[達人列伝 24] 干しシイタケ 大分県豊後大野市・首藤岩光さん 適期逃さぬ観察眼 高みへ努力を いつも高品質

ほだ場を見回る首藤さん。今年も品評会での上位入賞を目指し生産に打ち込む(大分県豊後大野市で)

 大分県豊後大野市のシイタケ農家、首藤岩光さん(66)は「香信の仏」の異名を持つ。干しシイタケの中で最も外観の美しさが問われる「香信」。「良いものができるかは運次第」といわれるほど、高品質に仕上げるのは難しいとされる干しシイタケだ。だが、首藤さんは最高級の品を絶えず作り続ける。「首藤さんを拝めばいいものできる」。他の生産者が“信仰”するほどの腕前だ。

 香信はかさが8、9割開いたシイタケを取って乾燥させたもので、一般的な「どんこ」に比べると身が薄いのが特徴。味が染みやすいことから、幅広い料理で重宝される食材だ。その良しあしを分けるのが、かさの裏に生える「ひだ」の出来栄え。幅1ミリ未満のひだはもろく、加工の過程で簡単に傷んでしまう。だが首藤さんの香信のひだは崩れることなく、均一に並んでいる。

 首藤さんは約40年、香信だけにこだわって生産してきた。品質の良い原料シイタケを得るため、人工ほだ場とハウスをいち早く取り入れた。ただ、他の生産者と比べ施設が特段充実しているわけではない。逸品を作り上げる秘訣は、足しげくほだ場へ通う情熱にある。

 シイタケが香信に向く生育状況になるのは、栽培期間のうち、わずか数時間しかない。収穫適期を見逃さないためには、ひたすら観察するしかない。首藤さんは毎日、朝、昼、夕とシイタケを1本ずつ確認するのを欠かさない。シイタケのかさの開き具合から、何時間後に取ればいいかを正確に計算する。自宅はほだ場から数100メートルの距離だが、たった1本のシイタケを収穫するために、首藤さんは深夜にほだ場に向かうことも珍しくない。

 全国でも主力産地の大分でも、首藤さんの腕前は群を抜く。全国乾椎茸品評会では最高位の農水大臣賞に3度輝いた。次点の林野庁長官賞は8回受賞。大分県椎茸農協は「香信でこれほど安定して高品質なものを作れる生産者は他にいない」と称賛する。それでも本人は、さらに高みを目指して努力を続ける。「満足いく香信は、まだ年に2、3個しかできない」。仏が目指す境地は、果てしなく遠い。(金子祥也)
 

経営メモ


60アールのほだ場でシイタケを栽培して、干しシイタケに加工する。全国乾椎茸品評会で2004年、12年、17年に香信で農水大臣賞を受賞した。
 

私のこだわり


 「1枚のシイタケを収穫するためだけにほだ場に足を向ける。いいものを作るためには手間を惜しまない」

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