[人財 育てる生かす 5] 有機と契約で足固め 中山間移住20戸が会員 くらぶち草の会(群馬県高崎市)

佐藤会長(左)から小松菜の収穫を教わる書上さん(群馬県高崎市で)

 群馬県高崎市の中山間地域、旧倉渕村。高齢化が進み耕作放棄地が増えていた地で有機農業を志す若者が次々と育つ。高齢農家が手放す農地は、「くらぶち草の会」で育った農業経験のない新規就農者に受け継がれる。

 新規就農を目指して研修中の前橋市出身の書上祐紀さん(22)が充実した表情を見せる。「種まきをして出荷する一連の流れに、達成感を感じる。店頭販売で野菜を買ってもらった時の笑顔を見ることがうれしい」

 同会は、1997年に結成。契約栽培を通じて農作物の安定供給を目指す。周辺農家200戸のうち、2割に当たる37戸が所属する。そのうち20戸は移住者だ。

 全会員の総栽培面積は40ヘクタール、有機栽培でホウレンソウや小松菜、インゲンなど50品目を育てる。

 同村は戦後の食糧難で農地開拓が行われ、鳴石集落に13戸が入植。だが、その孫世代が都市部などに流出した。「若者を受け入れなくては地域が持続できない」。同会の会長、佐藤茂さん(66)らの危機感が、同会立ち上げにつながった。佐藤会長が付加価値を高めるために以前から取り組んでいた有機農業を武器に自力で販路を開拓したり、JAはぐくみを通じて出荷先を確保したりと後継者育成を進めた。

 新規就農を受け入れる研修の仕組みは、農家自らが作った。1年間は、佐藤会長などベテラン農家に技術を学ぶ他、集落に溶け込むために地元の消防団など地元組織に関わるように指導。地元組織に入ると地域の人に認められやすく、定住につながりやすいからだ。

 研修では農業の本質を伝える。契約栽培で出荷量を確保する厳しさをたたき込む。顧客重視の考えも徹底する。当初は「有機農業がやりたい」といった一念で移住してきた若者も、次第に地域と関わりながら農業をする意味を感じていく。

 「研修体制や販路の確保などは、ここでやっていければ、どこに行ってもやっていける内容。そのレベルでバックアップをしている」と佐藤さんは、研修内容に自信を持つ。

 指導を重ね、新規就農者の技術や農業への考えが育ち、目に見えた成果が出る。新規就農2、3年の売り上げは300万円程度だが、作業効率や技術力が向上すると600万~900万円に伸びる。売り上げの6~7割が収入になる。経営の安定が、次の若者を呼ぶ好循環につながっている。

 1ヘクタールで野菜を作る東京都出身の柴田勲さん(40)は「先輩農家から面倒を見てもらえる環境が本当にありがたい。売り先が確保されていることも就農に向けて背中を押してくれた」と振り返る。若者を受け入れ、売り先を確保し、農業の理念を伝える。その繰り返しが、若者たちの成長につながっている。  

〈キーパーソン 佐藤茂さんの3カ条〉
 ・厳しさも率直に伝える・地域への関わりを後押し・消費者目線の野菜作り

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