「持続可能未来」 通商政策の転換 「共創」掲げアジア連携

 通商政策を巡る最大関心事は米国の出方だ。これ以上の市場開放は国内農業への打撃が計り知れない。今後のキーワードは共生的な通商関係を築く「共創」ではないか。主食の米を共通としたアジアとの連携を柱に据え、柔軟で現実的な対応を針路にすべきだ。

 広がり続ける格差問題は国家の存立を揺るがす。地球規模の経済自由化、グローバリズムは中間所得層を破壊し、一部の富裕層と圧倒的多数の低所得層を産んだ。今こそ、ハンガリー出身の経済学者カール・ポランニーに学ぶ時だ。著書『大転換』は自由化、自由放任の時代の終焉(しゅうえん)を理論立てた。共同体が「悪魔のひきうす」にかけられ分断されたと分析。自然、人間、貨幣の三つを市場論理に任せると人々の生活がむちゃくしゃになるとして、社会の中に市場を「埋め込む」必要性を説く。そこでは労働組合、農協のような協同組合の存在が重要となる。

 社会的な富の再分配機能と敗者をできるだけ生まない持続可能な社会に向けたセーフティーネット(安全網)の構築が問われる。今の安倍政権の自由化路線は正反対ではないか。環太平洋連携協定(TPP)の極端な市場開放、関税撤廃を原則にすれば、地域経済は打撃を受け、家族農業は存続を脅かされる。安倍農政は、大規模化の産業政策と中山間地対策などの地域政策を「両輪」とするとしている。だが実際は、地域政策が後退し「補助輪」化して、いびつな軌道を走る。

 アベノミクス成長戦略の目玉が規制緩和と貿易自由化だ。この中で日本の通商戦線は多角化している。米国抜きのTPP11、日欧経済連携協定(EPA)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、さらには日米経済対話の「4方面作戦」である。一つ間違えば、市場開放の連鎖となる「自由化ドミノ」が強まりかねない。「米国ファースト」のトランプ政権は、11月の中間選挙を控え対外圧力を強めてくるのは間違いない。

 政府のTPP等関連対策大綱で、農業分野では「夢と希望の持てる『農政新時代』を創造し、努力が報われる農林水産業を実現する」とした。今後の通商交渉の結果次第では、大綱で掲げた「夢」と「希望」が「悪夢」と「失望」に変わる。

 節度ある市場開放こそが求められている。『東アジア連携の道をひらく』で、豊田隆東京農工大名誉教授は米を主食とするアジアの連帯こそが今後の針路だと説く。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓3カ国による米備蓄構想の一層の深化、アジア共通農業政策を通じ貿易自由化の利益を「アジア共生基金」に積み立てるなどの提案は示唆に富む。

 今後の通商政策は、TPP基軸から決別すべきだ。弱肉強食の「競争」から、互いに支え合い持続可能な社会をつくる「共創」こそが必要だ。

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