[つながる 3] 農村×都市 仲間募り稼ぐ提案 里山共感へ“投資”

総菜の味見をする今西さん(左から3人目)と「どがわマンマ」の女性たち。地域外の人の弁当発注が相次ぎ、経営は順調だ(宮崎県美郷町で)

 宮崎県美郷町の渡川(どがわ)地区。週末に都市住民でにぎわう。地元の手作り弁当が人気を呼ぶなど、新たな“稼ぎ”を生んだ。きっかけは、若者の提案と行動力だった。

 同町は高齢化率5割を超える。だが、田園回帰の潮流が変革を起こした。渡川地区は人口300人の3割を39歳以下が占める。ここ10年、移住が相次ぐ。田舎暮らしに憧れた若者が移り住み、その若者が始めた取り組みに、魅力を感じた若者が集まる。若者が若者を呼ぶ移住の連鎖。Uターンも増えた。

 若者の呼び掛けで始まった「渡川みらい会議」。行政や高齢者、JA職員、児童ら多くの住民が集まり定期的に開く。地域の将来を本気で膝を突き合わせて考える。

 そこから「どがわマンマ」のカフェが生まれた。同地区を訪れる人がいつでも弁当を食べられる場所を提供。その資金はインターネットを通じ寄付を募る「クラウドファンディング」を活用した。地区外に住む150人から、150万円を集めることに成功した。

 地域からはこんな声が上がった。「若者ならではの提案。遠く離れた都市住民の支援をこんな形で受けることができるとは。驚いた」

 カフェで人気の手作り弁当。地元の平均年齢70歳、通称「どがわマンマ」の女性5人が、朝から作る。5年前は出勤が週2回だったが、今は毎日。売上高は「企業秘密」だが、日当は5年で4倍になった。「つまらない山奥と思っていた。でも、若い人の後押しで、この年でやる気になった」。メンバーで農家の岩谷節子さん(70)が張り切る。

 若者の活動は多様だ。地域をPRする動画、コンサートや祭り、新聞発行、里山塾……。「地域の人と地域外の人がつながり、前に進んでいる。住民同士の関係が深まった」と、地元で育ち、シイタケを栽培する今西猛さん(35)。離れていてもつながる都市と農村。新しい形が生まれた。

 同地区だけではない。地方発のプロジェクトを助言する宮崎市の斉藤潤一さん(38)は、同地区を含め、ここ数年で30以上の事業を後押しする。伝統野菜の栽培、交流拠点づくり、直売所開設など、「市場ニーズを読み価値を高め、共感が生まれ、地域ににぎわいが生まれる。稼げる地域になる」と斉藤さん。交流だけでなく、地域が稼ぐことを重視。新たな投資やイベント、動画作成といった人が地域に共感する仕掛けを作ってきた。

 クラウドファンディングを活用し、キュウリの伝統品種を栽培する同県新富町の農家、猪俣太一さん(29)は「仲間を増やし稼ぐ農業を目指し地域に還元する。自分の利益だけを追求するよりワクワクする」と感じる。

 矢野経済研究所の調査によると、2016年度のクラウドファンディングの市場規模は746億円。前年度比97%増という伸び率だ。

 地域活性化に特化したクラウドファンディング「FAAVO」を作った斉藤隆太さん(32)は「共感をキーワードに資金を確保し、都会にいる地方出身者や地域と関わりたい都市住民と地方をつなぐ」と意義を説明する。関係づくりを模索する農山村も「全国に広がる」(斉藤さん)という。移住や観光だけでない。新たな都市と農村の関係をつくる挑戦が、各地で動きだしている。
 

識者の目 幅広い世代集い 挑戦支え 早稲田大学研究院・赤井厚雄客員教授


 クラウドファンディングなどの“ふるさと投資”は、つながりを育む重要な手段だ。都市住民にとっては地域とのネットワークが生まれる。地域にとっては資金調達だけでなく、情報発信も期待でき、次のステップにつながる意義を持つ。ふるさと投資は、新しい都市と農村の結び付きだ。若者を中心に起きたふるさと投資は今、幅広い世代の共感を集め、地域の挑戦を支えている。

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