[達人列伝 13] 泉州水なす 大阪府岸和田市・山本敏勝さん 根張り重視 高収量 東京進出貢献 若手の育成も

「自分が本当においしいと思うものだから作っていて楽しい」と山本さん(大阪府岸和田市で)

 大阪府の泉州地域特産のブランド「泉州水なす」の主産地の一つ、岸和田市で、約30年にわたって栽培を手掛ける山本敏勝さん(73)は、一般的なナスに比べ収量が半分ほどとされる水ナスで、10アール当たり約16トンの圧倒的な高収量を実現する。約50人が所属するいずみの農協水茄子(なす)生産出荷組合でもトップの収量だ。繊細な水ナスの特性を踏まえた高い管理技術を学ぼうと、弟子入り希望者も多い。技術は惜しみなく伝授し、次世代の育成にも貢献する。

 絞ると水が滴り落ちてくるほどのみずみずしさと、軟らかさが特徴の「泉州水なす」。大阪中央青果によると、一般的なナスに比べ、3割ほど高く取引される高級ナスだ。元々ミカン農家として就農した山本さんは、「ミカンではトップ産地に味で勝てない。泉州でしか作れない本当においしいものを作りたい」との一念で水ナス栽培を始め、技術を磨いてきた。

 最も力を入れる土づくりでは、地域平均の2、3倍にもなる10アール当たり3、4トンの堆肥を投入する。1つ20キロある堆肥を扱う作業はさすがに骨が折れるが、毎年この作業を欠かさない。「若い農家は目に見える木の様子ばかり気にするが、大事なことはいかに根を張らせるかに尽きる」と力を込める。

 探究心は人一倍だ。出荷時期は180日間休まずハウスに通い、収穫を一人でこなしながら状態を観察する。常に作物の3週間先をイメージし、かん水や追肥のタイミングを見極める。品質面でも、実需者である漬物業者のニーズを探ろうと、自ら漬物加工を手掛け栽培に生かしたこともある。

 山本さんは、同組合の立ち上げ時から関わり、泉州地域での消費が主流だった「泉州水なす」を、腕利きの料理人らが集う東京都の築地市場で取り扱われる全国ブランドに押し上げた立役者の一人。今では、組合全体の出荷量の約1割が築地に出荷される。

 ハウスには若手農家が市内外からやってくる。「これから一緒になすびを作る仲間なので、自分の技術は何でも伝えている」(山本さん)と話す。JAいずみの販売課の双和功課長は「中堅が少ないことが産地の課題。見本であり、若手を育ててくれる存在」と信頼を寄せる。(斯波希)
 

経営メモ


 加温ハウス20アール、無加温ハウス15アールで「泉州水なす」を栽培する。いずみの農協水茄子生産出荷組合の組合長を務める。2012年には、第41回日本農業賞(個別経営の部)の大阪府代表に選ばれている。
 

私のこだわり


 一番は土づくり。毎年、前作を振り返り、元肥の窒素成分の割合を変えている。

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