卸売市場法見直し 機能弱体化許されない

 政府・与党の卸売市場法の抜本見直し議論が本格化している。卸売市場の機能を弱体化させてはならない。

 現行法は1923年に制定された中央卸売市場法を引き継いだ。議論に火を付けた規制改革推進会議は「食料不足時代につくられ、時代に合わない」と、同法に定めた規制を大胆に廃止し、市場運営に国や行政の関与をなくす民営化をもにらむ。

 食品の安定供給を支えてきた卸売市場の機能を軽視していないか。卸売市場があるからこそ、縦に長く四季のある日本で産地リレーによって荷を切らさずに農畜産物を行き渡らせてきた。台風など異常気象で相場変動があっても、年間を通じてスーパーや青果店にみずみずしい野菜や果物が並ぶ。世界に誇る流通システムだと強調したい。

 改革論者は市場経由率の低迷を課題に据えるが、それは市場を介さない加工品を含む輸入品の流通割合が増えたためだ。国産の野菜や果実の経由率は84・4%(2014年)と十分高い。

 産地の出荷物を卸売会社が必ず引き受ける「受託拒否の禁止」や、卸売会社が出荷者や売買参加者らを不当に差別しない「差別的取り扱いの禁止」、さらに「代金決済の確保」は、腐敗しやすい青果物流通を支える市場の公的インフラ機能を担保する制度だ。廃止なら零細な産地などが取引に参加できず、迅速な決済機能を失えば生産者へのデメリットが大きい。

 卸売市場が備える機能に公正な価格形成力がある。仲卸が数十年間にわたる市場取引で培った「目利き」によって、農畜産物の品質などの違いを見抜き、農家の努力を適切に評価してきた。零細の青果店や飲食店、学校給食に食材を供給し、地域経済と食文化を支えてきたことを正当に評価するべきだ。

 卸売業者の販売先を仲卸や買参人に限る「第三者販売の禁止」や商品の現物を必ず市場に通す「商物一致の原則」の規制をなくせば、資本力に劣る仲卸や地方の市場業者が打撃を受けるのは間違いない。荷を引く力の強い大手卸はスーパーとの直接取引拡大に向け規制見直しを求めているが、規制項目ごとに見直しが要るのか、十分な精査の上で改革を進めるべきだ。

 議論の前提は農家の所得向上だった。市場流通を「中抜き」して農家が支払う手数料を減らすだけで、実現可能とするのは楽観的過ぎる。産地の実需への直接販売など市場外取引の拡大は一定に求められるものの、過度に規制緩和を進めれば巨大スーパーの価格支配力がより強まる心配もある。現状も小売りの適正取引への監視体制が十分とは言えない。そうした中、急進的な改革は大きなリスクを背負う恐れがある。

 政府・与党は年内に結論を得て、来年の通常国会での関連法改正を目指している。市場取引の実態と影響分析を踏まえた議論を重ね、関係者の合意形成に向け、丁寧に進めるべきだ。

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