日米首脳会談 FTA 依然予断許さず

 安倍晋三首相と来日中のトランプ米国大統領との6日の首脳会談で、日米間の通商問題は当面、これまでの経済対話の枠組みで協議を続ける方向で収まった。これで一安心とはいかず、逆に対日圧力が強まる恐れがある。日米同盟を重視するあまり、政府が理不尽な圧力に屈することがあってはならない。

 ゴルフ外交、4度にわたる昼・夕食会、実娘イバンカ大統領補佐官へのもてなしなど、安倍首相直々の手厚い待遇が目立ったトランプ大統領の来日だった。そのかいあってか、同氏は安倍首相との絆に感謝し、拉致被害者と面会するなど日本重視の姿勢で応えた。通商問題でも日米自由貿易協定(FTA)への直接的な言及がなかったとされる。

 最大の懸案である北朝鮮の核・ミサイル開発問題では、日米の揺るぎない同盟関係を演出しつつ、日米が主導して最大限の圧力をかける方針で一致した。北朝鮮と近い中国への働き掛けを今後も続けるとした。こうした日米の結束は評価できる半面、「戦略的忍耐の時代は終わった」とし、武力攻撃の可能性を排除しないトランプ氏に無条件で寄り添う安倍首相の姿勢には危うさも感じられる。

 経済・貿易問題では、中国を念頭に、インド太平洋戦略の推進で合意した。麻生太郎副総理とペンス副大統領による経済対話の枠組みを継続し、投資や貿易の拡大策を詰める。日本側のシナリオが通ったかに見えるが、日米貿易不均衡に強い不満を表明したトランプ氏の発言は国内に波紋を広げそうだ。

 同氏は首脳会談に先立つ日米経済人との会合で「日本との間に年700億ドルもの貿易赤字を抱えている。対日貿易は公正ではなく、開かれてもいない」と攻撃した。「貿易協定で日米は公正な合意が速やかに達成できる。私は楽観的だ」とも語った。日米FTAへの階段を一歩上ったとみることもでき、今回の首脳会談で回避できたと判断するのは皮相的である。

 米国の2016年の対日貿易赤字額は689億ドル(約7・7兆円)に上る。飛び抜けて大きい中国に次いで日本は2番目で、対米輸出の大半は自動車と関連部品が占める。嫌がる韓国を米韓FTAの見直し交渉に引きずり込んだように、トランプ政権が日米FTAの牙をいつむくか分からない。経済対話で重視すべきは、貿易不均衡の直接の原因である自動車をはじめとする工業分野の市場開放だろう。尻拭い的に農業市場を差し出すことは許されない。巨額の貿易赤字の解消にはならない。

 今回は焦点にならなかったが、米国産冷凍牛肉の緊急輸入制限措置(セーフガード)問題も、今後の経済対話に委ねられる。経済交渉は表でどのように語られたかより、何が語られなかったかも重要だ。政府は米国の独善的な日米FTA交渉入り要求を毅然と拒否しなければならない。

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