人口増加率全国2位達成 夢抱く移住者が元気くれた 1島も消滅させない覚悟 鹿児島県十島村村長 肥後 正司氏

肥後正司氏

 移住者を受け入れることで、保育園ができ、郵便局ができ、分校が本校になり、新しい出荷組合ができた鹿児島県十島村。2015年の国勢調査では人口増加率が全国2位となった。若者と島民による村の変革をどう見るのか、十島村村長の肥後正司氏に聞いた。

 ――なぜ移住政策に取り組んだのですか。

 役場は鹿児島市内にあり、島にはガソリンスタンドもない。生活環境が著しく厳しい中で、思い切った施策を取らなければ、無人島になる。

 特に家族連れを呼び込むことを重視する。例えば、中学生以下の生活支援は1人月1万円を支給し、出産の祝い金も30万~100万円を出す。期間限定だが、家族で農林水産業に従事すれば1日8000~1万円を交付する。

 役場職員は30人。限られた人材だが、定住対策室を組織化し、全国の移住や1次産業のフェアに出て移住者を呼び込む。自治会長や、議員らからなる定住プロジェクトチームを各島に発足。ソフト、ハード両面の対策が奏功し、教職員を除き10年度から16年度までの7年で141世帯239人が移住し、移住者の定着率は8割を超す。一時600人を切った人口は、700人を超すまでに回復した。

 工事で職人を泊まりがけで呼ばなければならないため、土木や建築の事業が予算の多くを占める。さらに過疎債を活用しているため、予算規模で見ると移住対策が目立つわけではない。だが、村にとっては予算や人員の面でも大きな挑戦。小学校を分校から本校にすることや、郵便局の開設には相当な労力をかけた。現金を下ろす設備もない現状を伝え、若者を受け入れる基盤をつくる必要性を県や関係機関に訴えた。

 ――島は変わりましたか。

 予想以上の成果が出た。子どもがいる喜びは計り知れない。人口増加や保育園開設といった目に見えた成果だけでなく、夢を持つ若者が来て島は元気になった。6次産業化や農業の産地化など島の新しい価値を示してくれた。

 ただ、自給自足で必死に生きてきた島民から見ると、補助制度への違和感があるのも事実。島民への支援事業もあるが「昔から住む住民の支援を拡充するべきだ」と言う人もいる。

 ――十島村にとっての若者力とは何ですか。

 新しい発想で希望を見付ける力。「甘い考えは島では通用しない」「農業は厳しい」と言いたくなる。しかし、若い移住者は前向きに挑戦する。

 七つの島を維持するのではなく、1島に集約した方が便利だという意見も村外にはある。しかし、絶対に1島でも消滅させてはならない。効率化を求める今の考え方で、先祖からつないできた長い歴史を閉じてはいけない。島に来る若者は無自覚でも、島の魅力や協同の尊さを分かっている。つながりや共感する力も、若者の特徴だ。

 かじ取りは、行政だけではできない。島民が若者を受け入れる覚悟を持ち、若者と共感する作業を積み重ねる。高望みするのではなくバランスを保ちながら、島を次の世代につなげたい。

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