私たちがここにいる不思議

 私たちがここにいる不思議。命はどこから来て、どこへ行くのか。JT生命誌研究館(大阪府)の中村桂子館長は、その問いと向き合ってきた。中村さんの試行と思索の足取りを描いた記録映画「水と風と生きものと」(藤原道夫監督)を見て、その答えがおぼろげながら分かった▼中村さんは、大学で生命科学を志した。DNAの二重らせんに魅せられ、遺伝情報を持つゲノムを研究した。行き着いたのは「生命誌」という壮大な生きものの物語。38億年前の命の滴が、気の遠くなる時を経て今につながる。「だから私たちは38億年の歴史を体の中に持っている」▼いまあるあなたの命は、誰かがつないでくれたバトンのおかげ。氷河期も大陸移動も隕石(いんせき)衝突も乗り越え、命は長い、長い旅をしてきた。あなたもまた、生きとし生ける全ての生きものの「生命誌」を紡ぐ一人▼2学期になって、自ら命を断つ子どもが後を絶たない。中村さんと親交の深い詩人工藤直子さんに「こころ」という詩がある。夕べまで心が砕けるというのは例え話だと思っていた。でも今朝、本当に砕けていた、とつづる▼それでも、ひとつひとつ、かけらを拾う。〈くだけても これはわたしのこころ ていねいに ひろう〉。どうか苦しくても心をつなぎとめ、生きてほしい。

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