[人財 育てる生かす 3] 毎年関われば担い手 作業や祭り継続し派遣 学生人材バンク(鳥取市)

餅つきをする大学生と片柴集落の農家。収穫祭で農家に振る舞う(鳥取県三朝町で)

 山に囲まれ、小さな田が点在する鳥取県三朝町片柴集落。鳥取大学の学生20人が毎週同集落に通い、米を作り、農家と交流を重ねる。顔ぶれは年を経て変わる。学生による稲作は来春、10年目を迎える。学生を集落に送り込むのは、2002年に発足した鳥取市のNPO法人「学生人材バンク」だ。

 同集落は11月、学生と収穫祭を開いた。農家の岩谷丈一さん(81)が静かに学生に語り掛けた。「この年になって孫のような友達ができて幸せだ。一生懸命米を作る君たちの姿に、元気をもらった」。岩谷さんは学生の農業指導者。体調不良のため今年で離農する。それでも、“友達”である学生が、今後も農地を耕してくれることを願う。

 学生は耕作放棄地となる寸前の6枚の水田、計0・8ヘクタールを引き受け、土づくりから収穫まで、水管理以外の米作りの作業を担う。面積では集落で2番目の担い手だ。農家の谷口櫻子さん(80)も「毎年学生は変わるから名前まで覚えられないの。でも草刈りも、みこしも学生が必ず来てくれて、いつもにぎやかよ」と感謝する。

 「学生人材バンク」は、稲作をする学生サークルを運営する他、県内外の中山間地域の30集落に年間70日、延べ500人のボランティアを派遣する。水路掃除や鳥獣害対策の柵設置……。学生を毎年、農村の共同作業に送り出し続ける体制をつくり上げた。

 同バンクは、同大学卒業生の中川玄洋さん(38)が立ち上げた。「農村の面白さを後輩にも伝えたい」と考えた。ボランティアに関わる資金は県の事業を活用。農作業や祭りに若者を派遣する他、地域おこし協力隊や移住者の受け入れ相談なども担う。

 当初は、ボランティアを求める農家の声を受け、中川さんが人づてで学生を探した。農村との関わりを求めている学生は想像以上に多く、学生と集落の仲介は、双方から好評だった。希望する学生、集落ともに年々増加していった。

 学生との面談をしっかりして地域に出向く意味を伝える。ボランティアを求める集落には、学生と食事を共にするルールを設ける。意思の疎通などで小さな失敗があればすぐに軌道修正する。学生が替わっても継続して集落で力を発揮できるように工夫を重ねた。

 活動が奏功し、若者と農村活性に関するさまざまな業務依頼が、法人に相次ぐ。中川さんは「これまで初代の熱意ある学生が卒業すると、地域との関係も次第に途切れていた。でも、きちんとフォローすれば関係は継続する。毎年関われば、学生でも地域の新しい担い手になる」と考える。

 学生の原動力は、集落での学びの多さだ。愛知県岩倉市出身の3年生、野田幸宏さん(22)は「過疎地域より、効率の良い田畑で規模拡大する農業に価値があると思っていた。でもボランティアを通じ、損得勘定ではなく地域を守る農家が生き生きと暮らす集落があることを知った」と明かす。

 双方の意図をくみ取ったマッチングがもたらす、集落のにぎわいと学生の感動。学生人材バンクが、橋渡しを続ける。 

〈キーパーソン 中川玄洋さんの3カ条〉
 ・誰かに頼ることも大切・まず接してみる・客人扱いはしない

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