もやし ようやく値上げの動き 報道、ネット 窮状伝える 消費者が「支持」

もやしが並ぶ青果物コーナー。主力商材として目立つよう陳列されている(31日、東京都板橋区で)

業界の窮状を訴える工業組合もやし生産者協会のホームページ

 もやしの価格低迷と原料高騰で生産者が採算悪化にあえぐ中、一部のスーパーで値上げの動きが出始めた。報道やインターネットを通じて消費者の理解が広がったことを背景に、卸値と店頭価格とも値上げした形だ。ただ、目玉商材であるもやしは、その価格が「消費者が店全体の値頃感を判断する指標にもなる」(流通関係者)一面もある。過度な安売りは後を絶たず、生産、流通、消費の誰もが納得する適正価格が求められている。
 

大手スーパーなど次々


 もやし業界は、原料とする輸入緑豆の価格が高騰する一方、“安売り商材”として販売価格が低迷して採算悪化が続いている。3月、「工業組合もやし生産者協会」が窮状を訴える文書を発表すると、各社が一斉に報道。実態を知った消費者から「値上げ支持」の声が上がり、一部の生産者は小売り側と卸値の値段交渉を進めてきた。

 埼玉県を拠点とするスーパー「ヤオコー」(川越市)は9月から、1袋(200グラム)を19円から27円に値上げした。首都圏などで数百店舗を運営する大手スーパーも9月から30%値上げした。両社とも、生産者の実態を踏まえて卸値と店頭価格を上げた。

 この大手スーパーは、店頭掲示で原料豆の価格が上がっている状況を説明した上で、値上げに踏み切った。現時点で売れ行きには影響はなく、消費者からも特に目立った反応はないという。「元々の価格が安かったことから、値上げしてもそれほど大きな影響はなかった」(仕入れ担当者)としている。

 値上げをしたあるスーパーは「取引先の生産者との信頼関係も大事。原料の高騰や生産費が上がれば、店頭価格に転嫁していかなければならない」と理解を示す。

 同協会の林正二理事長は値上げの動きについて「窮状を訴えた文書に対するネット上の消費者の反響が追い風になったのではないか」とみる。

 ただ、スーパー側は他店との競争もあり、簡単に売価を上げられない事情がある。

 東日本で数十店舗を展開する別のスーパーのバイヤーによると、もやしの価格は競合店の動向を見ながら地域ごとに決めている。「もやしは青果の中でも販売量1、2位を争う品目で、客にとって価格の指標になりやすい。簡単には値上げに踏み切れない」と明かす。

 9月には愛知県内のスーパー2社が、もやしやキャベツ、ダイコン、ホウレンソウなどの野菜を1円で継続的に安売りした不当廉売の恐れがあるとして、独占禁止法に基づく行政指導を受けた。不当な安売りで集客した2社は販売量を大幅に伸ばした一方、近隣の他店は客数と売り上げを大きく減少したとの内容だ。
 

全市場価格に影響する恐れ


 もやしに限らず青果物・生鮮食品全般で集客のために卸値を下回る価格での販売が続けば、消費者にとってはその価格が定着し、市場価格全体に影響が及ぶ恐れがある。
 

納得する価格模索を


 青果物の販売事情に詳しい流通ウォッチャーの代田実氏は「もやしは価格競争にさらされやすい商材」と指摘する。消費者の購入頻度が高く、多くは1袋200グラムの同規格で販売され、他店と比較されやすいという。また「2割引き」の特売をしても1袋30円のもやしは6円引きで済み、経営への影響を抑えつつ安売りアピールができることも要因だという。

 代田氏は、生産者が経営を続けられる青果物価格の在り方について「生産者が取引相手に適正な価格の根拠を示すことが重要」と指摘する。それにより「生産者、小売業者、消費者の誰もが納得する価格を模索していくべきだ」と話す。(猪塚麻紀子)

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