戦々恐々 強毒ヒアリ 既に6カ所、女王も 国内で発見相次ぐ

アリ塚からあふれ出るヒアリ(台湾・新北市で)

水田のあぜにすみ着いたヒアリの危険性を訴える黄主任(同・桃園市で)

 強い毒を持つ南米原産の特定外来生物「ヒアリ」が国内で初めて兵庫県尼崎市で確認されて以来、11日までに繁殖能力のある女王アリも含め4都府県6カ所で見つかり、各地で警戒を強めている。台湾では、田んぼのあぜなどを好んで巣を作り、農家が刺される被害も相次ぐ。農地で定着すれば、農作業に支障が出る懸念もある。

 ヒアリは7月6日に東京港、10日に愛知県春日井市の倉庫で、名古屋港(飛島村)で陸揚げ後に運ばれたコンテナでも確認された。内陸での発見に関係者は警戒している。陸揚げしたコンテナは各地に運ばれるからだ。

 さらに関係者が懸念するのは、女王アリの拡散だ。一度に1000個以上を産卵し、巣を作れば一気に広がる恐れがある。女王アリは尼崎市で2匹、大阪市ではコンテナヤードの舗装面の亀裂から1匹が確認された。

 環境省は現段階でヒアリが日本に定着したとは考えていないが、台湾では鉄道などの交通網に沿って拡散した経過があり、今後発見される可能性は否定できない。

 ヒアリは、専門家が顕微鏡を使って観察しなければ判断できないが、赤っぽくつやつやし、働きアリが2.5~6.5ミリと大きさにばらつきがあるという。同省は「ヒアリと疑われる個体や巣を見つけても、踏んだり壊したりして刺激しないで」と呼び掛ける。

 「殺人アリ」など過剰な報道があることに対し、同省野生生物課の植田明浩課長は「むやみに怖がらず、蜂と同程度の危険度と認識してもらいたい」と冷静な対処を呼び掛ける。
 

あぜに巣 農家が被害 台湾


 台湾では、2003年10月に国際空港のある北部の桃園市で発見されて以来、今年4月までに全20市・県の半分にまで広がった。水田のあぜや休耕田などにも生息し、詳細な統計はないが農家が刺される被害が年間200~300件発生。政府は根絶に向けさまざまな防除策を取るが、生息地域は拡大するばかりだ。

 ヒアリは乾燥地帯を好み、生息場所は日当たりが良い休耕田や建設予定地、鉄道のレール沿いなど多岐にわたる。長年、ヒアリ防除に携わった国家紅火蟻防止研究センターの最高責任者の黄栄南主任(台湾大学教授)は「ヒアリは、草が茂る荒廃地や森林では生活していない」と言う。

 生息地域を急速に広げた原因の一つが、ヒアリ特有の自然拡散だ。女王アリは気流に乗り100~200メートルの高さに飛び立ったところで雄アリと交尾。そこからさらに10~20キロ離れた所で卵を産み、新しい巣を作る。洪水など自然災害にも強い。洪水になると、働きアリ同士が尻尾にかみつき団子状になり、女王アリを保護する。ヒアリの塊は、洪水と共に流れ、すみやすい岸にたどり着くと女王アリを放つ。夏場の洪水は、ヒアリの重要な拡散手段とされる。

 さらに樹木の植栽や工事に伴う土の移動、鉄道や貨物など人間の活動によっても拡散する。台湾では桃園市で確認されて以降、鉄道や自動車の交通網が発達した島の西側に沿って南下している。

 黄主任は「日本の報道によると、ヒアリはまだすみ着いてはいないようだが、定着すると根絶が難しい。発見地を中心に1、2キロ以内を徹底調査し、未然に拡散を防ぐことが急務だ」と指摘する。(金哲洙、隅内曜子)

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