市街地や庭先、野良猫も… マダニ感染激増 最多の勢い秋も警戒を

血を吸う前のフタトゲチマダニ(国立感染症研究所提供)

 各地でマダニによる感染症の被害が相次いでいる。今年の発症報告数は統計上の最多を更新する勢いで、今月27日にも死者が発生した。専門家によると、生息数が拡大している恐れがあり、マダニを運ぶ野生動物の分布拡大が関連しているとの見方もある。マダニの活動が活発な時期は秋まで続き、農作業など屋外での活動に注意が必要だ。
 

野生動物原因も 分布拡大


 東海地方のある県では今年、農地や山間地だけでなく住宅地の庭先でかまれる事例が相次ぐ。これまでは病害のなかった場所で、今年はかまれた人が出ている。地元のJA担当者は「ハクビシンやアライグマといった住宅地にもすみつく動物の分布が広がったためではないか」とみる。JA管内では昨年、ハクビシンやアライグマの捕獲数は前年に比べそれぞれ3倍増えており、獣類がマダニを運んだとみられる。

 JAによると、山間地に住む人や農作業をする農家は肌の露出を避けた服装をして、休憩場所では地面に直接座らないなど対策をとってきた。

 一方、住宅の庭先で家庭菜園をしたり、公園に出掛けたりする人は半袖や半ズボンの人も多く、マダニを防御する服装ではないことが多いのが現状という。家庭用殺虫剤はあるが農作物には使えないため、JAは「かまれないように服装などでの対策指導を基本にしている」という。
 

SFTS66人


 マダニの感染症は、原因となるウイルスや細菌を保有するマダニにかまれると感染する。国立感染症研究所によると、ウイルス感染症の「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の発症報告数は20日時点で今年66人となり、統計がある5年間で最多となった。

 SFTSは発熱や嘔吐などの症状が出て、致死率は約2割に及ぶ。有効なワクチンはなく、治療方法は対症療法しかない。統計のある2013年以降、発症報告数は西日本を中心に毎年60人前後で推移し、今年は今月上旬の時点で既に例年を上回った。

 SFTSの死者は相次ぐ。今月、宮崎市の70代女性が死亡した他、7月には感染した動物にかまれて発症する事例も。野良猫にかまれて感染したとみられる西日本の50代女性は、昨年SFTSを発症し死亡した。

 細菌による日本紅斑熱も増えている。発症すると、発熱や発疹の症状が出る。治療法はあるが、今月に愛媛県四国中央市で60代男性の死亡例がある。日本紅斑熱も報告数は増加傾向にあり、今年20日時点で168人に上り、過去最多の昨年(273人)に迫るペースで推移する。
 

肌露出は危険


 同研究所ウイルス第一部の西條政幸部長は「感染症の認知度が高まってきていることも感染報告数の増加につながった」と指摘する。

 同研究所によると、病原体を保有するマダニ数の推移を示すデータはないが、「野生動物の増加に比例してマダニの数も増え、病原体を持ったマダニも増えている可能性がある」(昆虫医科学部)とみる。

 マダニは秋まで活発に活動する。同研究所は「草が生えている場所ややぶに生息しており、ズボンや靴に付着して上ってくる恐れがあると認識することが重要」(昆虫医科学部)と指摘する。

 マダニがいそうな場所に入る際は肌の露出を避けて長袖、長ズボンを着用し、袖口は軍手や長靴の中に入れる。忌避剤の「ディート」や「イカリジン」の成分の入った虫よけスプレーを使用するのも有効だ。また、マダニを対象とする家庭用殺虫剤が市販されている。同研究所は、かまれた場合は医療機関で適切な処置を受けるよう呼び掛ける。(隅内曜子)

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