消費者にアピール①識別②信用③品質 売れ筋野菜 名前が決め手

 「アメーラ」「インカのめざめ」「のびすぎでんねん」など個性的な名前の野菜が、消費者の高い認知度を背景に需要を伸ばしている。味や特徴を名前に託し、消費者の注目を集め心をつかむ。農産物のブランド戦略で、品種名や商標などのネーミングは欠かせない要素の一つとなってきた。
 

ジャガイモ「インカのめざめ」 独特の味と色“相乗効果”も 


 「インカのめざめ」は、2001年に品種登録された春植えのジャガイモ品種。14年産の作付面積は全国で176・7ヘクタールで春植え全体の0・2%と量は少ないが、食味の良さと名前のインパクトで認知度が高まっている。

 農研機構・北海道農業研究センターが、南米アンデス地域で食べられている独特の食味を持つ小粒種を、日本でも栽培できるよう15年かけて改良した。名前の由来は古代インカ文明と、一般の品種とは異なる染色体数などの珍しさと斬新さから。収量は代表品種「男爵薯」の約7割と少なく貯蔵性に劣るが、黄色い肉色と栗のような風味が特徴だ。

 59ヘクタールを栽培する北海道JA幕別町は、収穫後に貯蔵管理して甘味が増したものを年間を通じて供給する。栽培や管理の難しさもあり、一層の生産拡大は難しいというが、「味を知っている取引先からの引き合いは強い」と言う。

 育成した同センターは「名前の覚えやすさと味のインパクトで認知が広がってきたのではないか」と話す。
 

フキ「のびすぎでんねん」 知事が命名 ハクサイ「王将」 将棋ブーム 


 「のびすぎでんねん」は、大阪府立環境農林水産総合研究所が02年に登録したフキ品種「大阪農技育成1号」の愛称だ。在来品種より葉柄が長く伸びることから、当時の府知事の横山ノック氏が命名した。産地のJA大阪泉州は、ラベルに「のびすぎでんねん」と表示して出荷。JAは「インパクトが強い名前。販促活動では消費者が名前を声に出すこともある」(販売課)と効果を実感する。

 タキイ種苗のハクサイ「王将」は、結球した形が将棋の駒に似ていることが名の由来。1960年に発売された古い品種だが、今年は若手棋士の活躍などによる将棋人気で「家庭菜園などで再び注目を集めたい」(同社)と期待。栽培農家にも「王将」が再認識されたとみる。
 

トマト「アメーラ」 方言で「甘い」検索しやすく  


 静岡県が栽培技術を確立した高糖度トマト「アメーラ」は、静岡弁の「甘えら(甘いでしょう)」が名前の由来。その甘さと印象的な名前から、ブランドトマトとして定着した。

 旧大井川町(現焼津市)で20年ほど前に生産が始まり、生産グループが商標を登録。同県と長野県軽井沢町の農業生産法人など10社でつくるサンファーマーズがブランドを管理する。生産地は藤枝市、静岡市、沼津市、牧之原市、浜松市、富士宮市、小山町にも広がり、出荷量は16年に114万ケース(1ケース約1キロ)と、ここ5年で8割近く増えた。

 名前やロゴは、同社の稲吉正博社長らと同郷のデザイナーが一緒に考えた。ブランド戦略には社外の専門家の意見も取り入れた。「アメーラ」は消費者がインターネットで検索しやすい4文字。稲吉社長は「勢いから名付けたが、どんぴしゃな名前だった」と、会心の出来だと自負する。(猪塚麻紀子、隅内曜子)
 

ネーミングに詳しい吉田国際特許事務所の吉田芳春所長弁理士の話


 ブランド戦略として、ネーミングは重要だ。名前には①自他の商品が区別できる「自他商品識別力」②続けて選ばれる「信用蓄積力」③「品質保証能力」――が必要だ。国内向けには、覚えやすい名前を付けるとよい。日本人になじみのある5・7・5調を基に、長過ぎない「5文字」で付けるのも覚えやすくする方法の一つだ。海外輸出では、日本語の発音が輸出先国で別の意味にならないか調べる必要がある。日本産だと分かりやすくするために、漢字と平仮名を使うとよい。
 

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