大筋合意の公算 農業議論は先送りへ TPP11 大詰め交渉

 【ベトナム・ダナン=玉井理美、西野拓郎】環太平洋連携協定(TPP)署名11カ国は9日、2日目の閣僚会合を開き、米国を除く新協定で大筋合意する公算が高まった。焦点の乳製品など日本の農産品の合意内容は修正せず、日米自由貿易協定(FTA)などで米国復帰が見込めなくなった場合に再協議する方向。こうした方針を共同声明などに盛り込む方向で調整している。大筋合意を優先し、農業分野の議論は先送りする公算が高い。再協議となった場合も、米国離脱を踏まえた水準に調整できるか輸出国との厳しい交渉が予想される。

  議長国の日本は午前の閣僚会合で、米国復帰まで効力を凍結する項目について最終決着案を提示。結論が出なかったため、要求取り下げや歩み寄りなどの折衝を進めた上で、午後に議論を再開した。ベトナムの繊維製品の関税撤廃条件やマレーシアの国有企業など難航する論点を集中的に交渉した。

 修正を見送る農業分野について、茂木敏充TPP担当相は対応策を検討していることを明らかにし「各国にも理解を得ている」との認識を示した。さらに「日本の農業にも配慮をしながらしっかりしたものを作っていきたい」と述べ、首脳会合後に共同声明などで対応策を盛り込む方針を明らかにした。

 日本国内では、農業の合意水準を維持すれば、仮に日米FTA交渉入りした場合に、米国から別途市場開放を求められるとの懸念が出ている。

 一方、TPP11は将来的な米国復帰を想定して議論を進めてきたため、日米FTAのようにTPPに復帰しない事態を前提にした議論はできないと判断。将来、そうした情勢になった場合に協議を行う方向だ。
 

政府は再検証 徹底を 


 TPP11が大筋合意する公算が高まった。日本政府は、閣僚会合でTPPの漂流を回避するため、懸案となっていた農業分野の修正を提案しなかった。米国の将来的な復帰を前提に、凍結項目も極力絞り込み、高い自由化水準を保つ合意を優先した。

 その結果、乳製品の低関税輸入枠や牛肉・豚肉のセーフガード(緊急輸入制限措置)は、米国の参加を前提に設定された従前の市場開放水準を維持する方向だ。

 だが、二国間のFTAを志向する米国がTPPに復帰するめどは立っていない。政府は日米FTA交渉が始まるなど、米国のTPP復帰がなくなった場合に備え、各国と農業分野を含めて再協議する約束を取り付け、国内の農業関係者の説得材料にしたい考えだ。

 TPPの協定文では、TPP委員会を設置して発効から3年以内に協定の改正や修正提案の検討ができると定めている。政府はこれに基づいて農業分野の修正が可能とみて、事実上、対応を先送りした格好だ。

 ただ、各国が自国に都合の悪い協議に応じるかは分からない。TPP11が発効すれば、米国の参加を前提にやむなく認めた農産物の市場開放水準が、米国不在のまま適用されることになる。

 政府はTPP11の新協定を早期に確定させ、来年中の国会承認を視野に入れる。だが、TPP11は従前のTPPとは別物だ。新協定が発効すれば、オーストラリアやニュージーランド、カナダといった農業大国が日本への農産物の輸出拡大を狙う一方、米国への自動車をはじめとする日本産品の輸出拡大効果は見込めない。

 ただでさえ、国内対策の効果や不確実な経済成長を見込んで提示した当時の政府試算は、野党から「お手盛り試算」とやゆされた。TPP11では得られるメリットとデメリットの徹底した再検証が求められる。
 

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