営農再開その日まで 太陽光パネル+下で牧草栽培 農地を保全し 収入確保 福島 取り組み広がる

太陽光発電パネルの下で牧草を刈り取る小林社長(福島県飯舘村で)

 東京電力福島第1原子力発電所事故で農業を断念せざるを得なかった福島県飯舘村の畜産農家らが、太陽光発電と牧草栽培を組み合わせる「ソーラーシェアリング」を導入、営農再開に向けた取り組みが軌道に乗り始めた。事故から6年半。牧草の安全性が確認されれば牛に給与できるようになり、事業が本格的に動きだす。牧草生産の面積は広がっており、農地保全と売電による農家の副収入源の確保を足掛かりに、営農再開を加速させたい考えだ。
 

黒字目前、帰村促す 飯舘電力


 同村では原発事故前、繁殖と肥育、酪農合わせて畜産農家が237戸いたが、営農を再開しているのは2戸にとどまる。

 村内の基幹産業だった和牛の繁殖・肥育の復活を目指し、2014年度に村内農家ら4人が「飯舘電力株式会社」を設立。発電パネルを農地に設置し、売電と併せてパネル下で牧草を栽培する太陽光発電事業を始めた。

 原発事故後、除染は済んでいるが避難指示によって営農が再開できなかったため、遊休状態となっていた農地を活用。現在は2・5ヘクタールにパネルを設置し牧草を栽培、農地として保全してきた。今後はさらに村内の農地を集め、地元農家には売電収入から地代を払い還元していく方針だ。

 繁殖・肥育農家で同社社長の小林稔さん(65)は、今年3月に避難指示が解除されたことを受け6月に家を新築。今月は牛舎の建築を始める。牧草を年内に刈り取り、放射性物質の検査で安全性が確認されれば給与が可能となる。年末までに牛4頭を導入し、将来は営農を再開する農家への牧草提供も視野に入れる。

 現時点の売電収入は年間5000万円前後。49・5キロワットの発電施設25カ所を稼働しているが、設備投資の費用や人件費などを差し引くと利益はほとんど出ていない。18年度は面積を2倍の5ヘクタールに広げる予定で、施設数も50カ所に増やし黒字に転換できる見込みだ。

 小林社長は「太陽光発電によって農地を保全してきた。避難解除によって、やっと新しい段階に進める。地域の畜産復活と新たな収入源を生み出し、帰村を促すきっかけにしたい」と展望する。
 

売電と併せて


 ソーラーシェアリングは、恒久的な農地転用ではなく一時転用という形で許可を得て、パネルの下で作物を生産する仕組み。13年度から導入され、全国で広がっている。太陽光発電設備のうちパネルを支える支柱の設置部分だけが、農地一時転用の対象面積となる。

 福島県のソーラーシェアリングによる一時転用面積は13年度に2件(発電設備下部の営農面積で48アール)だったが、14年度に6件(同33・4アール)、15年度に22件(同3ヘクタール)、16年度に21件(同5・1ヘクタール)と増加傾向にある。同県沿岸部の浜通り地区では東日本大震災によって営農が中断した後、除染された農地などで営農を再開する動きが広がる中、県は「浜通りを中心に増えている」(農業担い手課)と分析する。

 農水省によると、営農型発電の設備を設置するための農地転用許可実績は13年度に97件、14年度は304件、15年度には374件に上った。この3年間で営農面積も増加し、15年度は72ヘクタールとなった。

 営農と発電の両立を目指す取り組みとして、ブルーベリーやトウモロコシ、大豆、サツマイモ、きのこ栽培などの事例がある。(鈴木琢真)

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