉枯病の暗褐色楕円形病斑
特 徴
イネごま葉枯病は、苗や本田期の葉、穂に発生する糸状菌病害だ。全国で発生が見られるが、問題となる地域は限られている。
本田発病が主体で、葉では暗褐色楕円(だえん)形斑点ができる。穂では穂軸や枝梗(しこう)などが、あめ色に変色する穂枯れ症状となり、最大で20%程度減収する。伝染源は保菌種子や前年の被害稲わら。夏期の高温は病原菌の増殖や稲体の消耗による抵抗力低下を促進して発病を助長する。
窒素やカリ、鉄、マンガン、ケイ酸などの欠乏により発病が増える。特に砂質浅耕土などの「秋落ち水田」では、これらの土壌養分が流亡しやすく、鉄不足により硫化水素の害が軽減されないため、養分吸収が妨げられる。
防 除
土壌条件や栽培管理と発病が密接に関連するため、土づくりを中心とした耕種的防除が重要となる。客土、堆肥施用などで土壌の保肥力を高め、土壌診断に基づいて鉄などの欠乏養分を補給する。また、深耕を進め、適切な中干しや水管理で硫化水素の発生を抑え、根の活力を維持する。常発地では耕種的防除と薬剤防除により被害を抑制する。
(新潟県農林水産部経営普及課農業革新支援担当・堀武志)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/9
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ピーマン平年並みに ジャガイモは物流回復
ピーマンの相場が反発している。日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は、平年の3割安だった年末から、平年並みにまで回復。前進出荷の反動と直近の寒さで、入荷が不安定となっている。一方、品薄高だったジャガイモは大雪で停滞していた物流が復旧し、相場は落ち着く見通しだ。
ピーマンは、年内の前進出荷が顕著だった。12月の大手7卸販売量は1364トンと、平年(過去5年平均)比13%増。中旬に限れば同30%増だった。潤沢な出回りを受け、年末は平年の3割安に低迷していた。
年が明け、相場は急上昇した。1月中旬(18日まで)の日農平均価格は1キロ531円と、同7%安。先週末には平年並みにまで戻した。卸売会社は「年内は相場が安いまま終了した。値頃感があり年明けから引き合いがある中、出回りが減って反発した」とみる。
JA宮崎経済連は「着果負担による花落ちがあり、出荷ペースは減る。ただ、天候は良好で実付きは十分。2月にかけて回復する」と話す。JA高知県も「この時期は元々出荷が減るが、例年よりも1割ほど少ない」という。卸売会社は「短期間で上がりすぎ、小売りの注文控えもみられる。ただ、西南暖地産の出回りが回復する1月末までは、強含みで推移する」と見通す。
ジャガイモは、寒波による大雪で鉄道の運行が止まっていた北海道で、15日以降運行が再開し、入荷が回復してきた。東京都中央卸売市場9市場では、18日の入荷量は635トンと、同じく休市明けの12日から30%増。中旬の日農平均価格は177円と平年比59%高だが、18日は下げに転じた。卸売会社は「凍害も見られず、品質は良好。関西以西の市場はまだ不足感が強いが、高値反動も相まって徐々に相場は落ち着く」とみる。
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2021年01月19日

金原亭世之介さん(落語家) おいしい野菜こそが大切
6、7年ほど前に「原田氏病」という免疫の病気にかかりました。100万人に数人という割合の珍しい病気です。
まず視力がほとんどゼロになり、次いで聴力も落ちてきました。そこで、ステロイドを体に限界まで入れるという療法を取ったのです。病状は少しずつ良くなったのですが、副作用がひどくて。
突然の難病発症
私はもともと糖尿病の予備軍だったのですが、そんな体でステロイド療法をやったせいで完全な糖尿病に。インスリン注射を打ち続けないといけない生活になったんです。どうにかならないかと医者に相談しても、無理だとしか言われませんでした。
そこで自分なりに勉強して、どうやら野菜がいいらしいと分かりました。もともと野菜は大好きだったので、大量に食べるようにしたんです。まるで芋虫になったみたいに。
野菜は食事の最初に食べるのがいいというので、まずはカレーライスの皿に山盛りにしたサラダを食べるようにしました。夏なら大量のレタスがメイン。春や秋には代わりにキャベツを。レタスとキャベツを中心にして、キュウリ、ブロッコリー、カリフラワーなどをしっかり食べる習慣をつけました。海藻類もいいそうなので、ノリで野菜を巻いて食べるんです。
大盛りサラダを平らげてから、肉や魚を食べて、ご飯をちょっといただくんですが、その時にもインゲンのおひたしや、マイタケを食べるようにしました。
調子が良くなってきたんですが、今度は心臓に問題が起きて。発作で倒れてしまい、救急車で運ばれたんです。
心臓に良いものを食べないといけない。調べたら、梅干しが良いという。塩分が強いので良くないイメージがあったんですが、精製食塩は悪いが、昔ながらの海水を天日干しする製法の塩なら体に悪くないという。そういう塩を使った梅干しを食べてみたら、これがおいしいんですね。酸味とうま味を感じたんです。
同時に、塩自体のおいしさにも気づかされました。例えば宮古島産の雪塩。雪のように細やかな塩で、なめてもうまいんですよ。
それまでサラダにはドレッシングを掛けていましたが、梅干しをつぶしてエゴマ油であえて、掛けるようにしました。
そのような食生活を続けたところ、一時は500もあった血糖値が120くらいまで下がったんです。医者から、インスリン注射を打つと危険だから錠剤に切り替えるように指示されました。今では錠剤を飲む必要もなくなったほどです。
医者も驚く全快
私は全て野菜のおかげだと思っています。医者には「特異体質なんでしょう。まれな例なので、他の人には勧めないでください」とくぎを刺されましたが。
このような食事を続けましたら、舌が敏感になってきました。濃い味つけから、薄い味付けに変わり、食材の味そのものを楽しめるようになったんです。
同じスーパーで買っても、レタスがおいしい時とそうでない時がある。それが分かってきました。私はかみさんと一緒にスーパーに買いに行くんですけど、やがてどういうレタスがおいしいか、どういうキャベツがおいしいかも分かるようになってきて、きちんと見て判断して買っています。
病気のおかげという言い方はなんですが、今は質の良い野菜をおいしく食べられて幸せです。(聞き手=菊地武顕)
きんげんてい・よのすけ 1957年東京都生まれ。76年、金原亭馬生に入門。80年に二つ目昇進。「笑ってる場合ですよ」などのバラエティー番組で女優・宮崎美子の顔面模写をして人気を博す。90年、NHK新人演芸大賞受賞。92年に真打昇進。●角子(さいかち)の俳号を持つ俳人であり、大正大学客員教授も務める。
編注=●は白の下に七
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2021年01月16日
大雪で物流停滞 ジャガイモ6割高に 貨物列車運休
強い寒波による大雪で物流が乱れ、ジャガイモの供給が全国的に不足している。主産地の北海道産が、積雪の影響で鉄道の運行が止まり、道内に荷物が滞留。本格的な運行再開は週末にずれ込む見込みだ。緊急事態宣言を受けて小売りの仕入れが増える中、需給が逼迫(ひっぱく)し、相場は急騰している。
北海道産のジャガイモやタマネギの輸送は、鉄道が約7割を占める。大雪で7日以降、輸送を担うJR貨物は、道内と本州を結ぶ路線の運行が停止。同社北海道支社によると、全面的な運行再開は、15日になる見通しだ。
同社によると「積雪の影響で1週間以上も運行が止まるのは近年ない」異例の状況。低温のコンテナ内で滞留するとジャガイモやタマネギは凍結する恐れがあり、発送した荷物を産地の倉庫に戻す動きもある。ホクレンが輸送で扱う農産物は、12日時点で3000コンテナ(1コンテナ約5トン)滞留しているとみられ、影響が懸念される。
物流の乱れを受け、産地も対策を講じている。道内のJAは、鉄道からフェリー輸送への切り替えを実施。ただ、「フェリーも先週は一時止まっていたし、港まで運ぶトラックの手配も十分ではない。荷物を出しきれず、選別・出荷作業を止めざるを得ない」という。
品薄の影響は、相場に表れてきた。13日の日農平均価格(各地区大手5卸のデータを集計)はジャガイモが1キロ173円と、過去5年平均比の57%高に高騰。卸売会社は「玉付きが少なく不足感がある中で物流も停滞し、逼迫の度合いは増した。日頃取引のないスーパーからも注文が入るほど小売りは荷動きが良く、当面は相場の反発が続く」とみる。タマネギは同11%安の76円だが、今後上昇が見込まれる。
果実は、寒波による供給の影響は限定的だ。青森のJAつがる弘前は、リンゴの出荷先の1割強を占める北海道と九州向けを貨物利用しているが、トラック輸送に切り替えて対応している。
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2021年01月14日
農畜産物トレンド 変化に対応 業界連携で
日本農業新聞の2021年「農畜産物トレンド調査」がまとまった。販売キーワードの1位は「コロナ対応」。新型コロナウイルス感染の終息が見通せない中で、国産回帰の潮流が確認された。難局を乗り切るには産地だけでなく、川中、川下との連携が重要だ。関係業界が一丸で消費動向の変化に対応すべきだ。
トレンド調査は、米、野菜、果実、食肉、牛乳・乳製品、花きの6部門で実施した。全国のスーパー、生協、外食、卸売業者などの販売担当者を対象とし、140社から回答を得た。毎年行い、今年で14回目。
今回の特徴は、コロナ関連のキーワードに注目が集まった点だ。「ネット取引・宅配」やコロナ不況を受け「値ごろ感(節約志向)」が上位にランクインした。「ネット取引・宅配」はこれまでも関心項目だったが、外出自粛や人との接触を控えたい消費動向の強まりで、コロナ下での販売手法として欠かせないものになっている。
部門別に見ると、トレンドのキーワードは多彩だ。野菜は「栄養価」。健康志向を受け、栄養価が高いとして知られるブロッコリーやニンジンといった品目に注目が集まった。野菜はそれぞれの品目で特徴的な機能性がある。研究機関などと連携し、販売戦略に生かしたい。
果実は「ギフト需要」と「地域性」。専門家は「果実は県独自ブランドが豊富で地域性を打ち出しやすい。特色ある果実で旅行気分を味わってもらうなど、付加価値型で地域の魅力を丸ごと売り込む視点が重要」と指摘する。
需給緩和が懸念される米は、パックご飯とインターネット販売が、消費拡大の手法として注目度が高い。米は炊飯や持ち帰りの負担といった課題がある。簡便性に対応した商品づくりが重要だ。食肉は、節約志向を受けて値ごろ感が求められる。牛乳・乳製品は家庭用が堅調で、大容量に勝機がある。花きは業務需要が伸び悩む中、業務用と家庭用の両方の用途に使える商材に注目が集まる。
農畜産物の一つの品目で、さまざまなキーワードを全て満たすのは難しい。産地は自らの農畜産物の特徴をつかみ、どのキーワードで産地づくりに取り組むか考える必要がある。例えば野菜。「ネット取引・宅配」ならばeコマース(電子商取引)に産地が挑戦したり、宅配業者との連携を強化したりすることなどが想定される。「健康(機能性)」なら機能性成分の高い品種の産地化や機能性表示制度を活用した販売もよい。「値ごろ感(節約志向)」に対応し、多収や低コストの産地づくりを目指すのも選択肢となる。
販売キーワードの「国産志向」(14%)「地産地消」(10%)「産地との直接取引」(8%)からは、国産を見直す動きが読み取れる。コロナ終息後も見据えて産地は、取引先などと連携して消費者や実需者のニーズに対応する体制を構築しよう。
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2021年01月15日

[あんぐる] 売り切れ御免秘伝の甘味 日本最北限のサトウキビ畑と「よこすかしろ」(静岡県掛川市)
日本最北限のサトウキビ栽培地とされる静岡県掛川市南部(旧大須賀町横須賀)で、地砂糖「よこすかしろ(横須賀白)」の製糖が続いている。11月下旬から2月までしか作られない希少品で、起源は江戸時代にさかのぼる。戦後になって衰退するが、「伝統産業をもう一度」と願う有志らが1989年に復活させ、今では毎年20トンの製造が見込めるようになった。
風力発電施設を臨む畑で刈り取られるサトウキビ。風が強い一帯で2メートルほどにまで育つため、農地の防風にも利用されていたという
よこすかしろは、高級砂糖「和三盆」の原料にもなる白下糖(しろしたとう)。横須賀藩の武士が18世紀末に身分を隠して四国へ渡り、秘伝とされていた製糖技術を習得するとともに、サトウキビの苗を持ち帰って広めたと伝えられる。以来、産業として地元に根差すが、1950年代半ばになると、安価な輸入砂糖に押され、庭先に残されたわずかなサトウキビが、各家庭で消費されるほどになってしまった。
有志たちはまず、地域に残ったわずかなサトウキビから苗を育てて7アールの畑に作付けし、辛うじて製法を知る高齢者から技術を学んだ。年々耕作地を拡張し、今では作付けを40アールにまで広げ、2013年には製法を伝承するための「よこすかしろ保存会」を発足させた。19年からは大須賀物産センター「サンサンファーム」の一角で製糖を続ける。
200グラム800円。サトウキビから取れる砂糖は約8%のため、10キロから800グラム程度しか取れない。しかも、よこすかしろの製糖は全て手作業のため、1回4時間をかけて作れるのは25キロ未満。だが、保存会の松本幹次さん(68)は「収益性を上げるより、地域の文化を後世に残すことこそが目的」と話す。
コーヒーや紅茶に入れても、煮物や菓子に使っても上質な甘さが好評だが、そのまま口に入れるのが一番のお勧め。試食すると、甘さの中にほんのりとした塩味や独特の風味が感じられ、素材の味が広がる。よこすかしろと、それを使った製品は「売り切れ御免」。サンサンファームの他、市内の道の駅や老舗菓子店でも販売される。(仙波理)
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2021年01月18日
病害虫図鑑の新着記事

ホウレンソウ萎凋病 連作避けて土壌消毒
特 徴
ホウレンソウ萎凋(いちょう)病は、フザリウム・オキシスポラム分化型スピナシアエという糸状菌によって引き起こされる土壌伝染性の病害だ。病原菌はホウレンソウに強い病原性を示し、根から感染する。
病害はホウレンソウの生育初期から収穫期まで生育期全般で発生するが、高温時に発生しやすいため、一般に夏から初秋に被害が多く、低温期には少ない。感染すると下葉から黄化してしおれ、生育不良となり最終的には枯死する。しおれた株の根の先端部分や側根の付け根部分は、黒褐色に変色する。
防 除
耐病性品種の作付けを基本とするが、土壌中の病原菌密度が高い土壌では、耐病性品種であっても発病するので注意する。
連作で被害が大きくなる。雨よけ栽培など連作が前提の場合は、クロルピクリン薫蒸剤、土壌還元消毒、太陽熱消毒等による土壌消毒を実施する。収穫後の残根は次作の伝染源になるので、持ち出して処分する。
シロザやアカザなどの雑草は、病原菌を保菌している場合があるので、圃場周辺の除草に努める。本病は酸性土壌で発生しやすいので、土壌の水素イオン指数(ph)をホウレンソウ栽培に最適な6.5~7.0程度に矯正する。
(岩手県農業研究センター環境部病理昆虫研究室主任専門研究員・岩舘康哉)
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・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/30
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2013年10月30日

チャノホコリダニ 除草に努め早期発見
特 徴
チャノホコリダニの成虫の体長は雄で0.2ミリ内外、雌で0.25ミリ内外、体色は淡黄緑色である。日本全国に分布し、ナスやピーマン類の他、多くの野菜類、花き類などで発生が見られる。
発育は非常に早く、25~30度では卵から成虫になるまでの所要日数は5~7日、1雌当たりの産卵数は50個程度だ。露地栽培では8、9月に多いが、施設栽培では周年発生し、被害発生も露地栽培に比べて多い。成虫は新芽の伸長とともに、生長点や若葉に移動し、葉では裏面に多く寄生する。
ナスでは、寄生を受けると、葉は奇形となり、葉縁が裏側に巻き込み、葉裏は淡褐色に変色し、生長点は心止まり症状となる。果実では加害部がさめ肌状を呈し、灰褐色に変色する。
ピーマン類では、発生初期には展開直後の葉の周辺部がやや裏側に湾曲する症状を呈し、密度が高まると生長点が縮れて新葉の展開が抑えられ、心止まり症状となる。また、幼果が寄生を受けると褐変コルク化し、生育は止まる。
防 除
野外ではスベリヒユ、クローバーなどの雑草が発生源の一つと考えられるので、圃場周辺の除草に努める。圃場内では、最初に一部の株で発生し、管理作業などで拡大していく場合が多い。被害が見られた株の周辺では、外見上健全であっても既に寄生されていると考えた方がよい。
多発後の対策では樹勢回復に時間がかかることから、早期発見に努め、少発生のうちに有効な薬剤で防除を徹底する。
(高知県農業技術センター生産環境課チーフ=昆虫担当・下元満喜)
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・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/16
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2013年10月16日

イネごま葉枯病 土づくり中心に軽減
特 徴
イネごま葉枯病は、苗や本田期の葉、穂に発生する糸状菌病害だ。全国で発生が見られるが、問題となる地域は限られている。
本田発病が主体で、葉では暗褐色楕円(だえん)形斑点ができる。穂では穂軸や枝梗(しこう)などが、あめ色に変色する穂枯れ症状となり、最大で20%程度減収する。伝染源は保菌種子や前年の被害稲わら。夏期の高温は病原菌の増殖や稲体の消耗による抵抗力低下を促進して発病を助長する。
窒素やカリ、鉄、マンガン、ケイ酸などの欠乏により発病が増える。特に砂質浅耕土などの「秋落ち水田」では、これらの土壌養分が流亡しやすく、鉄不足により硫化水素の害が軽減されないため、養分吸収が妨げられる。
防 除
土壌条件や栽培管理と発病が密接に関連するため、土づくりを中心とした耕種的防除が重要となる。客土、堆肥施用などで土壌の保肥力を高め、土壌診断に基づいて鉄などの欠乏養分を補給する。また、深耕を進め、適切な中干しや水管理で硫化水素の発生を抑え、根の活力を維持する。常発地では耕種的防除と薬剤防除により被害を抑制する。
(新潟県農林水産部経営普及課農業革新支援担当・堀武志)
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・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/9
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2013年10月09日

ハクサイダニ 連作避けて除草管理
特 徴
ハクサイダニは、露地ハクサイで被害が多く見られていたが、近年は福島県内ではビニールハウスのシュンギクに被害が見られている。本種はムギダニ同様、ミドリハシリダニ科のダニだ。
加害植物は小松菜、ハクサイ、水菜などのアブラナ科の他にシュンギク、ホウレンソウなどだ。加害された作物の葉は銀白色を呈する。幼苗期に多数の寄生があると枯死してしまうこともある。
発生回数は年1、2回といわれている。福島県での無加温ビニールハウスでの成虫発生は、1回目が11月中旬から12月、2回目は1月下旬以降だ。2回目の成虫が産んだ卵は休眠卵であり、休眠卵は土壌中で夏を越す、いわゆる夏休みをする。
防 除
防除時期は成虫が発生する12月以降と考えられる。これまでの試験結果では、合成ピレスロイド剤など数種の薬剤で効果が認められているが、適用のある登録農薬はない。
対策には、前年に多発した圃場で連作を避ける。周辺雑草にも寄生するため、これらが発生源とならないように除草管理を実施することが重要だ。
(福島県農業総合センター生産環境部専門研究員・荒川昭弘)
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・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/2
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2013年10月02日

トマト褐色根腐病 連作避け根残さ除去
特 徴
トマト褐色根腐病は、病原糸状菌ピレノケータ・リコペルシシによって引き起こされる難防除の土壌病害。トマトだけに発生し、全国で確認されている。
根が褐変し、細い根は腐敗消失して太い根だけとなる。太根の褐変部位は松の根状にコルク化して表面に多数の亀裂を生じる。地上部では着果負担が掛かり始める時期に、しおれや黄化を呈するようになるが、維管束褐変は認められない。本州では病勢が進むと激しい萎凋(いちょう)症状、中段果房の着果不良など大きな被害となる。北海道では枯死に至ることはまれだが、果実が小玉化するなど収量に影響し被害となる。
根部の発病は低温期に進行し、特に生育前半が低温で経過する作型で被害が大きい。
防 除
トマトの連作を回避する。病原菌は被害根残さなどと共に土壌中で生存するため、作付け終了後に根部残さを除去する。
薬剤による土壌消毒の他、土壌還元消毒や太陽熱消毒が有効だ。本病に耐病性を持つ台木品種を利用した接ぎ木栽培を実施する。
北海道では定植10日前までに、ふすまを10アール当たり500キロ、発生程度の低い圃場は250キロ施用することで、定植後2カ月間の発病軽減効果が認められている。ただし、栽培終了時までの発病抑制効果は期待できず、他病害虫への影響は不明。土壌還元消毒直後の栽培には不可だ。
(北海道立総合研究機構花・野菜技術センター生産環境グループ研究主査・西脇由恵)
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・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/9/18
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2013年09月18日

ダイコンアブラムシ 葉の脱色目印に防除
特 徴
アブラナ科の野菜を加害するカメムシ目アブラムシ科の害虫で、日本全国に分布する。ダイコンアブラムシという和名だが、ダイコンよりはむしろキャベツやナタネなどで多い。
春先に繁殖が著しくなり、4、5月ごろに密度が最も高まる。夏季は、キャベツの苗などにわずかに見られる程度で、発生は少ない。秋季にはダイコン、キャベツ、ハクサイなどに見られるようになる。
体は暗黄緑色~濃緑色で、体全体が白粉で覆われている。成虫(羽のない胎生雌)の体長は2.2~2.5ミリだ。キャベツでは葉裏に群生し、葉が黄変し、結球が遅れ、小さくなる。ナタネでは花穂に群生し、花柄や、さやを吸汁加害し、子実の収量が減少する。ダイコン、ハクサイでは葉が縮れる。
防 除
薬剤では、播種(はしゅ)時、定植時に施用する粒剤や、生育期の散布剤などがある。キャベツなどで本種のコロニーが大きくなると葉が端から大きく巻いてしまうため、散布薬剤が直接かからず、浸透移行性のない薬剤の場合、効果が出にくくなる。キャベツでは、コロニーの小さな時期から葉の脱色が生じるので、こうした株を見つけたら防除のタイミングだ。
一方、苗床などでの物理的防除法としては、0.6ミリ目合い以下の防虫ネットが有効だ。この目合いの防虫ネットは、本種の他にも、アブラナ科野菜に発生するニセダイコンアブラムシ、モモアカアブラムシ、コナガやキスジノミハムシなどの対策にもなる。
(農研機構・中央農業総合研究センター病害虫研究領域主任研究員・長坂幸吉)
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・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/9/11
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2013年09月11日

カキ炭そ病 病斑や徒長枝を除去
特 徴
カキ炭そ病はコレトトリカム・グロエオスポリオイデスと呼ばれるかびの一種によって引き起こされる病気だ。この病気は、枝、果実に黒色の病斑をつくる。特に果実に発生した場合は、外観が大きく損なわれるために商品価値が失われるとともに、早期落果を引き起こす。
病原菌は枝の病斑などで越冬し5月以降、胞子によって新梢(しんしょう)への感染が始まる。新梢には黒色の病斑ができ、病斑上に形成された胞子が再び分散し感染を広げる。新梢の病斑は枝が硬くなるに従って楕円(だえん)形、黒色でややくぼんだ、火であぶられたような外観になる。
果実に感染すると収穫期が近づくにつれ、黒色、大型でややへこんだ病斑ができる。胞子は雨とともに分散するので、梅雨や秋の長雨、台風によって発生が助長される。
防 除
新梢にできた病斑が当年の果実に対する伝染源となるため、枝の管理に注意する。すなわち、徒長枝に病斑を見つけた場合にはすぐに除去するとともに、余分な徒長枝は感染を防ぐ目的で随時切除する。剪定(せんてい)時にも注意深く観察し枝にできた病斑の除去に努める。
薬剤は、ジチアノン剤、マンゼブ剤、有機銅剤、ストロビルリン剤、DMI剤など多くの殺菌剤が登録されている。薬剤散布は新梢が伸び始める5月中旬から開始する。果実に対しては8月下旬~9月が重点防除時期となる。
(農研機構・果樹研究所ブドウ・カキ研究領域上席研究員・須崎浩一)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/9/4
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2013年09月04日

マメハンミョウ 耕うん、寄主植物除く
特 徴
マメハンミョウはコウチュウ目ツチハンミョウ科で、本州以南、中国、台湾に分布する。
成虫は植食性で、大豆、クズなどのマメ科、ナス、トマト、イヌホオズキなどのナス科、その他多くの植物の葉や花を摂食する。幼虫は肉食性で、イナゴ、バッタ、ツチバチなどの卵を食し土中で越冬する。このため成虫は夏に水田畦畔(けいはん)や土手、道端のイヌホオズキや雑草に群がる。稲は加害しない。
成虫は年1回、7月後半から9月に出現。成虫は長さ11~19ミリ、幅3~5ミリ。体と脚は黒色、上翅(じょうし)には白い縦筋が入るが、不鮮明な個体もいる。頭部は赤色、複眼の内側と口器の周囲は黒色。触角は黒色で前脚の長さに匹敵し、雄はのこぎり歯状、雌は糸状。卵は楕円(だえん)形で大きさは長さ3ミリ、幅1ミリ、黄白で表面に光沢がある。5齢幼虫は擬蛹(ぎよう)状で6齢を経て蛹化し、さなぎは約15ミリ長、黄白色、複眼黒色。
成虫は日中活動し、午後盛んに活動する。羽化後4、5日で交尾し、土中に70~150卵粒の卵塊を産卵する。卵期は18~21日。成虫寿命は30~35日。暖冬少雨年に多発する。
防 除
防除幼虫が土中で越冬するので冬に数回耕うんし幼虫やさなぎを減らす。土手や畦畔、畑地などで寄主植物のイヌホオズキを見かけたら除去する。
成虫は大豆、小豆、エンドウマメ、インゲンマメ、サヤエンドウ、サヤインゲン、エダマメの葉を食害するので捕殺する。多発例は少ないが、多発時は登録剤のマラソン粉剤をスポット的に施用し防除する。
(東京農業大学客員教授・法政大学兼任講師・平井一男)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/8/28
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2013年08月28日

キュウリ疫病 土跳ねの防止が有効
特 徴
キュウリ疫病は、それほど発生は多くないが、水はけの悪い圃場で地上部の茎、葉、果実に発生する。いずれの部位でも水浸状の病斑が形成、拡大され、乾燥すると病斑部がくぼむ。茎では地際部に発生しやすく、乾燥するとくびれて褐変し、上部が萎凋(いちょう)・黄化する。高湿度条件が保たれると、病斑上に霜状の白色の菌叢(きんそう)を生じる。
病原菌は土壌中の植物残さなどで生存し、水により媒介され、高温多湿時に発生しやすい。病原菌種は2種報告されており、一種は多犯性で多くの作物を加害するが、もう一種はウリ科植物のみに感染する。灰色疫病も同類の病原菌によるものであり、発生の特徴も似ている。
防 除
高畝など耕作土壌の排水を良くすることが有効である。また、かん水、降雨などによる土壌の跳ね上がりを防ぐマルチ、敷きわらなども有効である。
水中を積極的に泳ぐ遊走子により伝染し、大雨で圃場がたん水した場合などには圃場全体に急速に拡がるため、予防に努める。発生が激しい場合には、クロルピクリンを用いた土壌消毒により病原菌密度を下げ、次作での発生を防ぐ。茎葉には、ジチアノン・銅水和剤とマンゼブ水和剤が散布できる。
(農研機構・野菜茶業研究所野菜生産技術研究領域主任研究員・窪田昌春)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/8/14
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2013年08月14日

コアオハナムグリ 発生把握して殺虫剤
特 徴
コアオハナムグリは、体長10~15ミリの小型のハナムグリだ。背面の体色は緑色で白い斑点がある。全国各地に広く分布して、さまざまな植物の花を訪れる。かんきつでも開花に合わせて飛来し、花を訪れた成虫が花粉や蜜を食べる際に、頭部を花の内部に潜り込ませ、脚で子房(果実になる部分)を傷つける。この時の傷が果実肥大後の果皮に線状の傷害痕として残り、外観上の被害となる。
中晩かん類で被害が発生しやすい。4月中・下旬に越冬後の成虫が出現して交尾産卵し、晩春から夏にかけて幼虫は土壌中の腐植を食べて成長し蛹化(ようか)する。8~10月には新成虫が羽化し、短い活動期間の後に越冬する。5月と9月に成虫の発生ピークが見られるが、前者は越冬成虫、後者は新成虫による。
防 除
成虫は、かんきつ園周囲の樹林地等から飛来するため、園内外の白い花を定期的に観察して発生状況を把握する。
防除では殺虫剤を散布する。少発生の時は温州ミカンでは開花初期に1回、中晩かんでは開花盛期に1回散布する。多発生の時は開花初期と盛期に2回散布する。かんきつの開花期にはミツバチも活動しているため、付近の養蜂に注意してミツバチに悪影響が生じないように配慮する。
(農研機構・果樹研究所カンキツ研究領域上席研究員・望月雅俊)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/8/7
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2013年08月07日