TPP11大筋合意へ 農業軽視の批判免れぬ

 環太平洋連携協定(TPP)を巡り、離脱した米国を除く11カ国による新協定「TPP11」が大筋合意の見通しとなった。焦点だった農業分野の合意内容見直しは、結局手つかずのまま。農業者の懸念を置き去りにしたとの批判は免れない。

 昨秋の米国離脱後、TPP11を主導してきたのが日本だ。アジアの貿易で後れを取るとの米国の焦りを誘い、TPP復帰を促すというのが理由で、今回の閣僚会合での大筋合意を目指してきた。安倍晋三首相は「とにかくまとめてほしい」と強く指示していた。この目標を何とか達成し、政府内には安堵(あんど)感が漂うが、拙速だったと言わざるを得ない。というのも、農業者にとっての懸念が残されたままだからだ。

 懸念の一つはTPP枠だ。もともと米国を含む12カ国を対象に設定した低関税輸入枠で、乳製品の場合は7万トン(生乳換算)に上る。離脱した米国分を差し引かず、この水準を維持すれば、ニュージーランド(NZ)やオーストラリアでTPP枠を満たし、これとは別に米国から2国間交渉で低関税輸入枠を迫られる可能性もある。

 もう一つの懸念が、牛肉や豚肉のセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)だ。参加国の輸入量の合計が基準を超えた場合に発動する仕組みで、輸入量の約4割を占める米国が抜ければ発動しにくくなり、安い農産物流入の歯止めが緩くなる。

 生産現場からは、TPP枠縮小やSGの発動水準引き下げを求める声が出ていたが、日本政府は、これに手を付けることなく大筋合意に突っ走った。政府関係者は「一つでも合意内容を見直せば、議論が混乱し、大筋合意が遠のいた」と説明。「米国抜きの水準に合意内容を見直せば、米国のTPP復帰の道を断ち、対日自由貿易協定(FTA)へ向かわせることにもなる」と理解を求める。

 確かに日米FTAは回避したいが、だからと言って、農業者が抱く懸念を放置していいわけはあるまい。そもそも米国がTPPに復帰する見通しは立っていない。トランプ米大統領は「正しい考え方ではない」と復帰を否定している。

 日本は、米国のTPP復帰の可能性が確実になくなった場合、再協議し、農業分野の合意内容を見直したい考えだが、各国が自国のメリットにならない再協議に応じる保証はない。

 日本政府内にはTPP11について、農業大国の米国が抜ける分、農業が受ける打撃は大きく減るという楽観論もある。だが、TPP11には、オーストラリアやNZといった農業大国がおり、安心はできない。

 TPP11による国内農業が受ける打撃はどれくらいか。打撃を抑えるためにどんな対策が必要か。日本の思惑通り、再協議は行えるのか。大筋合意に達する見通しが強まった以上、政府・与党や野党には、国会などで徹底した議論を求めたい。

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