農業は修正せず 大詰め交渉 大筋合意を優先 TPP11 政府方針

 離脱した米国を除く加盟11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)の交渉で、農業分野の課題となっている乳製品の低関税輸入枠や牛肉の緊急輸入制限措置(セーフガード)の発動基準などの取り扱いを巡る日本政府の対応方針が8日、判明した。TPP11の大筋合意を優先し、農業分野の修正は断念。日米の自由貿易協定(FTA)の交渉開始などにより米国のTPP復帰がないことが明確になった時点で各国と再協議する。だが、再協議の確約が取れるのかは不透明で実効性にも疑問符が付く。

 複数の交渉関係者が明らかにした。

 例えば、TPPで日本が各国に合意したバターと脱脂粉乳の低関税輸入枠(生乳換算で計7万トン)は、米国の参加を前提にした数量だ。仮に、日米がFTAを結ぶ場合、米国から追加の輸入枠を求められるのは必至だ。また、豚肉や牛肉のセーフガードは、米国が抜ければ、発動基準が高過ぎて、輸入急増の歯止めにならない恐れが大きい。

 そのため、本来なら離脱した米国の分を差し引く調整が必要となる。農水省は調整を主張していたが、政府としては協定の修正提案をしない方針にかじを切った。各国が修正を主張し始めれば、収集がつかなくなり、TPPそのものが漂流しかねないとの判断からだ。

 今回目指す新たな協定は、あくまで米国がTPPに復帰するまでの暫定的な協定と位置付ける。米国が日本とFTA交渉に入るなど、米国がTPPに復帰する可能性がなくなった場合には、農業分野を含む課題について再協議することを各国と確認したい考えだ。

 ただ、どの時点で米国の復帰がないと判断して再協議を行うことになるのかは不透明。TPP11が先に発効した場合、米国込みの水準が米国不在のまま適用され続ける恐れがある。そもそも各国が自国に都合の悪い再協議に応じ、日本の言い分通りに調整できるかどうかは分からない。

 米国の離脱を受けて11カ国に見合った協定内容に見直す作業を諦めた、合意ありきの対応ともみられかねない。政府には農業関係者への十分な説明が求められる。
 

論点絞り集中議論 閣僚会合開幕


 【ベトナム・ダナン西野拓郎、玉井理美】米国を除くTPP署名11カ国による閣僚会合が8日、当地で始まった。共同議長を務める日本は議論を加速するため、閣僚で決着すべき論点を数項目に絞って提示。各国との個別折衝も重ね、対立が残る論点の解消へ調整を進めた。11カ国は今会合で新協定「TPP11」の大筋合意を目指しており、交渉はヤマ場を迎えた。

 閣僚会合は9日までの2日間。議長国の日本は、TPP11の新協定について、米国復帰まで効力を凍結する項目を十数個に絞り込む方針。既に事務レベルで凍結が決まっている医薬品のデータ保護期間などの項目に加え、閣僚による政治判断で凍結項目を決める。

 同日午前の全体会合で、日本は閣僚間で議論すべき論点を提示。残る課題を全て閣僚で議論すれば議論が収束しないため、数項目に絞って集中的に議論するよう提案した。日本はその後、各国と個別に会談し、要求取り下げや難航する論点を話し合った。茂木敏充TPP担当相は全体会合終了後、記者団に「主要課題は絞り込まれつつある」と議論が前進していることを明らかにした。

 一方、ある交渉筋は「議論は集約に向かっているが、最後にどんでん返しがあるかもしれない」と語る。政権交代したニュージーランドが投資の紛争解決手続きなどで修正を求める可能性が残っている。ベトナムやマレーシアが凍結を要望している繊維や国有企業分野などでの調整も続く。

 日本は閣僚会合で、乳製品の輸入枠の縮小は提案しなかった。米国のTPP復帰がないことが明確になった時点で各国と再協議するとの日本案実現に向け、各国との調整を続けたもようだ。

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは