温暖化適応策 官民連携で具体化急げ

  政府が一定の地球温暖化を前提に、農産物の品質低下などの被害を回避・軽減する「適応策」の推進強化に乗り出している。特に農業では温暖化による影響の地域差が大きい。各地域で対策技術の普及はもちろん、より時間のかかる品種・品目転換などの対策を急ぐ必要がある。農業団体や行政、研究機関が一体となった対策と、その支援策が欠かせない。

 温暖化適応策を巡っては、環境省が推進のための法制化の検討に着手。今夏から農水省など3省が連携し、ブロックごとに産学官の協議会を設立して調査に乗り出す事業も始めた。

 温暖化の影響は数値の面からも明らかだ。日本の年平均気温は、100年当たり1・16度の割合で上昇。ここ10年の1時間当たり50ミリ以上の豪雨の頻度は、1970~80年代に比べ3割増えている。

 農業は温暖化の影響を深刻に受ける。水稲では白未熟粒の発生、果樹では高温多雨による浮き皮の発生や着色不良、家畜では乳量の低下などが現実のものとなっている。対策を怠れば農業経営だけでなく、食料の安定供給にも影響を与えかねない。

 農業分野の品目別の適応策の方向性は既に示されている。反射シートや細霧冷房の導入をはじめ、対策・技術の開発は徐々に進み、普及が進むものもある。一方で、例えばリンゴや温州ミカンの栽培適地は今後移動していくとみられる。地域によっては、より根本的な適応策として品種・品目の転換も求められる。西日本ではかんきつから転換し、アボカドの産地化を進める事例もある。この場合、栽培法の確立や試験、販路の確保など産地の負担は大きい。

 適応策は地域性を踏まえることが重要だ。都道府県の8割超が農業以外も含めた適応策に関わる計画を策定したが、農業分野で具体策に踏み込む例は少ない。今夏始まった3省連携事業は地域ごとの関係者が調査に乗り出す点では意義深いが、全国6ブロックと広域の枠組みだ。

 今後、県単位、より現場に近い産地単位での対策の具体化が急がれる。まずは温暖化の影響について、より精度の高い調査と予測が必要になる。農業経営と産地の安定的な発展を考えたときに、対症療法的な技術の普及で対応できるのか、品種や品目転換が必要なのか、分析が必要だ。技術の開発や普及を進めるためには、研究機関との連携が欠かせない。温暖化が逃れられない気候変動である以上、栽培試験やブランド化などで行政の支援も求められる。国はこうした地域ごとの連携やネットワークづくりを支援すべきだ。

 適応策を実践するのは、産地やJAだ。積極的に連携を呼び掛け、温暖化による食料供給や農業経営へのマイナス影響を最小限に食い止める必要がある。組織的な技術普及や産地づくりが実践しやすいJAの特性を生かして、適応策の浸透を進めていきたい。

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