初の国産チョコ誕生!? 東京五輪へ試作品 小笠原・母島で栽培 安定供給が課題 東京カカオ

カカオの生育状況を見る折田代表。一般的な果樹と異なり、カカオは幹や枝に花を咲かせ、着果する(東京都小笠原村・母島で)

 東京都の離島、小笠原諸島の母島産カカオを使った国産チョコレートの商品化が目前まで進んでいる。熱帯原産のカカオは小笠原でも栽培が難しく、国産の市販商品は前例がない。「東京カカオ」のブランド名で試作品は完成し、残る課題はカカオの安定供給だ。2019年までに商品化し、東京五輪で“おもてなし”を――と、関係者は夢を膨らませる。

 商品化を進めるのは埼玉県草加市の菓子メーカー平塚製菓と、母島でマンゴーやレモンを生産する折田農園。11年からカカオ栽培に着手した。インドネシアから輸入した果実(ポッド)から種子を取り、実生で苗木を生産。13年に初収穫を迎え、現在は50アールで500本を栽培する。

 栽培方法を学ぶため、同社の平塚正幸社長と同園の折田一夫代表は主産地のインドネシアなどに視察に出向いたが「気候や立地の違い、粗放的な栽培など参考にならなかった」(折田代表)。

 折田代表は島での農業の経験と勘を頼りに土壌の水はけを改良。小笠原の平均気温は24.2度(16年)でカカオ生産に必要な27度には満たないため、ハウスを建てて日照を調整するなど、試行錯誤を重ねた。今年は園地に水槽を置き、授粉を媒介するとされる蚊の増殖を試みている。

 折田代表は「レモンとマンゴーに次ぐ経営の柱にしたい」と期待する。木によって生育にばらつきがあり、ほとんど実を付けない木もあるなど課題は多いが、今後は収量性の高い木を取り木や挿し木で繁殖して改植し、収量向上を目指す。
 

希少価値が武器


 平塚製菓は長年、主力商品のチョコレートを大手メーカーの下請けとしてOEM(相手先ブランドによる生産)で製造してきた。そんな中、同社は大手が参入していない国産チョコに着目。国産原料による安全・安心と「東京産」の驚きと希少性を武器に、自社ブランドの確立を目指す。商品化の着手後に決定した東京五輪・パラリンピック開催は「まさに追い風」(同社)と歓迎する。

 従来、国内メーカーが原料として使うのは、現地で発酵や乾燥など一次加工されたカカオ豆か、さらに焙煎、磨砕を経たカカオマス。しかし、国内では生の果実から原料を製造する実績がない。同社は現地視察や海外の文献などを頼りに発酵から乾燥まで試行錯誤を重ね、2年越しで技術を確立した。

 16年に完成させた「東京カカオ」は、海外産と比べ爽やかな香りと優しい苦味で出来栄えは上々。原料を安定調達できれば量産できる態勢は整った。当面の目標は、カカオ豆の生産量で年間2トン(乾燥状態)。板チョコ換算で4万枚を製造し、19年には一般販売させる計画だ。
 

国内で栽培困難


 カカオは西アフリカ、東南アジア、中南米が主産の熱帯作物。適地は年平均気温27度以上の高温多湿の気候で、赤道を挟んだ南北緯20度以内の“カカオベルト”と呼ばれる一帯とされる。国内では別の製菓会社が沖縄地方で挑戦した例もあるが「栽培が難しいこともあり、(研究開発の)規模を縮小している」(広報担当)と、商品化に至っていない。

 日本チョコレート・ココア協会によると、近年は健康への機能性から、メーカー各社が高カカオ製品などの販売を強化。「中高年層も食べるようになり、消費量は増加している」(同協会)とみる。

 東京都小笠原亜熱帯農業センターの河野章所長は「カカオは栽培技術などの情報が少なく手探りだが、軌道に乗れば小笠原の農業のモデルとして産業振興につながる」と期待する。(福井達之)

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