渡辺 達生さん(カメラマン) ハワイの体験全て新鮮 ホタテ料理で貝殻ビキニ

渡辺達生さん

 970年代の半ばに、新しく創刊された『GORO』という雑誌で、女性タレントのグラビアを撮り始めたんです。僕が25、26歳の時です。

 その前まではロケといっても国内だったのに、『GORO』ではハワイに行くんですね。

 固定相場制から変動相場制に変わったばかりで、1ドルが300円くらい。通貨の海外持ち出し制限がまだあったか、ようやくなくなったか、というような時代です。精算を担当する編集者は大変だったと思いますよ。クレジットカードなんてなかったし。

 ハワイで見るもの聞くもの、全部新鮮でした。

 食べ物でいうとね、ホテルで朝に食べるエッグベネディクトにびっくり。それまで、そんな料理があるなんて知りませんでしたから。帝国ホテルやニューオータニに行けばあったかもしれませんけど、僕らなんか行かないじゃないですか。

 マフィンの上に、ポーチドエッグとオランデーズソースがのって、ポテトとカリカリのベーコンがついてくる。このカリカリベーコンというのも、ハワイで初めて食べたんです。

 朝食はまず、パパイアを食べるんです。それからオレンジジュースを飲んでエッグベネディクトを食べ、最後にコーヒーを飲んでロケに向かう。

 最初のうちは、編集者も僕もびっくりだらけでしたけど、だんだん慣れてきます。それに対して海外は初めてというタレントは、やっぱりびっくりするわけですよ。僕たちはこんなの当たり前だよ、という感じで振る舞うから、「このおじさんたちはすごい」と思う(笑)。

 当時、『GORO』はものすごく売れていたので、それに出るのが最終目標というタレントもいたくらいです。憧れの雑誌でハワイに来たら、見るものがみんな新鮮。それで彼女たちは頑張ろうと思い、おかげでいい写真が撮れました。

 1回ハワイに行くと、何号か分を一気に撮るんです。スタッフは残り、タレントだけ交代でやって来ることも多かったです。

 だから白状しますが、スタッフのスケジュールはびっしり詰まっていたわけではありません。ゴルフの時間をしっかり入れていました。朝6時くらいにスタートして、3ラウンドしたこともあります。おかげでうまくなりましたね(笑)。

 お昼は、スパム(ソーセージの材料を型に詰め込んだもの)のおにぎり。火を通ししょうゆで味付けしたスパムをご飯にのっけて、のりを巻いているんです。

 僕は、ハワイに120回くらい行ってるんです。だんだん新鮮味がなくなるんですよね。もちろん慣れたからですけど、日本が経済成長したという点も大きいんです。ハワイが初めてというタレントさんも、僕が初めてハワイに行った時と比べてあまり驚かなくなった。以前なら非日常だと驚いたことが、日常になっていくんです。

 夕飯は毎晩、打ち上げと称して、みんなで食べます。それもだんだん和食の比率が高くなっていくんですよ。

 田久美子さんがね、打ち上げの席で言い出したんですよ。明日の撮影では、貝殻でビキニを作って、それを着てみたいと。ちょうどホタテ料理を食べていたら、そんなことを思い付いたって。最初は何を言ってるんだと思ったんですけど、助手に作らせてみました。土産物屋で貝殻を買ってきて、ドリルで穴を開けてひもを通して。

 その写真集は大ヒットしました。彼女のアイデアの勝利です。その意味で、とても印象に残る食事になりました(笑)。(聞き手・写真 菊地武顕)

 <プロフィル> わたなべ・たつお 
 
 1949年、山梨県生まれ。成蹊大学在学中から「週刊サンケイ」で働く。雑誌、広告、CDジャケット撮影などで活躍。女優関連の写真集は200冊以上も手掛けてきた。現在は「寿影」(明るい遺影)の撮影を「六本木スペース〝ビリオン〟」「小学館サライ写真館」の2カ所で実施中。

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