国連家族農業10年 大きな役割 再評価の時

 国連は2019~28年を「家族農業の10年」と決めた。農業の大規模化など構造改革を加速化する日本だが、こうした世界の潮流を受け止め、家族農業の重要性を改めて農業政策に位置付けるべきだ。農業の方向性を考える機会としたい。

 国連は30年までの期限で、貧困や飢餓の撲滅、地球環境の保全などを掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」を定めている。その達成に向け、農業生産の大半を占める家族農業が重要な役割を果たすと判断した。

 家族農業を巡っては、国連が2014年を「国際家族農業年」に位置付けた経緯がある。飢餓の根絶と天然資源の保全に家族農業が大きな役割を果たしていることを世界に広く知ってもらう狙いがあった。

 国連食糧農業機関(FAO)の報告書を基にまとめた「世界食料農業白書」によると、「家族農家は世界で最も多く見られる形態」だ。金額ベースでは世界の食料の80%以上を生産する。世界の食料安全保障を支えるばかりでなく、環境保全や生物多様性の保護、地域の活性化など幅広い分野で重要な役割を果たしている。

 人、物、金のグローバル化が進行する世界で、家族農業が注目される背景には、市場原理主義や貿易自由化の行き詰まりがある。農業の大規模化を進めたものの、その流れに取り残された層との格差が拡大。開発を進め過ぎて生態系が崩れ、地球環境や社会そのものが不安定になっている。国連のSDGsはその危機感から生まれた。

 農産物や食料の国際価格が乱高下し、気候変動などによる大規模災害にも直面している。日本では、高齢化を背景にした生産者人口の減少、農村部を中心にした過疎化の深刻化、それを裏付けるかのような食料自給率の低迷、生産基盤の弱体化など、持続可能な農業の継続が危うい状況にさえある。常に農業基盤を支え続けてきた家族農業を再評価し、その力を支え、活用すべき時である。

 家族農業が果たす役割や可能性を伝えていこうと立ち上がった人たちがいる。国際家族農業年を支持する有志による「小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン(SFFNJ)」だ。設立して半年になる今月中旬、東京都内で家族農業に関する世界の潮流を学び、その価値を考える会合を開いた。家族農業に関する国際会議が各国で開かれ、先進国でも支援体制を取る動きがある現状を知り、日本国内でも家族農業の大切さを広めていくべきだとの考えを共有した。

 環太平洋連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)といったハイレベルの自由貿易を進める日本は今、競争力強化の名の下で農業の規模拡大・効率化路線を強めている。だが、その単線だけで十分か。家族農業を営む生産者にも目を向けるべきだ。次代に持続可能な食と農を引き継ぐため、“懐の深い”農政が求められている。

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