[2017衆院選][争点を追う 3] 農協改革 政府急進論に危機感

JA事業などについて話をする加藤さん(右)とTACの茂木さん(福島市で)

福島 現場自主性 尊重を


 販売単価を2%上げて生産量を拡大し、コストを5%下げることで、農家の所得を10%増やす――。福島県・JAふくしま未来の「みらいろ!テン」運動の目標だ。2016年3月に4JA合併で誕生して以降、自己改革の柱として取り組む。

 年間4億円の独自助成で、ハウス導入をはじめ農家の生産拡大を支援。桃や米の直接販売、直売所での販売強化などと併せ、16年度の販売高は前年比3%増の278億円となった。合併による規模メリットで、コスト削減でも成果を出す。果樹や野菜8品目で独自肥料を開発し、価格を平均で15%引き下げ。出荷用段ボールも5品目で統一し、値下げした。

 全国のJAには、政府の規制改革推進会議を発端とした急進的な農協改革への危機感がある。

 JAの菅野孝志組合長は「改革は政府に言われたからではなく、組合員の声を聞いて自ら行うものだ」と自主性の尊重を訴える。その“窓口”となる地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)を増員し、常勤役員による担い手訪問も今年始めた。

 10月上旬。福島市で桃やリンゴなど3ヘクタールを経営する加藤武夫さん(69)をJAのTAC・茂木美江さんが営農情報の提供に訪れた。「以前より職員が来る回数が増えた。良くなっていると思うよ」(加藤さん)。

 「農協改革」を断行してきた安倍政権。2019年5月に「農協改革集中推進期間」、21年3月には改正農協法による改革の実施状況の調査期間が終わり、衆院選で当選する議員の任期(21年10月)内に大きな区切りを迎える。成果を示さなければ、一層の急進的な改革を迫られるとの危機感を抱えつつ、JAは農家所得増大に向けた自己改革を進める。

 JAグループは、19年4月に全国1000万人超の正・准組合員全てにアンケートを実施。高評価の獲得を目標に、改革を加速する狙いだ。
 

埼玉 総合事業が不可欠 
 

 農家所得の向上に不可欠なJAの営農指導。その費用は、准組合員の利用を含めた信用・共済事業の利益で賄うJAが多い。しかし、規制改革推進会議は、信用事業の代理店化や准組合員の事業利用規制を提起した。

 「農家所得向上の観点からしても、現場の実態を踏まえていない意見ではないか」。埼玉県・JA埼玉中央の高橋利治営農部長はこう指摘する。

 同JAは16年度から3カ年の自己改革の工程表で、農家所得を年間5%増やすと示した。水稲の低コスト技術の普及に加えて、業務・加工用野菜の生産を拡大。キャベツやニンジンなどで14年度の計1ヘクタールから17年度は6・6ヘクタールまで増やした。

 要となるのが、農家に出向く体制だ。16年4月にJA版の担い手サポートセンターを設置し、TACを6人に倍増。正組合員1万3000戸のうち2000戸を担い手と位置付け、年間延べ4300回の訪問を重ねた。

 だが、人件費を含む営農指導事業の費用は「農家からもらう販売手数料だけでは賄えない」(高橋部長)。JAグループは准組合員を「農業振興の応援団」と位置付ける。JAの総合事業の継続が農家所得の向上につながるとの考えだ。

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