一筆啓上。火の用心。

 〈一筆啓上。火の用心。お仙泣かすな。馬肥やせ〉。家康家臣が戦場から自宅に送った文は家屋の保守、育児、いざというときの備えを最小限の言葉で伝えた▼きょう11月23日は「いいふみの日」である。手紙にまつわる話題をいくつか。「昭和」という時代の〈空気〉を表した作詞家の故阿久悠さん。あの豊かな表現力は大学時代のラブレターの代筆で培った。好きな映画代金を稼ぐためいくつも請け負う。あれこれ空想を重ね思いを相手に伝える語彙(ごい)力を磨く▼変幻自在に言葉を操るシンガー・ソングライターの中島みゆきさん。ヒット曲の一つ「恋文」は忘れられない。恋文に潜むサヨナラ。〈「アリガトウ」っていう意味が「これきり」っていう意味だと最後まで気がつかなかった〉。学生時代にこの歌詞にショックを覚え、以来よくよく手紙は吟味するようになった▼卒業式でよく口ずさまれるアンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓十五の君へ」。〈荒れた青春の海は厳しいけれど 明日の岸辺へと夢の舟よ進め〉と歌う。そして最後に〈拝啓 この手紙読んでいるあなたが幸せな事を願います〉と結ぶ▼SNSによる悲しい事件に胸が引き裂かれる。アンジェラさんの歌をいま一度聴きたい。誰でも明日へ〈夢の舟〉を持つ。そんな思いが募る。

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