[持続可能未来] 異常気象への対応 共助と適応で乗り切る

 夏の記録的高温、局地的豪雨や日照不足、超大型の台風など、近年の異常気象はもはや常態化したと言っても過言でない。これからの農業・農村は、こうした気候変動に立ち向かい、どう克服するかが求められる。生産者、国や研究機関、企業が総力を挙げ、英知を結集し、農業を未来につなぎたい。

 気候変動の影響で筆頭に挙がるのが自然災害だ。昨年7月の九州北部豪雨は、40人の死者を出すなど甚大な被害となった。その中で、福岡県朝倉市では土石流で壊滅的被害を受けても一人の犠牲者も出さなかった集落がある。住民が集落の全戸を巡って避難を呼び掛け、足腰の弱い高齢者を背負って逃げた。まさに「共助」の力だ。

 農村の多くは、土砂崩れなど自然災害を受けやすい中山間地に立地する。精緻な気象観測や土砂崩れの危険予測など防災情報が高度化しても、判断して行動するのは住民自身だ。住民の自覚が最大の防災につながる。常に油断せず、人命を優先した行動を取りたい。

 自然災害だけでなく、地球温暖化を背景に深刻化するのが、作物の高温障害など農業への影響だ。水稲は夏の高温により白未熟米や胴割れ粒になる。ミカンは浮き皮、リンゴは日焼け果が生じ、果樹自体が耐冬性を下げて生育不良に陥ってしまう。畜産も、家畜が暑さで弱るなど影響は多岐にわたる。

 温暖化への対策はこれまで、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑えて温暖化を遅らせる「緩和策」が中心だった。しかし、世界的な対策を講じても一定程度の気温上昇は避けられそうにないのが現実だ。今後は、温暖化と共存する「適応策」が一層求められる。

 農水省と環境省、国土交通省は2017年夏に「地域適応コンソーシアム事業」を立ち上げ、農業生産や防災、熱中症対策など幅広い分野で「適応策」の確立に乗り出した。当面は、各地域で気温上昇や降水量の増加に伴う農作物への影響などを調査し、対策を具体化する計画だ。適応策推進へ法制化の動きもあり、対策の加速を期待する。

 農業の現場では、高温環境での生産技術の開発や、新たな品目の導入など温暖化を見据えた取り組みが始まっている。

 農研機構は、田畑の立地や品目、作型と気象データを連動させることで、施肥設計や収穫適期、病害発生を予測するシステムを開発した。愛媛県のかんきつ農家グループは気温、風速、降水量などを園地ごとに予測する仕組みを導入し、降霜害や高温・低温障害を予知して適期防除や品質向上につなげる。

 積雪地帯の新潟・佐渡島では温州ミカンの栽培が広がり、松山市では熱帯果樹のアボカド栽培が軌道に乗った。気温上昇を逆手に取れば、新たなビジネスを生む機会が生まれる。

 気候変動を嘆くばかりでなく、“攻めの農業”への発想の転換も必要だ。

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