[未来この手で ノーベルの国から 7] 対等なパートナー 共に考え 道切り開く

従業員のインムリックさん(左)の意見を尊重するラッシュさん。対等なパートナーだ(スウェーデン・エークレ島で)

 スウェーデン・ストックホルム。中心部からバスで2時間、橋を渡るとエークレ島にある農園「ローゼンヒル」に着く。毎日、都会の若者でにぎわう。おしゃれなカフェに、リンゴを中心とした果樹や花、野菜の8ヘクタールの園地とジュース加工場を併設する。その場で飲める濃厚なジュースも人気の理由だ。20人のスタッフの平均年齢は25歳。カフェでも畑でも、若者の元気な声が響く。
 

アイデア採用にぎわう農園


 「経営成功の秘訣は、若い人を信じることだよ。若者は体力もエネルギーも情熱もある」と代表のラッシュ・シーリアムさん(58)。経営方針の基本はボトムアップ、話し合いだ。例えば、畑のデザインもカフェのメニューも、若者の議論から生まれたアイデアを採用する。

 園地の管理を任されているのは、従業員のインムリック・ボルファーさん(27)。畑の裁量権を持つ。今夏は50年ぶりの異常冷夏でリンゴの大不作に見舞われたが、インムリックさんの提案で導入した野菜の収入があったので、経営のダメージは抑えられた。インムリックさんは「野菜を一切買わずに、完全な地産地消カフェを実現させたい」と将来を見据える。

 2年前に妻が亡くなり、体力の衰えを感じたラッシュさん。意識的に若者に経営の決定権を託すようにした。すると次第に業績は上向き、自身も若者や客と交流する楽しみを発見した。「若者に指示するではなく、共に考えることが若者の力を引き出す」。これまでの歩みを振り返って、そう実感する。
 

話し合い重視上下関係なく


 スウェーデンでは農業経営者も従業員も男性も女性も大人も若者も、上下関係の概念が薄い。例えば、地方自治体の農林水産部長や福祉部長を新聞広告などで募集し、中途採用する。日本の企業や行政とは大きく異る。

 スウェーデン最大の農業系組織「農業者連盟」(LRF)。農家だけでなく、従業員、農協職員ら農業に関わるさまざまな人が会員になれる。理事会では執行部が用意した方針を追認するのではなく、ワークショップのように活発な意見が飛び交う。

 LRF青年部は、16~35歳の1万6000人がメンバー。ティストベルガ町の農業大学の教師で、大学の農場管理もするサイモン・バンケンさん(26)はLRF青年部副会長を務める。サイモンさんは「年配世代や規模の大きな経営者と意見が異なっても臆することは決してない」と言い切る。

 LRFでは経営規模や売り上げ、肩書、年齢は発言の重みに関係がない。ボトムアップで多様性を認め合いながら議論し結論を出す文化の中で、若者の提案が排除されることはない。

 「若い世代のアイデアを取り入れることが、新しい農業への道を開くはず」。サイモンさんは確信する。

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