気候変動と農業 安定生産への対応急げ

 「ゲリラ豪雨」という言葉を聞かなくなった。地球温暖化で異常気象が常態化し、豪雨もゲリラでなくなったようだ。気候変動の影響をじかに受けるのが農業である。食料安全保障の観点からも対応は喫緊の課題だ。農業生産が停滞しないよう、温暖化対応や災害に強い技術が求められている。

 九州の梨で発生している凍害が、秋の気温の高さが原因であることを農研機構が突き止めた。寒さに慣れないまま冬を迎えて凍害が起こりやすくなる。暖かくなれば寒害は減ると考えられていたが、地球規模の気候変動は回りまわって、想定外の影響を生産現場に及ぼしていることを改めて認識させられる。

 2008年の新語・流行語大賞に選ばれた「ゲリラ豪雨」も一昔前の言葉になった感がある。代わって、よく聞くようになったのが「数十年に一度の大雨」。1時間雨量が100ミリを超える大雨が全国で頻発する。今夏は梅雨が明けた後も冠水被害のニュースが絶えなかった。

 今年、日本列島を襲った二つの台風による農林水産業の被害額は約1300億円を超えた。16年も台風による被害額は約1650億円と大きかった。被害を受けた地域に震災など自然災害から復興途上の産地が多いことを考えれば、食料の生産力は弱体化している可能性が高い。

 気候変動に備える対策として高温耐性の高い水稲品種の育成や、かん水技術の向上、暑熱対策などが研究されている。水稲の高温耐性品種は16年産で9万ヘクタール超で生産されるなど成果の浸透も進む。冷暖房機能があるヒートポンプを設置するハウスも増えている。

 農水省は、18年度に研究成果の農業現場への普及を加速させるための事業を始める。コンサルタントなどの民間事業者が研究機関と産地を結び、必要な成果を素早く普及させる仕組みを整える。併せて、産地が抱えている課題に対応する技術や品種の開発をスピード感を持って取り組む方針だ。

 50年、100年の単位で農業を考えるのであれば、長期的な対策に向けた研究の種も育てる必要がある。21世紀末には世界人口が110億人を超える推計値も出ている。温暖化が進めば水が枯渇すると予測される。増える胃袋とすり減る農業資産に対応する科学技術が求められる時代が来ている。目の前に迫る気象災害などに対抗できる生産力と、中・長期的に安定した食生産の実現。二つを両立させることは日本のみならず世界全体に大きな利益をもたらす。

 スイスでは「食料安全保障の大切さ」を盛り込んだ憲法修正案を国民投票にかけたところ、8割が賛成したという。同じ憲法改正を論じるにしてもうらやましい。迫る危機に国は国民を安心させる材料を示す責務がある。同時に、国を維持するための基礎をつくり、次の世代のためにも次の一手を準備することが求められている。

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