[つながる 1] 仕事×地域課題 自伐型林業を実践 里山再生 協同式で

チェンソーで木を切る名城さん(左)。仲間たちと協同組合形式で自伐型林業を挑戦し、中山間地域の山を守る(兵庫県豊岡市で

 元エステティシャンで子育て中の名城千鶴さん(35)が、チェーンソーで木を切り倒す。数キロに上る山道は数年かけ、仲間と作った。

 中山間地域の兵庫県豊岡市竹野町。2012年。山に囲まれたこの町に、30代の若者たちが協同組合組織「NextGreen但馬」をつくった。メンバー5人は自分たちで間伐し、木材を搬出する「自伐型林業」を実践する。名城さんもその一員。全員が組合員、働き手、経営者、出資者。そんな協同組合組織の経営を通じ、里山再生という地域課題を仕事にした。

 住民から任された里山35ヘクタール、梅園1ヘクタールの管理の他、“森の6次産業化”にも力を入れる。「木工品作りも、子ども向けの森の勉強会も手応えがある。自分で考え、提案する働き方は、楽しい」と笑顔の名城さん。エステでの仕事とは一転して、山に向かう日々だ。以前よりずっと、仕事に充実感を感じる。

 協同組合方式で働くことは自然な流れだった。メンバーの元井賢さん(36)は「組織の形にこだわりはなかった。持続的に山を守る価値に共感した仲間が集まり、話し合う中で1人1票制の協同組合方式での経営になった」と明かす。人付き合いは苦手という元井さん。営利優先でなく、助け合う働き方は「自分に向いている」と思う。自分の役割を実感できるからだ。

 若者の仕事ぶりに、近所に住む福井鶴枝さん(90)は「放置していた山を若い人がきれいにしてくれて、みんな感謝しているのよ」とうれしそうだ。ここ数年、広島や宮城県内でも協同組合方式の林業組織が設立される波及効果もある。

 組合員の減少や高齢化が進み、構造改革が押し寄せる協同組合。しかし、若者たちにとって協同組合は遠い存在ではない。日本労働者協同組合連合会の15年度の組合員数は10年間で4割増の1万3151人、事業高は6割増の333億円。組合員数、事業費ともに右肩上がりという。かつて組合員は中高年の女性が大半だったが、近年では20、30代の増加が目立つ。

 連帯して働く若者による農村での仕事おこし。同連合会の中野理理事は「協同組合の理念を学ぶというより、若者はもっと自然な感覚。事業を通じ、助け合いで地域の課題解決を目指す協同組合の手法が今、若者に自然と受け入れられている」と分析する。

 岐阜県郡上市の石徹白集落。14年に集落のほぼ全100戸が出資して小水力発電をする農業協同組合が発足した。老朽化する農業用水路の復旧という課題に、地域に活力を取り戻そうと若い移住者と住民が手を携えた。発電で得た収入を財源に、水路の改修や荒地を復活させてスイートコーンや米を栽培するなど、農村の維持を担う。

 組合の営農部である集落営農組織も、若い移住者が活躍し、地元の若者も作業に励む。組合長の上村源悟さん(67)は「協同組合は 若者も高齢者もみんなで 関わり地域を盛り上げる。若い人の協力で耕作 放棄地が田畑になり、景観が美しくなっていく」と喜ぶ。若者の行動力が、協同組合と農村の展望を切り開く。 

 若者の持つ「つながる」力。しがらみや固定概念といった垣根を超えて、世界、都市、地域の多世代をつなげ、コミュニティーを生み出す。協同労働、インターネット交流サイト(SNS)や地域内編集といった情報発信、地域資源の活用などさまざまなつながる手法を通じ、国境、世代間や都市との壁を乗り越える。若者たちのつながりを通じた挑戦を報告する。
 

識者の目 柔軟に支え合う感覚 自然と 和歌山大学地域活性化総合センターの岸上光克准教授


 若者の協同組合への関心は確かに強まっている。バブル崩壊後に生まれた若者は、市場経済に疑問を持つ中で、どう生きるかを考えた時、協同という働き方、地域の在り方に行き着く。歴史ある協同組合の理念に賛同するというより、柔軟に支え合い、つながって助け合う感覚が自然と身についている世代だ。若い世代は今、立場や力に関わらず、誰もを切り捨てしない協同組合の可能性を感じている。

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