安倍政権の“姑息術” 官邸独裁構造にメス 経済評論家 内橋 克人

内橋克人氏

 東京都議選で歴史的惨敗を喫した自民党内でなおも姑息(こそく)な政治手法は生き続ける。党幹部らは自党が受けた深い傷を「見て見ぬフリ」でやり過ごすのに懸命だ。ある党幹部は都議選の結果を指して「あれは、あれ。もう終わったこと」と記者会見の場で大見えを切った。

 憲法改正への道程は、都議選大敗に影響されることなく、あくまで首相が示した去る5月の意向表明に沿って進めるといい、改憲の自民党案は今年11月上旬までに取りまとめて憲法審査会に提案。臨時国会での論議を経て2020年施行を目指す、と首相官邸と与党幹部らは超強気で確認し合った(7月4日)。

 あらゆる権限を首相官邸に集約させる「官邸独裁」の異様な構造にメスを入れない限り、損なわれた民主主義の回復はおぼつかない。
 

人間制御の手法


 安倍政治を特徴付ける手法の第一は「人事を介して組織を操る」にある。行政組織のトップ人事に限らず、上級官僚の昇任・左遷、各種政府諮問会議委員の人選に至るまで、選任の権限は全て首相官邸の掌中にある。

 紆余曲折の末、「内閣人事局」が新設されたのは14年5月、第2次安倍政権下でのことだ。審議官クラス以上の幹部職員およそ600人の人事は官邸の差配下に置かれ、個々の官僚については思想信条から日常の言動に至るまで全て官邸のお見通しとなった。「森友学園」問題で素っ気ない答弁を重ねて首相をかばい通した佐川宣寿財務省理財局長は順当に国税庁長官に昇進した。菅義偉官房長官も萩生田光一官房副長官(内閣人事局長)も「格別の昇任ではない。適材適所の配置だ」と強弁する。が、予算委員会で繰り返された高級官僚の「木で鼻をくくったような」答弁こそ、民意の「自民離れ」を加速させるものだった。
 

外遊隙間に招致


 突然の「中間報告」という姑息かつ異様な政治手法で「共謀罪」(テロ等準備罪)を成立させ、国会を強制幕引きさせた安倍政権と政府与党が、かねて野党の要求してきた加計問題の「(国会)閉会中審査」にようやく応じた。しかし、よりによって前川喜平前文部科学省事務次官の参考人招致日は首相外遊中の隙間を充てた。当事者不在の日程をわざわざ選ぶこの手法は、外科手術で用いられる「姑息術」に酷似している。都議選での自民大敗北への反省などみじんも感じられない。

 安倍政権の得意とする「閣議決定」の乱発と「党議拘束」が強行採決を可能にし、民意によって選ばれたはずの国会議員を“意思なきロボット”に貶(おとし)める。

 議員一人ひとりの信条は多数党の「数の論理」にのみ込まれ、埋没して消えていく。逆らえば除名処分が待っている。かくて強行採決は日常となる。世界の民主主義国でこのような例は存在しない。これが安倍官邸の得意とする第二、第三の政治手法である。

 私たちは空洞化する議会制民主主義の明日を恐れなければならない。

<プロフィル> うちはし・かつと
 
 1932年神戸市生まれ。新聞記者を経て経済評論家。日本放送協会・放送文化賞など受賞。2012年国際協同組合年全国実行委員会代表。『匠の時代』『共生の大地』『共生経済が始まる』など著書多数。

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