[持続可能未来] 官邸農政の限界 協同の再評価で修正を

 安倍政権による農業分野の規制緩和や改革は2018年、総仕上げの時期を迎える。農業を成長産業と位置付け、農畜産物の輸出拡大などで成果は出てきている。だが、官邸主導の強引な進め方に対し、現場では“改革疲れ”も漂う。政府・与党はこれまでの改革路線の軌道修正を行うとともに、農村に根付く相互扶助や協同の力をもっと評価し、農政に活用するべきだ。

 官邸主導の改革の旗振り役を担ってきたのが、首相の諮問機関である規制改革推進会議や未来投資会議などだ。過激とも言える介入が相次ぎ、生産現場への混乱が繰り返された。こうしたトップダウンの手法には与党も不満を強めている。参院決算委員会が昨年6月、政府の規制改革推進会議の運営に“物言い”を付ける決議を全会一致で採択し、政府に苦言を呈したのはその表れでもある。

 日本国憲法は内閣、裁判所、国会の三権分立の統治機構を設け、国会を唯一の立法機関・全国民の代表機関として「国権の最高機関」(憲法41条)に位置付けている。農業は成長産業であると同時に、国民の命を守る生命産業である。食料・農業・農村を次世代につなげていくためにも、与野党との調整に加えて、国会での熟議の重要性が増している。

 農業改革の議論で成長産業化や構造改革に主眼が置かれ、農村政策への目配りが薄くなっていることも気掛かりだ。条件不利の中山間地域は規模拡大が難しい。少子高齢化や人口減少の直撃を受けている農山村も多い。地域ぐるみで農業や農村を守っていく取り組みとそれを支援する施策がますます必要だ。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は16年11月に「共通の利益の実現のために協同組合を組織するという思想と実践」を無形文化遺産に登録した。その理由として「雇用の創出や高齢者支援から都市の活性化や再生可能エネルギープロジェクトまで、さまざまな社会的な問題への創意工夫あふれる解決策を編み出している」ことを挙げた。

 協同組合の思想と実践は全世界に広がり、世界の100カ国以上で10億人の組合員が参加する。女性の活躍や高齢者の雇用創出などは安倍政権が掲げる成長産業戦略とも重なる。地方や農村を守り、「美しい田園風景」を未来に継承していくためにも、農協をはじめとする協同組合が地方のコミュニティーの中核として果たしてきた役割を再評価することが必要だ。

 今年は、ドイツで世界初の農村信用組合を設立した「協同組合の父」ライファイゼンの生誕200年に当たる。「市場原理」ではなく、共に支え合う「相互扶助」の理念が世界的に高く評価されている。政府は和食のPRに躍起だが、ユネスコによる協同組合の無形文化遺産登録の価値も発信すべきだ。協同組合の理念を農政に反映させることが、真に豊かな農業・農村への第一歩となる。

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