秋来ぬと目にはさやかに見えねども

 〈秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる〉晩夏から初秋の変わり目を平安の歌人藤原敏行はこう詠んだ▼北のミサイルが通過した空を見上げると、思いの外、天は高い。やはり秋の空である。黄金色の稲が頭を垂れ、梨やリンゴ、柿が熟れる。雪国育ちで一番好きな季節は春だったが、このごろ秋の魅力に取りつかれている▼花をめでるのがいい。「秋の七草」は、奈良時代の歌人山上憶良が万葉集で選定した。〈秋の野に咲きたる花を 指(および)折りかき数ふれば七種の花/萩(はぎ)の花尾花葛(くず)花撫子( なでしこ )の花 女郎花( おみなえし )また藤袴(ふじばかま)朝貌(あさがお)の花〉。澄んだ青紫のキキョウが目に染み、真っ赤に群生するヒガンバナが群青の空に映える。そろそろ香りだすキンモクセイは黄色い花をつけ始めた▼秋は思索の時でもある。中国・北宋時代の欧陽脩(おうようしゅう)は、アイデアがひらめく場所を「三上(さんじょう)」と言った。馬に乗っている時の馬上、布団に横になっている時の枕上(ちんじょう)、トイレにいる時の厠上(しじょう)である。当方は通勤電車の中でのひらめきが多い。忘れないようメモ用紙を用意して、その時に備える▼夜には虫たちの鳴き声に耳を澄ます。マツムシやコオロギ、スズムシが鳴き通す。「小さい秋」がどんどん大きくなって深まる。非常に強い台風18号が接近している。ご用心を。

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