銘柄ジビエ おおち 山くじら 信頼の証し 「現地で確認」徹底 適正駆除、資源保護も 島根県美郷町

くくりわなで捕獲したイノシシを現場で確認する町職員(右から2人目)ら(島根県美郷町で=同町提供)

 研究機関や食肉販売業者などと連携し、獣害対策と併せてイノシシ肉の出荷を商業ベースに乗せている島根県美郷町は、独自の捕獲奨励金制度で全頭現地確認を徹底している。手間のかかる現地確認を行うことで、生息数を正確に把握して効果的な対策を打ち、資源の有効活用につなげる狙い。不正受給問題で国の補助金の交付ルールが来年4月から厳しくなる中、先進事例として注目される。

 島根県美郷町は、「おおち山くじら」のブランドイノシシ肉で知られる。同町の狩猟者らで構成する「おおち山くじら生産者組合」は、年間約400頭を生きたまま処理施設に運んで良質な精肉に仕上げ、ジビエ(野生鳥獣の肉)として首都圏にも販路を広げている。

 2004年に美郷町として合併した旧邑智町ではかつて、捕獲奨励金の不正疑惑が持ち上がっていた。近隣自治体のイノシシ捕獲数が横ばいだった1999年度、同町では捕獲が急増し、過去最高の732頭を記録した。近隣自治体は個体の現地確認をしていたが、同町は尻尾の提出で済ませていた。奨励金を受け取れない狩猟期に捕獲した個体の尻尾を、4月まで冷凍保存して持ち込んでいた可能性が高いという。

 そこで次年度は現地確認に切り替えたところ、捕獲は299頭に激減。月別頭数で見ると、99年度は4月に89頭、5月に67頭捕獲されていたが、2000年度は4月がゼロ、5月が7頭だった。現場確認に切り替える際は猟友会から反発もあったが、理解を求めた。

 現在は捕獲した農家らから連絡を受けた町職員が、現地に出向き捕獲を確認する。邑智町時代から確認に携わる美郷町産業振興課の安田亮課長補佐は「負担は増すが、被害を減らすという目的を達成するためには、正確な統計を取って対策や事業に生かす必要がある」と強調する。

 今年度40頭ほど捕獲した品川光広さん(61)は「不正はあってはならないことで、誰もが現地確認は必要と思っている」と理解を示す。

 正確な数字を積み重ねることで、獣害対策も講じやすくなった。通常は6、7月に増える子イノシシだが、今年は8月後半から増加していたことが分かった。この時期に農作物被害が出やすくなるため、町はわなの管理などを改めて呼び掛けた。

 捕獲を進め過ぎたことで、食肉用が足りなくなる事態も他県では起きていることから、有害個体だけを捕獲するよう指導。被害対策と利活用を両立させている。
 

交付ルール厳格化 農水省が来年4月


 農水省が6月に発表した市町村やJAなどでつくる「地域協議会」を対象とした調査で、全体の15%に当たる140の協議会で「鳥獣被害防止総合対策交付金」を支払う際の捕獲確認が不十分だった。市町村担当者が現地確認までしている協議会は、17%(159)にとどまる。

 昨年7月、職員が捕獲写真の偽装に気付いて交付金の不正受給が発覚した鹿児島県霧島市。13~16年度の捕獲件数1万1327件のうち、本人も偽装を認めたのは252件、偽装の疑いがあると市が判断したのが9件あった。市は、提出用写真の向きをそろえ撮影し、捕獲獣の胸に数字をペイントするなど厳格化した要領を制定。可能な限り現地確認をして再発防止に努める。

 同省は交付ルールを来年4月から厳格化する。①現地確認②処理加工施設への持ち込み時の搬入確認③書類確認――のいずれかで捕獲を確認。書類で確認する場合は尻尾と共に写真の提出を義務付け、不正を防ぐ。

 美郷町の安田課長補佐は、交付金が高額になり過ぎると捕獲の目的が被害防止ではなく、金銭目当てにすり替わってしまうことを危惧する。「捕獲に交付金を上乗せするのではなく、職員が確認するための人件費に充てた方が、正確な統計を取れ、被害防止にもつながる」と提言する。 (柳沼志帆)

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