増える鳥獣害 進む高齢化 専門人材 育成急げ

マッチングイベントで熱心に説明を聞く参加者(東京都武蔵野市で)

 農林業被害を及ぼす野生鳥獣を捕獲する担い手の確保と育成が急務となっている。農村では、捕獲従事者の高齢化などで被害防止対策が進みにくいのが実態。こうした中、雇用側と求職者の“マッチング”により人材を確保する動きが出てきた。東京都内で今月に開かれた求職イベントには、人材を求める団体や、捕獲に従事したい人が参集。女性の姿も目立った。就業相談や情報交換などが活発に交わされ、民間、自治体、地域を挙げた人材の育成を求める声が多く挙がった。
 

雇用と求職者マッチング 14団体×111人熱く交流


 日本獣医生命科学大学(東京都武蔵野市)が12月上旬、初の全国規模のイベントとして開催。各地で鳥獣害対策を行う団体でつくる「ふるさとけものネットワーク」が共催した。捕獲対策や資材開発、ジビエ(野生鳥獣の肉)加工などを行う14団体と、学生や社会人111人が参加し、会場は熱気がこもった。

 来場した山形大学大学院1年生の豊川春香さん(23)は、大学院では野生動物の保全について研究しており、学んだことを生かしたいと調査などを手掛ける企業のブースを回った。豊川さんは「多くの団体を知ることができた。農家と一緒に対策を考えていきたい」と、将来を見据えていた。

 佐賀県嬉野市の猟師、太田政信さん(29)は各地の取り組みを学ぼうと参加した。太田さんは、地域のイノシシ被害を見かねて農家から転身し、現在は地域の捕獲と箱わなの製造を手掛ける。「地域の人に喜んでもらうという捕獲のやりがいを教わった」と意欲を新たにしていた。

 担い手を求める団体側は一様に、目的意識を持った大勢の来場者に驚きを見せる。情報通信技術(ICT)を活用した捕獲システムを開発するアイエスイー(三重県伊勢市)の高橋完常務は「地域貢献という要素が、参加者が企業を選ぶ上で重要なようだ」と実感。「システムを活用してもらえるよう、企業と地域を結び付けてくれる人材に来てほしい」と期待する。

 長野県富士見町は、ジビエ加工を担う企業と連携し、地域おこし協力隊を募集する。「地域の猟友会と加工業のつなぎ役を探している」と、来場者と積極的に交流していた。
 

まだまだ足りぬ現場の「技術者」 


 農水省は、昨年12月の鳥獣被害防止特措法の改正を踏まえ、農作物の鳥獣被害の防止に向けた基本指針を見直した。鹿やイノシシの捕獲など鳥獣害対策の実務を担う「鳥獣被害対策実施隊」の機能強化へ、市町村が実施隊の人材育成に努めることや、国や都道府県も必要な支援に努めることを掲げた。

 行政への獣害対策支援を行う千葉県佐倉市のAMAC(エーマック)の浅田正彦代表社員は「金や物、ノウハウは成熟している。問題は使いこなす人間の育成だ。各地で対策を支援する組織や人材の育成を急速に整備していかなければならない」と話す。

 同大学の羽山伸一教授は「現時点で都道府県で鳥獣行政の職員のうち、専門的に関わるのはわずか100人ほどにすぎない。専門技術者を育成しなければ対策にいくら金をつぎ込んでも税金の無駄遣いだ」とし、「人づくりには時間がかかる。各自治体が自覚し、鳥獣害を政策課題にしていくべきだ」と指摘する。(猪塚麻紀子)
 

生息頭数目標10年間で半減 農水省


 農水省によると、野生鳥獣による農作物被害は2015年度で176億円。環境省の調査では、北海道を除くニホンジカの個体数は約304万頭(前年度315万頭)、イノシシは約94万頭(同109万頭)で、増加傾向に歯止めがかかっている。全国的な捕獲対策の強化により一定の成果が上がってきたが、国は23年度までの10年間で生息頭数を半減する目標を掲げ、今後も捕獲を大幅に増やす必要がある。

 狩猟者数は高齢化などで減少してきたが、わな猟免許所持者の増加や新規の狩猟免許取得者は増加傾向にある。免許所持者の39歳未満の占める割合も増加傾向で、「免許保持者が活動する場を広げ、さらなる捕獲強化を進めたい」(環境省野生生物課)としている。

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