イチゴ 海外流出防げ 中韓台で登録急ぐ 静岡県「きらぴ香」

静岡県が育成した「きらぴ香」(同県農林技術研究所提供)

「きらぴ香」と「紅ほっぺ」を生産する青木さんも、海外での品種保護を歓迎する(静岡県焼津市で)

「紅ほっぺ」無断生産 苦い経験 二度と・・・


 静岡県は国内で今年品種登録した県産イチゴ品種「きらぴ香」を、中国、韓国、台湾でも品種登録しようと動き始めた。既存品種「紅ほっぺ」が中国などで無断で生産され輸出までされた苦い経験を踏まえて、手続きを急ぐ。農研機構や三重県などが育成した種子繁殖のイチゴ「よつぼし」では、民間企業と連携して海外での品種保護に向けた取り組みを進めている。

 「きらぴ香」は、静岡県が17年かけて育成した新品種。県は主力品種の一つに据えて生産を拡大する方針だ。イチゴ生産量で全国4位の産地の未来を担う品種と位置付ける。

 海外での品種登録を急ぐ背景には、同県のイチゴ「紅ほっぺ」が中国などで大規模栽培され、海外各国へ輸出されている現状がある。中国陝西省の5ヘクタールでイチゴの大規模施設栽培を持ち、30カ国に生産物と加工品を輸出する農業企業は「生産する品種の8割が『紅ほっぺ』。今後も日本の人気品種を増やしたい」と言う。

 「紅ほっぺ」は海外で品種登録されていないため国外での栽培や輸出は違法にならず、静岡県は無力さを痛感してきた。

 同県農林技術研究所は「『きらぴ香』はブランド確立を念頭に置いた品種。今度こそ海外で無断栽培されないように守る」と決意を固くする。

 焼津市のイチゴ農家、青木淳一さん(35)は「最近、無断増殖のことを耳にすることが多く、気になっていた。対策を徹底し品種を守ってもらえることは、生産者としてありがたい」と話す。

 14年前に「あまおう」を中国で商標登録した福岡県は「長年の努力により開発した遺伝資源は徹底した保護が重要」(農林水産政策課)と強調する。
 

「よつぼし」 企業と連携流通を限定 


 種から育てるイチゴ「よつぼし」では、育成した三重、香川、千葉県と農研機構の4機関が、民間企業と連携した品種保護を進めている。

 品種登録や無断利用防止にかかる費用を企業が負担する代わりに、相手国で独占して種苗を販売する権利を認める。日本への影響がないよう、果実の流通は相手国内に限定する。公募で選んだサカタのタネとミヨシの2社が、それぞれ担当する国で品種登録へと動いている。
 

保護が急務 国も支援 経費を補助


 農水省は、日本の品種が海外で無断で栽培されたり、果実が輸出されたりすることで日本の輸出機会が奪われるとして、16年度から海外での品種登録の出願を支援してきた。18年度予算案でも4億3400万円を概算要求し、品種登録の出願経費の補助などを続ける。

 農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)は「度重なるブランド品種の海外流出で、行政機関の保護意識が高まった」とみている。

 農水省知的財産課は「海外で品種登録すれば不当な栽培をされたときに取り締まれる。ブランド農産物の価値を守るために、海外での品種登録をすべきだ」と勧める。(齋藤花、吉本理子)

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