キュウリ疫病 土跳ねの防止が有効
2013年08月14日

キュウリに発生した疫病
特 徴
キュウリ疫病は、それほど発生は多くないが、水はけの悪い圃場で地上部の茎、葉、果実に発生する。いずれの部位でも水浸状の病斑が形成、拡大され、乾燥すると病斑部がくぼむ。茎では地際部に発生しやすく、乾燥するとくびれて褐変し、上部が萎凋(いちょう)・黄化する。高湿度条件が保たれると、病斑上に霜状の白色の菌叢(きんそう)を生じる。
病原菌は土壌中の植物残さなどで生存し、水により媒介され、高温多湿時に発生しやすい。病原菌種は2種報告されており、一種は多犯性で多くの作物を加害するが、もう一種はウリ科植物のみに感染する。灰色疫病も同類の病原菌によるものであり、発生の特徴も似ている。
防 除
高畝など耕作土壌の排水を良くすることが有効である。また、かん水、降雨などによる土壌の跳ね上がりを防ぐマルチ、敷きわらなども有効である。
水中を積極的に泳ぐ遊走子により伝染し、大雨で圃場がたん水した場合などには圃場全体に急速に拡がるため、予防に努める。発生が激しい場合には、クロルピクリンを用いた土壌消毒により病原菌密度を下げ、次作での発生を防ぐ。茎葉には、ジチアノン・銅水和剤とマンゼブ水和剤が散布できる。
(農研機構・野菜茶業研究所野菜生産技術研究領域主任研究員・窪田昌春)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/8/14
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ホクレンがJA宮崎経済連と連携して開発した冷凍食品が好評だ。北海道で製造していない宮崎産の冷凍野菜と組み合わせ、ラインナップの強化を図る。北海道、宮崎共に両産地の野菜を使った冷凍食品の販路拡大に力を入れたい考えだ。
ホクレンは、道内外の協力企業でミックスベジタブルやカットポテト、カボチャなど道産野菜を使った冷凍食品を製造し、販売する。……
2021年01月17日

メロン・大葉 相場低迷 再発令 時短営業響く
緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業や休業を受け、一部青果物の相場低迷が加速している。メロン「アールス」の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は平年の3割安を付け、前回発令された4月上旬と同水準に落ち込む。刺し身のつま物に欠かせない大葉も、業務需要が減って平年の3割安に低迷。小売りでの販売にも勢いがなく、相場を下支えできていない。
小売りも勢い欠く
メロン「アールス」は12月、「GoToキャンペーン」の活況により、上位等級を中心に引き合いが強まり、歳暮需要も加わり高値で推移。だが、年が明けて環境は一変した。中旬(19日まで)の日農平均価格は1キロ799円と平年の32%安で、同4割安を付けた日もある。東京都中央卸売市場大田市場では、初市以降、静岡産の高値が1キロ4320円と止め市の半値に急落し、一時は同3240円まで下げた。
卸売会社は「正月に百貨店や果実専門店に客足が向かず弱含みとなる中、再発令が重なった。ホテルやレストランが営業縮小し、売り先がない。低価格帯を中心にスーパーに売り込むが、上位等級と下位等級の価格差が縮まっていく」と厳しい展開を見通す。
加温にコストがかさむ厳寒期の軟調相場に、産地からは嘆息が漏れる。主産地の静岡県温室農業協同組合によると、交配から収穫までは、 50日程度。収穫時期をずらすことができず、供給の調整は難しい。「コストをかけ、丹精したものに値段が付かないのはつらい。スーパーなどへの販売を通し、家庭での消費拡大に期待したい」と話す。
小物商材も厳しい販売を強いられている。大葉は、1月中旬の日農平均価格が1キロ1690円。元々需要が減る時期ではあるものの、平年の28%安と低迷が顕著だ。
産地は前回の宣言時、巣ごもり需要で好調だったスーパーに販路を切り替えた。ただ、「今回はスーパーからの注文は勢いを欠き、相場を下支えし切れない」(卸売会社)情勢だ。
主産地を抱えるJAあいち経済連は「業務筋が大半を占める契約取引分の販路を新たに確保しないといけない」と説明。春の需要期の販売も見据え、コロナの早期収束を望んでいる。
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2021年01月20日

[未来人材] 26歳。大農家・父の背中追い若手6人で新会社設立 トマトの概念変える 滋賀県甲賀市 今井大智さん
滋賀県甲賀市の今井大智さん(26)は、同じ農業生産法人で働く20代の若者だけで会社を立ち上げ、先端技術を駆使した高糖度トマト栽培に取り組んでいる。“本業”の傍ら、早朝や夜などの勤務時間外を使って、仲間とトマト栽培に明け暮れる日々を送る。若手だけで何か新しいことに挑戦したい――。農業の魅力に取りつかれた若者が新たな一歩を踏み出した。
「これはもう、トマトの形をしたあめ玉だ」。“異次元”の甘さが特徴の自慢のトマトについて、今井さんは笑顔で話す。
実家は県内でも指折りの大農家だ。100ヘクタールを超える広大な農地で米や野菜を生産する他、市内で農産物直売所やレストランも経営する。ただ「元々農業にそれほど関心があるわけではなかった」と振り返る。
転機となったのは大学2年生の時。授業で訪れたインドだった。餓死した人の遺体が街中に横たわる光景が今でも脳裏に焼き付く。「がらりと世界観が変わった」。食のありがたみを実感した。食を供給する農業の大切さにも気付かされた。
大学卒業後は1年間、専門学校で農業の基礎を学んだ。23歳で実家の農業生産法人に就職した。
就職後は、法人の代表でもある父の背中を追うようになった。父は29歳の時には地域の後継者仲間をまとめ上げ、麦や大豆に特化した法人を立ち上げ、新たな事業を手掛けていた。「何か新しいことに挑戦したい」という思いが、常に頭の片隅にあった。
そんなとき、農産物の甘味を最大限引き出す「アイメック農法」に特化した高機能ハウスを、地域の事業者が手放すという話が舞い込んだ。
昨年10月、自身を含め法人で働く20代の若手6人で新会社「ROPPO(ロッポ)」を設立。各メンバーが踏み出す「1歩」を足した「6歩」にかけて名付けた。ハウス1棟で1200本のトマトを栽培。これまで通り法人で働きながら、勤務時間外をフル活用して運営する。
高級果実のようにトマトを箱詰めして贈答用に──。「“異次元”の甘さを武器にトマトの概念を変えたい」。販路開拓や会社運営など慣れないことばかりだが、夢に向かって突き進む。
農のひととき
新会社のインスタグラムアカウントは、ほぼ毎日更新。「消費者は生産者の顔を見て農産物を買う」との考えから、消費者への情報発信を重視する。投稿する写真は週末に撮りだめする。手描きのイラストなども織り交ぜ“映え”を意識する。
現在は、「3秒で友達になれる」といったキャッチコピーと共にメンバーを紹介、ファンづくりに取り組んでいる。
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2021年01月17日

高齢農家の梨運搬を支援 農業用にロボ改良へ 山口東京理科大や県など
東京貿易マシナリーと山口県農林総合技術センター、山陽小野田市立山口東京理科大学は、運搬支援ロボットによる梨栽培の効率化と軽労化に向けた共同研究契約を締結した。収穫した果実や肥料、剪定(せんてい)枝などをロボットに載せて運び、作業者の負担を軽減する。スマート農業の導入で、高齢化が進む地域の安定経営を目指す。……
2021年01月20日

事業総利益3・2%減 信用、共済依然厳しく 20年度上半期JA経営
JA全中は、2020年度上半期のJA経営速報調査の結果をまとめた。企業の売上総利益(粗利益)に当たる事業総利益は7758億4900万円で、前年同期比3・2%減。信用や共済の事業環境が引き続き厳しいことに加え、購買は新型コロナウイルスによる需要減も影響した。減少は5年連続。
6月決算のJAを除く576JAを集計した。……
2021年01月20日
病害虫図鑑の新着記事

ホウレンソウ萎凋病 連作避けて土壌消毒
特 徴
ホウレンソウ萎凋(いちょう)病は、フザリウム・オキシスポラム分化型スピナシアエという糸状菌によって引き起こされる土壌伝染性の病害だ。病原菌はホウレンソウに強い病原性を示し、根から感染する。
病害はホウレンソウの生育初期から収穫期まで生育期全般で発生するが、高温時に発生しやすいため、一般に夏から初秋に被害が多く、低温期には少ない。感染すると下葉から黄化してしおれ、生育不良となり最終的には枯死する。しおれた株の根の先端部分や側根の付け根部分は、黒褐色に変色する。
防 除
耐病性品種の作付けを基本とするが、土壌中の病原菌密度が高い土壌では、耐病性品種であっても発病するので注意する。
連作で被害が大きくなる。雨よけ栽培など連作が前提の場合は、クロルピクリン薫蒸剤、土壌還元消毒、太陽熱消毒等による土壌消毒を実施する。収穫後の残根は次作の伝染源になるので、持ち出して処分する。
シロザやアカザなどの雑草は、病原菌を保菌している場合があるので、圃場周辺の除草に努める。本病は酸性土壌で発生しやすいので、土壌の水素イオン指数(ph)をホウレンソウ栽培に最適な6.5~7.0程度に矯正する。
(岩手県農業研究センター環境部病理昆虫研究室主任専門研究員・岩舘康哉)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/30
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2013年10月30日

チャノホコリダニ 除草に努め早期発見
特 徴
チャノホコリダニの成虫の体長は雄で0.2ミリ内外、雌で0.25ミリ内外、体色は淡黄緑色である。日本全国に分布し、ナスやピーマン類の他、多くの野菜類、花き類などで発生が見られる。
発育は非常に早く、25~30度では卵から成虫になるまでの所要日数は5~7日、1雌当たりの産卵数は50個程度だ。露地栽培では8、9月に多いが、施設栽培では周年発生し、被害発生も露地栽培に比べて多い。成虫は新芽の伸長とともに、生長点や若葉に移動し、葉では裏面に多く寄生する。
ナスでは、寄生を受けると、葉は奇形となり、葉縁が裏側に巻き込み、葉裏は淡褐色に変色し、生長点は心止まり症状となる。果実では加害部がさめ肌状を呈し、灰褐色に変色する。
ピーマン類では、発生初期には展開直後の葉の周辺部がやや裏側に湾曲する症状を呈し、密度が高まると生長点が縮れて新葉の展開が抑えられ、心止まり症状となる。また、幼果が寄生を受けると褐変コルク化し、生育は止まる。
防 除
野外ではスベリヒユ、クローバーなどの雑草が発生源の一つと考えられるので、圃場周辺の除草に努める。圃場内では、最初に一部の株で発生し、管理作業などで拡大していく場合が多い。被害が見られた株の周辺では、外見上健全であっても既に寄生されていると考えた方がよい。
多発後の対策では樹勢回復に時間がかかることから、早期発見に努め、少発生のうちに有効な薬剤で防除を徹底する。
(高知県農業技術センター生産環境課チーフ=昆虫担当・下元満喜)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/16
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2013年10月16日

イネごま葉枯病 土づくり中心に軽減
特 徴
イネごま葉枯病は、苗や本田期の葉、穂に発生する糸状菌病害だ。全国で発生が見られるが、問題となる地域は限られている。
本田発病が主体で、葉では暗褐色楕円(だえん)形斑点ができる。穂では穂軸や枝梗(しこう)などが、あめ色に変色する穂枯れ症状となり、最大で20%程度減収する。伝染源は保菌種子や前年の被害稲わら。夏期の高温は病原菌の増殖や稲体の消耗による抵抗力低下を促進して発病を助長する。
窒素やカリ、鉄、マンガン、ケイ酸などの欠乏により発病が増える。特に砂質浅耕土などの「秋落ち水田」では、これらの土壌養分が流亡しやすく、鉄不足により硫化水素の害が軽減されないため、養分吸収が妨げられる。
防 除
土壌条件や栽培管理と発病が密接に関連するため、土づくりを中心とした耕種的防除が重要となる。客土、堆肥施用などで土壌の保肥力を高め、土壌診断に基づいて鉄などの欠乏養分を補給する。また、深耕を進め、適切な中干しや水管理で硫化水素の発生を抑え、根の活力を維持する。常発地では耕種的防除と薬剤防除により被害を抑制する。
(新潟県農林水産部経営普及課農業革新支援担当・堀武志)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/9
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2013年10月09日

ハクサイダニ 連作避けて除草管理
特 徴
ハクサイダニは、露地ハクサイで被害が多く見られていたが、近年は福島県内ではビニールハウスのシュンギクに被害が見られている。本種はムギダニ同様、ミドリハシリダニ科のダニだ。
加害植物は小松菜、ハクサイ、水菜などのアブラナ科の他にシュンギク、ホウレンソウなどだ。加害された作物の葉は銀白色を呈する。幼苗期に多数の寄生があると枯死してしまうこともある。
発生回数は年1、2回といわれている。福島県での無加温ビニールハウスでの成虫発生は、1回目が11月中旬から12月、2回目は1月下旬以降だ。2回目の成虫が産んだ卵は休眠卵であり、休眠卵は土壌中で夏を越す、いわゆる夏休みをする。
防 除
防除時期は成虫が発生する12月以降と考えられる。これまでの試験結果では、合成ピレスロイド剤など数種の薬剤で効果が認められているが、適用のある登録農薬はない。
対策には、前年に多発した圃場で連作を避ける。周辺雑草にも寄生するため、これらが発生源とならないように除草管理を実施することが重要だ。
(福島県農業総合センター生産環境部専門研究員・荒川昭弘)
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・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/2
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2013年10月02日

トマト褐色根腐病 連作避け根残さ除去
特 徴
トマト褐色根腐病は、病原糸状菌ピレノケータ・リコペルシシによって引き起こされる難防除の土壌病害。トマトだけに発生し、全国で確認されている。
根が褐変し、細い根は腐敗消失して太い根だけとなる。太根の褐変部位は松の根状にコルク化して表面に多数の亀裂を生じる。地上部では着果負担が掛かり始める時期に、しおれや黄化を呈するようになるが、維管束褐変は認められない。本州では病勢が進むと激しい萎凋(いちょう)症状、中段果房の着果不良など大きな被害となる。北海道では枯死に至ることはまれだが、果実が小玉化するなど収量に影響し被害となる。
根部の発病は低温期に進行し、特に生育前半が低温で経過する作型で被害が大きい。
防 除
トマトの連作を回避する。病原菌は被害根残さなどと共に土壌中で生存するため、作付け終了後に根部残さを除去する。
薬剤による土壌消毒の他、土壌還元消毒や太陽熱消毒が有効だ。本病に耐病性を持つ台木品種を利用した接ぎ木栽培を実施する。
北海道では定植10日前までに、ふすまを10アール当たり500キロ、発生程度の低い圃場は250キロ施用することで、定植後2カ月間の発病軽減効果が認められている。ただし、栽培終了時までの発病抑制効果は期待できず、他病害虫への影響は不明。土壌還元消毒直後の栽培には不可だ。
(北海道立総合研究機構花・野菜技術センター生産環境グループ研究主査・西脇由恵)
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・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/9/18
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2013年09月18日

ダイコンアブラムシ 葉の脱色目印に防除
特 徴
アブラナ科の野菜を加害するカメムシ目アブラムシ科の害虫で、日本全国に分布する。ダイコンアブラムシという和名だが、ダイコンよりはむしろキャベツやナタネなどで多い。
春先に繁殖が著しくなり、4、5月ごろに密度が最も高まる。夏季は、キャベツの苗などにわずかに見られる程度で、発生は少ない。秋季にはダイコン、キャベツ、ハクサイなどに見られるようになる。
体は暗黄緑色~濃緑色で、体全体が白粉で覆われている。成虫(羽のない胎生雌)の体長は2.2~2.5ミリだ。キャベツでは葉裏に群生し、葉が黄変し、結球が遅れ、小さくなる。ナタネでは花穂に群生し、花柄や、さやを吸汁加害し、子実の収量が減少する。ダイコン、ハクサイでは葉が縮れる。
防 除
薬剤では、播種(はしゅ)時、定植時に施用する粒剤や、生育期の散布剤などがある。キャベツなどで本種のコロニーが大きくなると葉が端から大きく巻いてしまうため、散布薬剤が直接かからず、浸透移行性のない薬剤の場合、効果が出にくくなる。キャベツでは、コロニーの小さな時期から葉の脱色が生じるので、こうした株を見つけたら防除のタイミングだ。
一方、苗床などでの物理的防除法としては、0.6ミリ目合い以下の防虫ネットが有効だ。この目合いの防虫ネットは、本種の他にも、アブラナ科野菜に発生するニセダイコンアブラムシ、モモアカアブラムシ、コナガやキスジノミハムシなどの対策にもなる。
(農研機構・中央農業総合研究センター病害虫研究領域主任研究員・長坂幸吉)
注 意
・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/9/11
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2013年09月11日

カキ炭そ病 病斑や徒長枝を除去
特 徴
カキ炭そ病はコレトトリカム・グロエオスポリオイデスと呼ばれるかびの一種によって引き起こされる病気だ。この病気は、枝、果実に黒色の病斑をつくる。特に果実に発生した場合は、外観が大きく損なわれるために商品価値が失われるとともに、早期落果を引き起こす。
病原菌は枝の病斑などで越冬し5月以降、胞子によって新梢(しんしょう)への感染が始まる。新梢には黒色の病斑ができ、病斑上に形成された胞子が再び分散し感染を広げる。新梢の病斑は枝が硬くなるに従って楕円(だえん)形、黒色でややくぼんだ、火であぶられたような外観になる。
果実に感染すると収穫期が近づくにつれ、黒色、大型でややへこんだ病斑ができる。胞子は雨とともに分散するので、梅雨や秋の長雨、台風によって発生が助長される。
防 除
新梢にできた病斑が当年の果実に対する伝染源となるため、枝の管理に注意する。すなわち、徒長枝に病斑を見つけた場合にはすぐに除去するとともに、余分な徒長枝は感染を防ぐ目的で随時切除する。剪定(せんてい)時にも注意深く観察し枝にできた病斑の除去に努める。
薬剤は、ジチアノン剤、マンゼブ剤、有機銅剤、ストロビルリン剤、DMI剤など多くの殺菌剤が登録されている。薬剤散布は新梢が伸び始める5月中旬から開始する。果実に対しては8月下旬~9月が重点防除時期となる。
(農研機構・果樹研究所ブドウ・カキ研究領域上席研究員・須崎浩一)
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・掲載日:2013/9/4
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2013年09月04日

マメハンミョウ 耕うん、寄主植物除く
特 徴
マメハンミョウはコウチュウ目ツチハンミョウ科で、本州以南、中国、台湾に分布する。
成虫は植食性で、大豆、クズなどのマメ科、ナス、トマト、イヌホオズキなどのナス科、その他多くの植物の葉や花を摂食する。幼虫は肉食性で、イナゴ、バッタ、ツチバチなどの卵を食し土中で越冬する。このため成虫は夏に水田畦畔(けいはん)や土手、道端のイヌホオズキや雑草に群がる。稲は加害しない。
成虫は年1回、7月後半から9月に出現。成虫は長さ11~19ミリ、幅3~5ミリ。体と脚は黒色、上翅(じょうし)には白い縦筋が入るが、不鮮明な個体もいる。頭部は赤色、複眼の内側と口器の周囲は黒色。触角は黒色で前脚の長さに匹敵し、雄はのこぎり歯状、雌は糸状。卵は楕円(だえん)形で大きさは長さ3ミリ、幅1ミリ、黄白で表面に光沢がある。5齢幼虫は擬蛹(ぎよう)状で6齢を経て蛹化し、さなぎは約15ミリ長、黄白色、複眼黒色。
成虫は日中活動し、午後盛んに活動する。羽化後4、5日で交尾し、土中に70~150卵粒の卵塊を産卵する。卵期は18~21日。成虫寿命は30~35日。暖冬少雨年に多発する。
防 除
防除幼虫が土中で越冬するので冬に数回耕うんし幼虫やさなぎを減らす。土手や畦畔、畑地などで寄主植物のイヌホオズキを見かけたら除去する。
成虫は大豆、小豆、エンドウマメ、インゲンマメ、サヤエンドウ、サヤインゲン、エダマメの葉を食害するので捕殺する。多発例は少ないが、多発時は登録剤のマラソン粉剤をスポット的に施用し防除する。
(東京農業大学客員教授・法政大学兼任講師・平井一男)
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・記事中の農薬は掲載日時点の登録薬剤です。
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・掲載日:2013/8/28
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2013年08月28日

キュウリ疫病 土跳ねの防止が有効
特 徴
キュウリ疫病は、それほど発生は多くないが、水はけの悪い圃場で地上部の茎、葉、果実に発生する。いずれの部位でも水浸状の病斑が形成、拡大され、乾燥すると病斑部がくぼむ。茎では地際部に発生しやすく、乾燥するとくびれて褐変し、上部が萎凋(いちょう)・黄化する。高湿度条件が保たれると、病斑上に霜状の白色の菌叢(きんそう)を生じる。
病原菌は土壌中の植物残さなどで生存し、水により媒介され、高温多湿時に発生しやすい。病原菌種は2種報告されており、一種は多犯性で多くの作物を加害するが、もう一種はウリ科植物のみに感染する。灰色疫病も同類の病原菌によるものであり、発生の特徴も似ている。
防 除
高畝など耕作土壌の排水を良くすることが有効である。また、かん水、降雨などによる土壌の跳ね上がりを防ぐマルチ、敷きわらなども有効である。
水中を積極的に泳ぐ遊走子により伝染し、大雨で圃場がたん水した場合などには圃場全体に急速に拡がるため、予防に努める。発生が激しい場合には、クロルピクリンを用いた土壌消毒により病原菌密度を下げ、次作での発生を防ぐ。茎葉には、ジチアノン・銅水和剤とマンゼブ水和剤が散布できる。
(農研機構・野菜茶業研究所野菜生産技術研究領域主任研究員・窪田昌春)
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2013年08月14日

コアオハナムグリ 発生把握して殺虫剤
特 徴
コアオハナムグリは、体長10~15ミリの小型のハナムグリだ。背面の体色は緑色で白い斑点がある。全国各地に広く分布して、さまざまな植物の花を訪れる。かんきつでも開花に合わせて飛来し、花を訪れた成虫が花粉や蜜を食べる際に、頭部を花の内部に潜り込ませ、脚で子房(果実になる部分)を傷つける。この時の傷が果実肥大後の果皮に線状の傷害痕として残り、外観上の被害となる。
中晩かん類で被害が発生しやすい。4月中・下旬に越冬後の成虫が出現して交尾産卵し、晩春から夏にかけて幼虫は土壌中の腐植を食べて成長し蛹化(ようか)する。8~10月には新成虫が羽化し、短い活動期間の後に越冬する。5月と9月に成虫の発生ピークが見られるが、前者は越冬成虫、後者は新成虫による。
防 除
成虫は、かんきつ園周囲の樹林地等から飛来するため、園内外の白い花を定期的に観察して発生状況を把握する。
防除では殺虫剤を散布する。少発生の時は温州ミカンでは開花初期に1回、中晩かんでは開花盛期に1回散布する。多発生の時は開花初期と盛期に2回散布する。かんきつの開花期にはミツバチも活動しているため、付近の養蜂に注意してミツバチに悪影響が生じないように配慮する。
(農研機構・果樹研究所カンキツ研究領域上席研究員・望月雅俊)
注 意
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・掲載日:2013/8/7
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2013年08月07日