〈HOKUSAI〉の名は海外でも広く知られる

 〈HOKUSAI〉の名は海外でも広く知られる。描いたのは日本の美そのもの。転居を重ね遠路を往来した“風の男”でもあった▼テレビで浮世絵師・葛飾北斎の特番が相次ぐ。8月まで大英博物館で日本人画家としては22年ぶりの大規模な展覧会。欧州に再び〈HOKUSAI〉ブームを起こし、作品群が今、そのまま日本に里帰り。下旬には東京・上野の国立西洋美術館で影響を受けた印象派を併せた『北斎とジャポニスム』も▼数え90で逝く。100歳になれば本当の絵描きになると死の直前まで絵筆を離さなかった。「100歳長寿社会」が話題となっているが、長生きをした北斎は江戸時代に既にその年を念頭に置いていた。再来年は没後170年。〈HOKUSAI〉人気は国内外で続く▼同じ江戸時代の絵師で、細密な花鳥画で世界を驚かしたのは伊藤若(じゃく)冲(ちゅう)。昨年の生誕300年記念展には多くの人が訪れた。若冲が一芸に秀でた天才絵師なら、北斎は森羅万象を描く多芸の人である。「北斎漫画」は今に通じるアニメの元祖で、題材の虫やカエルはエミール・ガレのガラス工芸に結晶した▼最晩年に通った信州・小布施にある辞世の句。〈人魂で行く気散じや夏野原〉。気晴らしに草原を渡る“風の男”の〈魂〉は、今も日本の美を届け続ける。

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