馬装蹄師 若者離れ 作業つらい下積み長い 健康・走力 欠かせぬ存在 養成機関は定員割れ

将来の装蹄師を目指し、猛暑の中で鉄を打ち蹄鉄作りに励む講習生(宇都宮市で)

 馬の健康維持や走力発揮に欠かせないひづめを削り、保護する蹄鉄を管理する「装蹄師」を目指す若者が年々減り、競馬や乗馬クラブの存続が懸念されている。国内唯一の養成機関、日本装削蹄協会装蹄教育センター(宇都宮市)によると、近年は定員割れの状況が続く。生産現場への影響も懸念され、関係者は危機感を強めている。

 

生産牧場 危機感も


 カンカンカン――。同センターには連日、10、20代の若者11人が蹄鉄を作る音が響く。1200度にも達する火枦(ほど)と呼ばれる窯に鉄を入れて特殊なハンマーで打つ作業が続く。猛暑の今夏は特に過酷な作業だ。

 装蹄師になるには装蹄技術の他、飼養管理、馬に関わる知識を1年かけて学ぶ。卒業試験に合格すれば2級装蹄師の資格が得られ、競馬場に就職したりベテラン装蹄師に弟子入りしたりできる。

 「想像よりつらく全身が筋肉痛になった」と話すのは、東京都青梅市出身の武藤涼さん(18)。農業高校生の時に装蹄師と出会い、「格好いい」と入校を決めた。「徐々に蹄鉄を作れるようになってきた。日本中央競馬会に就職したい」と意気込む。

 装蹄師は日本装削蹄協会が認定する国内唯一の専門資格。競馬場や乗馬クラブ、生産牧場でひづめや蹄鉄を管理する。2級になって5年目以降、試験に受かれば1級、さらに9年後に指導級装蹄師になれる。指導級になると、年収数千万円を稼ぐ人も少なくない。

 高収入が期待できる一方、競馬人気の低下や下積み期間の長さからセンターへの入校希望者数は減少。応募が最も多かった1999年の70人に比べ近年は3分の1以下まで減り、定員割れが続く。同協会が全国の馬の飼養頭数から割り出した適正な装蹄師の人数は500人程度。人数を維持するには、毎年11人を新たに確保する必要がある。

 ただ、途中でやめるケースを考慮すれば16人程度は必要で、同協会の楠瀬良特別参与は「優秀な人材の確保が難しく、このままでは馬産業の根幹を揺るがしかねない」と危機感を持つ。

 管内に約700戸の繁殖牝馬牧場を抱える北海道JAひだか東の岩本武美営農生産部長は「馬は脚やひづめの形がそれぞれ違い、個体に応じた管理が常に必要となる。装蹄師は欠かせない」と役割の重要性を指摘。現段階ではまだ不足していないが、「今後、職人技を持つ装蹄師が減り、足りなくなる恐れがある。生産地にとって極めて重要な問題だ」と懸念する。

 神奈川県JA横浜の組合員で、横浜市で乗馬クラブを経営する北井一彰さん(41)も、「人が爪を切るように馬も毎月、ひづめを削る必要がある」と言う。65頭を管理し、毎月3人の装蹄師に来てもらっている。「装蹄師に適切に管理してもらえなければ、競技で力を発揮できないし、馬の健康にも影響が出る」と、後継者不足を不安視する。

 人材確保に向け、同協会も対応に追われる。装蹄師という職業を知ってもらおうと、競馬場のスクリーンなどで装蹄師を紹介、イベントに積極的に参加してPRする。2018年度以降は、年間200万円程度かかるセンターの授業料を下げていく考えだ。(三浦潤一)

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