都会っ子が毎年1000人超なぜ? 人集う村 鍵は「教育」 長野県泰阜村

短大の講義で使う教材を準備する村のスタッフ(長野県泰阜村で)

 都会から農村を訪れ生活体験をする都市農村交流人口が増えている。人口1700人の長野県泰阜村は年間1000人を超す学生や子どもを受け入れ、参加者から移住者も出始めた。全国でグリーン・ツーリズム施設の宿泊者数は5年で1.5倍に増える中、取り組みを単なる通過点にせず、いかに若者に繰り返し来てもらえるかが、都市農村交流の成功の鍵を握る。
 

短大授業と連動 学生が農村体験 小中学生引率も


 長野市から山を越えて車で3時間。信号もコンビニもない山の中に村はある。雑貨店が1軒、宿泊施設は民宿2軒。高校を卒業した若者は村を出る。典型的な中山間地域で高齢化率38%の同村だが、夏になると小中学生1000人、短大生100人でにぎわう“教育村”に変わる。

 村とNPO法人、村民らが協働し、農村の暮らしや自然との触れ合いを体験させて農業・農村への理解促進につなげる。

 名古屋短期大学現代教養学科の1年生約100人を対象に、村民が短大に出向いて半年間講義する。7月は学生が2泊3日で農村暮らしを体験する。受け入れには約20世帯が協力。2年生になると希望者約10人が毎月村を訪ね、竹林整備や田植えなどを手伝う。

 元々は、NPO法人や個人が別々に学生や子どもを受け入れていたが、村が2015年にカリキュラムとして体系化。「ひとねる(村の方言で「育てる」の意味)大学」と名付けた。単位取得になる必修授業のため最初は消極的でも、終わる頃には「帰りたくない」と泣く学生も。同短大で発展経済学を教える茶谷淳一教授は「都会にない“温かさ”に触れて感激する」と分析する。

 学生が来ることで、住民にも活力を与えている。村民の宮島康夫さん(68)は「村を若い人が歩いているだけで明るくなる」と喜ぶ。学生を呼ぶだけではない。宮島さんは11月の同短大の文化祭に村民と行き、村をPRする。

 宮島さんらは、人口が流出し続ける村の活性化策を模索するため、05年にNPO法人泰阜グリーン・ツーリズム研究会を設立。収入には直結しないが、若者を受け入れるノウハウを築いてきた。

 研究会の他に、小中学生向けにキャンプ体験を行うNPO法人グリーンウッド自然体験教育センターが、毎年1000人の小中学生を受け入れる。短大生のボランティアを含めスタッフ300人が引率。参加者の4割がリピーターになる。

 最近では、子どもの頃に村に来た縁で、大人になって移住するケースも出てきた。法人代表の辻英之さん(47)は「目先の収入だけを求めるとサービス合戦になる。単なるお客としてでなく、リピーターになる村のファンをつくることが重要」と強調する。
 

宿泊さらに増加 20年は1300万人へ


 政府は、20年までにグリーン・ツーリズム施設の宿泊者数を年間1300万人にまで増やす計画だ。都市農村交流人口が増える理由を農水省は「農村への関心の高まりや、道の駅の整備、都市住民にとって農村風景が非日常になってきたことなど複合的」(都市農村交流課)と分析する。

 同省によると、毎年2万5000人の小中学生が、修学旅行などで民泊や田舎暮らしを体験。08年から15年度までに20万人以上の子どもが農家民泊を体験した。全国で約200地域が受け入れている。「交流人口が増えると経済効果や住民の誇りにもつながる。移住・定住にも結び付く」(都市農村交流課)と交流を促す。(山崎笙吾)
 

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