大学注目 食農 学部や学科 各地で新設ラッシュ ユネスコ無形文化遺産登録 ― 和食ブーム後押し

 国内の大学で来年以降、「食」や「農」に関する学部・学科の新設が相次ぐ。2018年4月には全国の8大学で食物学、医療栄養学、獣医学などの学部・学科を新設。19年以降は、農学部や和食文化学科などの設置を構想する大学もある。背景には、農学部や「栄養」と付く学部の志願者数が増加していることや、「和食」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、食に対し世間の関心が高まったことなどがある。
 

成長分野、志願増も


 来春新設するのは、新潟食料農業大学(新潟市)、甲南女子大学医療栄養学部(神戸市)、吉備国際大学農学部醸造学科(兵庫県南あわじ市)などの8校。

 国内で珍しい食マネージメント学部を来春、滋賀県草津市に新設するのは立命館大学で、入学定員は320人と大規模だ。食の経営・経済学をベースに、食関連の歴史学や文化人類学、栄養学や官能評価学などを総合的に学ぶ。11年から新学部の設置を模索。世界の食市場の拡大が予想されることや、産業界のニーズを受け設置に踏み切った。

 フランスの老舗料理学校「ル・コルドン・ブルー」などと連携し、国内外で活躍できる人材を育てたい考え。卒業後は、食に関する商品開発や経営企画、接客サービスを提供するホスピタリティー産業、地域活性化を支援する公務員や非政府組織(NGO)といった進路を想定する。

 同学部設置委員会委員で同大経済学部の朝倉敏夫教授は「日本は高い調理技術を持つ人材と教育は備わるが、食をうまく消費に結び付ける専門教育はなかった。食は数少ない成長産業。世界で闘える人材を育てたい」と力が入る。大学院の設置も視野に入れる。

 文学部に和食文化学科の設置を目指すのは京都市の京都府立大学。ユネスコの無形文化遺産に登録され、海外でも注目が高まる「和食」文化を保護、伝承できる人材を育成する。19年4月予定で入学定員は30人を見込む。和食史学を軸に、食文化学や食サイエンスなど食に関する知識を幅広く学ぶ。

 16年度は、府内の観光消費額(約1兆1447億円)と外国人宿泊客数(約326万人)が、ともに過去最高を記録した。設置準備を進める同大京都和食文化研究センターの福原早苗事務局長は「外国人観光客にとって、和食は大きな魅力。だが、和食が持つ歴史や精神性などを知る人材は少ない。それを的確に伝えるとともに、助言や企画立案をしながら、新たな産業領域を開拓できるリーダーを育てたい」と話す。
 

「国際的な人材を」 業界


 新設が相次ぐのは、農学部や「栄養」と付く学部の志願者数が増加していることが大きい。文部科学省の学校基本調査によると、農学部の志願者数は、07年の4万7797人から17年には6万3660人と約3割上昇。栄養と付く学部は、同じく8386人から1万8444人と2倍以上伸びた。

 農学系の大学に詳しい大学通信の安田賢治常務は「近畿地方の大学の設置が目立っているのは、近畿大学農学部の成功も一因。食や農といったキーワードは大学の新たな潮流」と分析する。

 こうした動きに関連業界も注目する。立命館大学と包括協定を締結した外食の業界団体、日本フードサービス協会は「海外では食産業を学べる大学が多い。国内でも食を専門に研究する教員を養成して、学問として確立させ業界の活性化につなげてほしい」と期待する。

 19年以降、京都府立大以外にも福島大学(福島市)、高崎健康福祉大学(群馬県高崎市)などが設置を予定するが、大学通信の安田常務は「農学部や栄養が付く学部は人気が高いのに数が少ない。さらに大学が増える可能性がある」とみる。

 日本料理の普及や発展に尽力する日本料理アカデミーの村田吉弘理事長は「食を学問として位置付け、学ぶ機会が増えるのは歓迎」としつつも、「注目度が高い食にあやかり、大学が教育内容より経営を優先し学部を設置することはあってはならない」と忠告する。(前田大介)

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