[戦後72年 学び、伝える 下] 世界へ「平和」訴える 広島大学3年生 神徳菜奈美さん(22)

留学生のために案内のリハーサルをする神徳さん(左から2人目)とサークルのメンバー(広島県東広島市で)

唯一の被爆国 風化させない


 広島大学3年生の神徳菜奈美さん(22)は、留学生に英語で原爆について説明するサークル活動を続けています。

 1945年8月6日に広島市に投下された原爆で死亡したのは、その年だけで約14万人。全身にやけどを負い、建物の下敷きになり、あるいは白血病で、命が次々奪われました。

 「この事実を風化させるわけにはいきません。日本は唯一の被爆国として、世界に向けて平和を訴え続ける使命があります」と決意を固めます。
 

証言など翻訳 留学生に解説


 メンバーは8人。主な活動は毎年8月6日、広島市の広島平和記念公園内の慰霊碑・石碑の案内です。例えば「原爆の子の像」の前では、2歳で被爆し10年後に白血病で亡くなった少女・佐々木禎子さんについて語り、小学校の同級生の募金活動で像が作られたこと、その像が世界平和を呼び掛けている意味などを説明します。

 解説するために被爆者から話を聞き取り、史実を勉強。証言や記録を英語に翻訳して、資料を作ります。

 今年は米国、ドイツなどからの留学生約40人が参加し、公園内の石碑などを5カ所巡りました。「同年代の若者が原爆について懸命に調べている姿に、関心が高まりました」「被爆者の話をじかに聞きたいと思いました」「勉強になりました」などの声に手応えを感じるそうです。

 

同世代の言葉共感呼ぶはず


 茨城県出身の神徳さんは大学進学をきっかけに、「せっかく広島県に来たのだから、原爆について学ぼう」とサークルに入りました。「川は死体で埋め尽くされ、死体を山積みにして火葬したんよ」という被爆者の話を聞いて、しばらく声が出なくなるほどの衝撃を受けました。

 過去の自分がそうだったように、戦争に関心が薄い若者が多いと感じています。そういう人たちの心を動かそうと、戦争や原爆について理解を深めるように努めてきました。

 資料館へ通うだけでなく、一人でも多くの被爆者に会うことを心掛けます。高齢で亡くなっていく被爆者が増え、間もなく体験が聞けなくなる、という焦りにも突き動かされます。今のうちに少しの聞きもらしもないように話を吸収し、その体験について、自らが感じた恐ろしさ、悲しみ、怒りも含めて伝えていこうと考えます。

 「平和が大切だ、というのは子どもでも分かります。それをどこまで深く考え、実際に平和を守る行動に移せるのかが、私たち若い世代に問われています。同世代の言葉だからこそ、共感してくれることもあるはずです」

 国連で7月に採択された核兵器禁止条約で、日本は不参加を表明しました。これに対し神徳さんは「とても悲しいです。日本はどんな理由があろうと、核なき世界を訴えるべきです。政府はこの国民の声を拾い上げ、世界の核兵器廃絶を進めてほしいです」と強調します。

 サークルを立ち上げた佐々木須美子さん(65)は「若者が原爆について学び留学生に伝える活動をすることで、世界に“平和の種”をまくことができます」と話します。
 

考え、思いの共有を 広島大学平和科学研究センター長 川野徳幸さん


 広島大学平和科学研究センターの川野徳幸センター長は「若い世代には、過去に起きた事実を客観的に捉え、未来に向けて色あせないように伝えてほしい」と指摘。単に、聞いたことをそのままつなぐリレーではなく、受け継いだ事柄について考え、思いを共有するべきだと訴えます。

 その上で、「同世代へ、そして次代へとつなぐため、若い力で貪欲に学んでほしい」と期待します。

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