高級ワイン 産地 拡大 温暖化じわり 原料ブドウ適地北上

人気が高まる高級ワイン用品種「ピノ・ノワール」の畑(北海道余市町で)

 地球温暖化による気温上昇で、北海道が高級ワイン用品種の栽培適地になってきた。道立総合研究機構・中央農業試験場が研究データを基に裏付けた。赤ワイン用品種「ピノ・ノワール」は30年前、成熟に必要な温度が足りなかったが、最近10年間はほぼ毎年、十分な積算温度(日平均気温10度以上)を確保。必要な果実中の酸を残しながら、高級ワインになる糖度20以上に達している。一方、本州では温暖化を懸念し、より冷涼な気候を求めブドウ畑が山を登っている。
 

25年目標 450ヘクタールに 北海道


 「ピノ・ノワール」はフランス・ブルゴーニュの高級ワインを代表する品種で、世界中の愛好家を熱狂させる。しかし、30年前の北海道では降雪前の10月までに熟度が進まず、色が薄く糖度も上がらないため良いワインになりにくかった。

 日本ワインブームの中、近年は、気候と農家の努力で、「ピノ・ノワール」は北海道を代表するワイン品種として評価が高まりつつある。先進農家の成功例を見て、植栽が加速している。

 同試験場は同品種や「ソービニヨン・ブラン」など高級ワイン用品種に生産者が注目していることから、2013~16年に積算温度と品質の関係を確かめるため、道内11カ所で調べた。

 その結果、両品種とも高級醸造原料として望ましい糖度20以上になるには、満開~収穫の日照時間が550時間以上で、4月~収穫までの積算温度が1230度以上必要なことが分かった。醸造原料に使える糖度18以上は460時間以上、1170度以上だった。

 主産地の岩見沢市、富良野市、余市町の3地点の積算温度を調べると、温暖化は一目瞭然だった。1977~86年に基準を超えたのは2年しかなかったが、2007~16年はほぼ毎年超えている。気温が高まると、糖度が上がる前に酸含量が減り良いワインにならない場合があるが、「ピノ・ノワール」は酸も1~1・5%あり、気象条件が適していることが分かった。

 北海道は醸造専用種の栽培面積が全国で一番多く、ワイナリー数はこの10年で2・5倍の35に増えている。果樹農業振興計画では、両品種などの導入で醸造用品種の栽培面積を25年に50ヘクタール以上増やし、450ヘクタールに高める方針だ。同試験場の内田哲嗣主査は「9月下旬~10月上旬だった降霜が遅くなり、成熟期間が長くなった。気象データで栽培適地を判断できる」と話している。
 

冷涼・高地へ移動 本州


 本州産地では温暖化で果実の酸含量が減ってワイン品質が低下することを懸念し、より高級品種を作ったり、冷涼な高標高地帯に植栽したりする例が増えてきた。

 山梨県の主産地は甲府盆地だが、北杜市の高標高地帯に新しい産地ができた。長野県でも大手ワイナリーや農家が動き始めている。標高430~830メートルに畑がある、高山村の佐藤明夫さん(48)は、低標高の圃場(ほじょう)を手放し5年前に830メートルの圃場を手当て、「ピノ・ノワール」などを植栽した。

 メルシャンは今年、長野県塩尻市内で、現在主力の自社農園がある地区より標高が60メートル高い800メートルの片丘地区に約9ヘクタールの用地を借り植栽を始めた。サントリーワインインターナショナルも、山梨県特産の白ワイン用「甲州」が不足していることから、冷涼な長野県に農場を開き、同品種の栽培を始めている。(北條雅巳)
 

「ピノ」に太鼓判


■北海道産「ピノ・ノワール」を使ったワインを販売する、栃木県足利市のココ・ファーム・ワイナリーの池上知恵子専務の話 温暖化もあるが、農家の生産技術向上や醸造家の努力もあり、北海道産の「ピノ・ノワール」はおいしい。和食、中華、洋食などいずれにも相性が良いため日本の食卓に合ったワインを造ることができ、有望な産地となっている。

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは