ボランティア再起のばねに 農家の励み 途切れぬ支援活動 九州北部豪雨3カ月―被災地は今

ハウスから土砂をかき出す作業に励むボランティアの学生ら(福岡県朝倉市で)

 福岡、大分などを襲った九州北部豪雨の発生から5日で3カ月。被害の大きかった福岡県朝倉市や東峰村では、公的な復旧工事を待つ間にも農地の荒廃が進む恐れがあり、ボランティアやJA職員が被災農家の復旧作業を懸命に支えている。水田や果樹園をのみ込んだ土砂や流木を除去しようにも重機が入れない、人手が足りないなどで本格的な復旧には程遠いが、農家からは「再起のばねになる」との声が相次ぐ。
 

稲刈り応援 東峰村


 米の収穫期を迎えた東峰村。同村出身の若者などでつくる有志グループ「稲刈り緊急支援プロジェクト」は、9月中旬から手作業で稲刈りを始めた。被災してコンバインなど機械が使えない農家の収穫を手伝う。

 標高500メートルほどの中山間地、小石原地区で米を栽培する西徹さん(60)は「米は駄目だと思っていた」とつぶやく。12アールの水田には、40センチほどの土砂が流れ込んだ。例年に比べ茎は細く、稲穂の実入りも少ない。田んぼの半分以上を砂が覆ったままだ。当日駆け付けたボランティアは16人。「幼い頃は手刈りが普通だったよ。任せてくれ」との声も上がり、2時間で作業を終えた。

 西さんは「収穫を手伝ってもらうのは甘えている気もしたが、一人ではできなかった。ありがたい」と声を震わせる。

 24件の依頼のうち17件で作業を終え、既に県内外から延べ150人が参加した。事務局の柳瀬弘光さん(36)は「参加者も農家との交流が消費行動を考えるきっかけになり、双方にメリットがある」と話す。
 

土砂を除去 朝倉市


 熊本地震を機に発足した学生団体「シーディング サポート オブ ジャパン」も、豪雨直後から被災農家の支援を手伝う。長崎国際大学や佐賀大学の学生が参加。レンタカーで月に何度も足を運び、朝倉市の柿園などで土砂をかき出す。

 果樹園の土砂を放置すると木が呼吸ができず、最悪の場合は枯れる恐れもある。普及員と農家を訪問して被害状況を共有しながら、農家の再起をサポートする。

 学生と農家をつなぐ窓口役の柿農家、本園拓也さん(31)は「学生が来てくれて農家は喜んでいる」と、若者の力を実感する。代表を務める長崎国際大の石田勇以さん(21)は「(被災地では)農業だけが取り残されている気がする。農業は農家の生活そのもの。災害時に農業ボランティアが軽視される状況を変えたい」と語気を強める。

 地元のJA筑前あさくらも、職員総出で園地復旧支援を続けている。3カ月が経過して、家屋の泥かきや後片付けは徐々に進むが、土砂が残った田畑や果樹園が目立つ。

 

未曾有の被害活動に助成も


 農業被害額は、少なくとも福岡県が390億円、大分県は60億円に上る。最も被害が大きい朝倉市は、農地や農道の被害件数が2100件超。5年前の豪雨の2倍に達するが、市は「職員不足で、復旧費の公的補助に必要な査定が全体の半分しか進んでいない」と苦しい実情を明かす。

 福岡県は今月から、被災地で農林漁業の復旧に取り組むボランティア団体の支援に乗り出す。これまでは任意団体に頼っており、自治体が支援するのは初めて。活動支援の範囲は、被害が大きかった朝倉市と東峰村、添田町。支援団体は公募し、研修や1団体50万円を上限に、作業に使う機材を助成する。

 被災地の農業支援・農地等復旧ボランティア支援について研究する九州大学の朝廣和夫准教授は「農地は農家の生活の場であり、景観や防災機能の役目もある。農業ボランティアが定着する仕組み作りが必要」と話す。
 

それでも「離農」2割 日田市が意向調査


 大分県日田市は、被害が大きかった小野、大鶴・夜明、東有田地区の被災者を対象に、営農再開の意向などを尋ねるアンケートを実施した。農地復旧にかかる費用負担などを理由に「農業をやめる」と答えた人が2割を占めた。市は支援要望や課題を洗い出し、来年1月に復旧・復興計画を策定する方針だ。

 被害状況や生活再建に向けた要望などについて聞き、9月までに233人から回答を得た。

 農家に今後の意向を尋ねたところ、「農地を元の状態に戻し、継続する」との回答は50%にとどまり、「やめる(やめようと考えている)」は21%に達した。経営継続を断念する理由は「農地の復旧の資金がない」「高齢で後継者がいない」が多くを占めた。

 「現在利用できる農地だけで継続したい」とした人も25%いた。営農再開の意向があっても、費用面で積極的な復旧を望めない状況とみられる。

 市は「高齢農家が多いことが影響した」(地方創生推進課)と分析。今月中旬にも、地区ごとに住民らでつくる対策委員会を設けて現場の声を吸い上げ、復旧・復興計画に反映する方針だ。(木原涼子)

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは