牛肉セーフガード 防波堤効果検証すべき

 輸入急増を防ぐはずの緊急輸入制限措置(セーフガード=SG)の効果に疑問が出ている。今年8月、14年ぶりに牛肉のSGが発動されたが、輸入増の勢いが止まらない。発動対象外のオーストラリアからの輸入が増えているだけでなく、関税が引き上げられた米国も前年を上回っている。牛肉SGは過去に3度発動されたが、輸入抑制の効果は不明なままだ。SGは貿易自由化の唯一の防波堤対策であり、改めて効果の検証が必要だ。

 牛肉は毎年50万トンほど輸入され、冷凍肉と冷蔵肉が半々ずつで、輸出国も米国とオーストラリアがそれぞれ半分を占める。同じ牛肉と言っても、輸入価格が1キロ1700円もするステーキ用の冷蔵ロインから、400円の冷凍バラまでさまざまな種類がある。今回のSGは、今年度第1四半期の輸入量が発動基準の前年同期比17%増となったため、8月の輸入分から38・5%の関税率が50%に戻された。対象は冷凍品で、主な部位は牛丼や焼き肉用の米国産冷凍バラ。輸入単価は1キロ400円と最も低価格の部位だ。

 関税引き上げで、冷凍牛肉の輸入は減少するはずだが、9月までの第2四半期輸入数量は、17%増のハイペースが続いたままで、9月だけだと前年より5割も増えた。なぜ減少しないのか。一つは、ハンバーグなどのひき材になるオーストラリア産冷凍「その他」が9月に前年比6割増にまで増えた他、普段は少ない冷凍バラまでも倍増したことだ。同国だけで2万2000トンと、冷凍牛肉全体の1カ月分の輸入数量となった。同国は2015年に発効した経済連携協定(EPA)でSG発動の対象外となっているため、今回の輸入攻勢となった。

 さらに、関税がアップした米国も、主力の冷凍バラは、SG発動前の7月に滑り込み輸入をしたことで8月は前年を下回ったものの、9月は前年比4割増にまで増えた。これは、冷凍バラが低価格のため、1キロ当たり関税アップ分40円ほどを加えても、オーストラリア産冷凍バラとの競争力がまだ残っているためとみられる。

 1回目の牛肉SG発動は、ウルグアイラウンド合意直後の1995年だが、関税引き上げ幅は2%弱のため、発動後も輸入増は続いた。翌96年にも発動したが、急激な輸入増による在庫のだぶつきが原因で輸入量は急減した。3回目は03年だが、直後に米国で牛海綿状脳症(BSE)が発生したため輸入ストップとなり、SGの効果は3回とも実証されずに終わった。

 現在のSGは、91年の牛肉自由化をモデルとしているが、その後四半世紀の間に発動対象外となるEPAの締結と関税水準の低下で年々効果が薄れ、今回のように発動後も輸入増が続く異常な事態となっている。SG発動に異議を唱えた米国との経済対話も懸念されるが、まずはSGの防波堤としての機能を検証すべきではないか。

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