7年ぶり 実りの秋へ 米農家 やっと笑顔 福島・避難解除地域

水田を見回る菅野さん。収穫を心待ちにしている(福島県飯舘村で)

 東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う避難区域の設定が解除された福島県内の地域で、米農家が7年ぶりの収穫を心待ちにしている。飯舘村や富岡町の農家は、試験栽培や荒れた農地の復旧作業を地道に続けてきた。11日で事故から6年半。地元のJAふくしま未来、JA福島さくらは地力や収量を高める技術指導などを通じ、営農を再開した農家を支える。地域の努力がもうすぐ実を結ぶ。
 

安全周知こそ 飯舘村


 休耕田の多い飯舘村の一画。40アールの水田で稲がすくすくと育つ。菅野宗夫さん(66)が植えた酒造好適米「夢の香」だ。「出荷できるようになるまで待ったかいがあった。収穫が楽しみ」。菅野さんは期待を膨らませる。

 同村は3月末、避難区域の設定が解除された。菅野さんは3年前から3アールで実証栽培をしてきたが、ようやく本格栽培に移った。作付再開準備区域から、出荷を前提とする全量生産出荷管理区域に変更されたためだ。

 事故後、伊達市への避難を余儀なくされた。営農再開を諦めず、2012年には避難先から村に通い、米の試験栽培を開始。収穫した米はこれまで、行政の検査で一度も放射性物質の数値が基準値を超えていない。

 菅野さんは「今後は、現場で確保した安全性をどう理解してもらうかが大事になる」と強調する。試験栽培の段階から、村内外の有志や大学の研究者でつくるNPO法人ふくしま再生の会と協力し土壌や米を検査、結果を公表してきた。今後も情報発信を続ける考えだ。

 村内では、菅野さんを含めて8人が8・2ヘクタールで米作りを再開。JAふくしま未来は、飯舘営農センターを通じ、村内農家の営農を支援する。

 除染後の客土で地力が落ちた農地での施肥、放射性物質を作物に吸収させないための塩化カリウム施用などを指導する。JAは「来年はさらに多くの農家が作付けを始める。乾燥調製施設も整備し、全面的に支える」(同センター)と話す。
 

復活への一歩 富岡町


 「ようやくお天道様が戻ってきた。再開して最初の年。しっかり収量を取りたい」。7年ぶりに富岡町で米を作る渡辺伸さん(57)。日差しに照らされる稲穂を見て笑顔を浮かべた。60アールで県オリジナル品種「天のつぶ」を栽培。9月下旬の収穫を予定する。

 原発事故後、いわき市に避難。建設会社に勤めたが、営農再開を目指して16年度に退社し準備を始めた。水田は背丈以上の雑草に覆われ、除染時に掘り起こされた石が転がっていた。それらを取り除く作業を半年以上続け、再開にこぎ着けた。

 町内は4月に避難区域の設定が解除されたが、水稲の作付再開準備区域に指定。放射性物質の吸収抑制対策や収穫時期、乾燥・調製場所の記入などの必要事項を行った上で、行政の検査で安全性が証明されれば出荷できる。「今は再開への一歩を踏み出したところ。焦らず、できることをやる」と渡辺さんは話す。

 町内で今年、米の作付けを再開した農家は渡辺さんを含め3人。JA福島さくらは、ふたば地区本部を通じ「天のつぶ」を推奨。2人が合計90アールで同品種を作付けした。

 JAは「除染と客土によって地力が低下している中、施肥の指導と併せて品種特性を生かし、収量を確保していく」(同本部)と話す。(鈴木琢真) 

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