コミック不況なのに・・・ 農業系なぜか人気 鳥獣害と闘う女子高生描く「狩猟の現実」訴え 『罠ガール』作者は農家出身

27日発売の『罠ガール』コミックス1巻の表紙

1巻中の一こま。主人公がくくりわなで捕らえたイノシシと向き合う場面

 農産物を守るため、農家育ちの女子高生がわなで田畑を荒らす害獣を捕獲する――。コミック誌『電撃マオウ』に5月から連載中の『罠(わな)ガール』が27日、初の単行本として発売される。若い世代のコミック誌離れなどを背景に漫画本の発行部数は大幅に落ち込む一方で、農業や周辺産業をテーマにした漫画は人気だ。「農家の嫁になりたい」という漫画がヒットするなど、かつて「汚い」「苦しい」「危険」の3Kと言われた農業に脚光が集まる。

 著者の緑山のぶひろさんは、福岡県の農家出身。自身でもわな猟免許を所持している。東京で漫画家アシスタントなどを経て福岡に戻り、鳥獣害と闘いながら米や野菜を生産し、現在は漫画家として活躍中だ。

 『罠ガール』は、田舎町の女子高生が、地域の田畑を荒らす鳥獣害と闘うストーリー。農作物を守ろうと、わな猟免許を持つ主人公が野生動物と知恵比べを展開する。くくりわなでイノシシを捕獲したり、鹿の解体に挑戦したりと、鳥獣害対策の現状が描かれている。

 緑山さんは「本来農業に全力を尽くしたいはずの農家が、多くの時間を鳥獣害対策に追われている。農家自身が免許を取って捕獲に取り組まなければならないほど、猟師も減少している」と現状を訴える。「漫画ではあるが、現場のありのままを伝え、若い人に少しでも興味を持ってもらい農業や狩猟の道を進んでほしい」と、作品への思いを明かす。

 同作品が連載されているのは、出版社のKADOKAWAが発行する若い世代をターゲットにした月刊漫画誌『電撃マオウ』。ファンタジー作品などが連載されている中で、「狩猟をテーマにした作品は異色だ」と同誌編集部。「連載前は動物と女の子を題材にした“萌(も)える”作品を想定していたが、本物の現場の描写が面白く、今のスタイルになった」と言う。「狩猟に関わる人からも反響があり、何も知らない人にとっても鳥獣害を知る入り口にもなっている」と手応えを話す。

 ジビエ(野生鳥獣の肉)ブームといわれる一方で、現場では狩猟者の人手不足が深刻だ。大日本猟友会の浅野能昭専務理事は「生き物と命の関係がしっかりと描かれている。若い人や女性が狩猟に関心を持つきっかけになってほしい」と期待を寄せる。
 

青果仲卸や農家の嫁も 食通じ“共感”


 青果市場を題材にした作品も人気だ。講談社の『週刊モーニング』で9月から連載する『八百森のエリー』は、宇都宮市場の仲卸業者の新入社員、卯月瑛利(エリー)が主人公。作者の仔鹿リナさんは、夫が仲卸で勤務する経験を踏まえ、市場の視点から青果物の魅力や市場取引の現場を描く。仲卸を題材にした漫画は珍しい。

 恋愛を契機に農村生活に飛び込む若い女性を描いた人気漫画もある。二ノ宮知子さんの『GREEN 農家のヨメになりたい』だ。20代以上の女性が対象の講談社の漫画雑誌に連載され、テレビドラマにもなった。都会育ちのヒロインが埼玉・秩父の農家男性に一目ぼれし、農業を手伝いに押し掛ける話だ。

 京都精華大学国際マンガ研究センターの吉村和真教授・副学長は農業漫画が受ける理由を、1970年代から料理人やグルメに関する漫画が広がっていたことを背景として挙げる。「次の段階として、食の裏にある生産に読者が興味を持った」とみる。また「大半の読者が農業を知らなくても、農は食や命に関わる根源であり、共感しやすい」と分析する。

 吉村教授は「これまで暗く描かれることの多かった農村や農家が、最近では少年の成長物語や少女の居場所づくりの舞台として扱われるようになった」とも指摘。「『GREEN』も、知らない世界に飛び込み、必死に居場所をつくろうとする好奇心旺盛なヒロインが共感を呼び、女性読者の農業への関心も高めた。“成長”と“居場所づくり”は漫画の普遍的な人気テーマ」とヒットの理由を解説する。(猪塚麻紀子、齋藤花、山崎崇正)

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