TPPゾンビ根絶 日米国民の声と乖離 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏

 日米FTAを避けるためにTPP11ないしTPP5を提唱し、TPPへの米国の復帰を待つ――という説明は本当だろうか。

 日本の対米外交は「対日年次改革要望書」や米国在日商工会議所の意見書などに着々と応えていく(その執行機関が規制改革推進会議)だけだから、次に何が起こるかは予見できる。日米経済対話も自ら提案したように、日本政府は日米FTAも受け入れ、譲歩を重ねる用意はあるだろう。TPPプラスの譲歩リストを準備していないわけはない。

 例えば、牛海綿状脳症(BSE)に対応した米国産牛の月齢制限をTPPの事前交渉で20カ月齢から30カ月齢まで緩めたが、米国から全面撤廃を求められたら即座に対応できるよう食品安全委員会は1年以上前に準備を整えてスタンバイしている。

 情けない話だが、日米FTAはTPPプラスで行うつもりで米国にTPP以上を差し出すのだから、日米FTAと当面の米国抜きTPPは矛盾しない。いずれも米国への従属姿勢のアピールだ。

 米国内のグローバル企業とその献金で生きる政治家は、米国民の声とは反対に、今でも命や環境を犠牲にしても企業利益が最大限に追求できるTPP型ルールをアジア太平洋地域に広げたいという思いが変わらないから、そういう米国のTPP推進勢力に対して、日本が「TPPの灯を消さない」努力を続けているところを見せることも重要な米国へのメッセージだ。

 日本のグローバル企業も徹底した投資やサービスの自由化でアジアからの収奪をもくろんでいるので、米国のTPP推進勢力と同じ思いがある。そして、日米のグローバル企業などの要求を実現する窓口が規制改革推進会議である。国民の将来が一部の人たちの私腹を肥やすために私物化されている現状は限度を超えている。「国会議員になるより規制改革推進会議メンバーになったほうが政策を決められる」と与党議員も嘆く。規制改革推進会議は解散すべきだ。

 「日米FTAよりTPPのほうがまし」として、TPP型の協定を肯定するかのような論調も悪質だ。格差拡大、国家主権の侵害などを懸念し米国民の圧倒的多数が否定したのがTPPだ。日本を含む多くの市民の声も同じなのに、大多数の市民の声とグローバル企業と結託した政治家の思惑とが極度に乖離(かいり)した政治状況は各国ともに何ら改善されていない。ゾンビのようなTPP11やTPP5を根絶しなくてはならない。

 さらに、朝鮮半島有事に備えて米国に日本を守ってもらうには、「何でもすぐやる」日米経済対話にすべきと対米追従強化をあおる論調もあるが、逆に「日米安保の幻想」こそ認識すべきだ。米国では北朝鮮の核ミサイルが米国西海岸の主要都市に届く水準になってきたから、韓国や日本に犠牲が出ても今の段階でたたくべきと議論している。米国は日本を守るために米軍基地を日本に置いているのではない。

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